DELL Inspiron 14(Intel版)の実機レビューです。Inspiron 14にはIntel版(今回のレビュー機、型番5430)とAMD版(型番5435)があり、外観や筐体サイズは「ほとんど同じ」ですが、CPUのブランドの他にも若干の相違点があります。
このレビューでは製品の概要、外観と使用感、そしてベンチマークテストを実施して「価格と品質のバランス」がどんな感じなのかを確認しています。…忙しい方のためにネタバレしておくと「期待を上回る品質」でした…。
・スペックから見た価格が非常に割安
・しかし筐体の出来はよく、ハイコスパマシンとは思えない仕上がり
・ディスプレイのスペックは標準的ながら、その割に美しい発色
・スピーカー品質が素晴らしい
ここはイマイチ
・14インチサイズの割に筐体が重く、モバイル利用が少し厳しい
販売サイトはこちら
Inspiron 14(5430) ノートパソコン(2023年1月31日発売):DELL
Inspiron 14 (5435)ノートパソコン(2023年3月3日発売):DELL
1.製品概要
Inspiron 14は数あるDELL PCの中でも「最高水準のコストパフォーマンス」を誇り、高い人気のある製品です。
Intel版はCPUに第13世代のCore i5/Core i7を搭載、ビジネスノートとして高い性能になっています。ディスプレイサイズは14インチで、モバイルノートとしても使えるサイズ感ですが、重量はあまり軽いほうではありません。
以下にスペック表を掲載します
Inspiron 14(5430, intel) | |
OS | Windows 11 Home / Pro |
CPU | Intel Core i5-1335U/Core i7-1355U/Core i7-1360P |
外部GPU | なし |
RAM | 8GB/16GB(LPDDR5、4800 MHz) |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB SSD(M.2, PCIe NVMe) |
ディスプレイ | 14インチ(1,920 × 1,200) |
ネットワーク | Wi-Fi 6E(ax/ac/a/b/g/n)、Bluetooth5.3 |
入出力 | USB Type-C (Thunderbolt 4)、USB3.2 Gen1 Type-A × 2 HDMI、オーディオジャック、SDカードリーダー |
カメラ | Webカメラ(1,080p) |
バッテリー | 54 Whr |
サイズ | 314 × 226.6 × 17.67 mm |
重量 | 1.69 kg |
なお、レビュー機の構成は「Core i7-1360P/RAM16GB/1TB SSD」で、Inspiron 14のIntel版としては最上位のバリエーションモデルでした。
2.外観と使用感
まず、ACアダプターです。出力65Wのものが付属し、ノートPC用として標準的なサイズで実測重量は215 g(電源ケーブル込みだと317 g)と標準的です。
天板です(すみません、天板に少し色ムラがあるように見えますが、これは私の手脂が付着していたものと思われ、実際にはもちろん色ムラはありません)。表面素材は金属製で質感も高いです。Inspiron 14はシステムスペックの割に価格がかなり低めです(それが大きな魅力)が、筐体の質感で帳尻をあわせている、という感じは全くありません。Core i5/Core i7搭載ノートにふさわしい外観になっています。
なお、レビュー機の筐体色は「プラチナシルバー」でしたが、他に「ダークリバーブルー」という色も設定されています。
これがダークリバーブルーです。これはこれで引き締まってカッコいい色と感じられますね。
底面です。通気口があるのみです。底面にスピーカーを搭載するノートPCは多いですが、Inspiron 14のIntel版はここにはスピーカーがありません。
前面(上の画像)と背面(下の画像)です。ともにポート類やボタン類はありません。
Inspiron 14はリフトアップヒンジ構造を採用しています(後述します)。ヒンジ開口時に天板の後ろが接地するので、このような保護材がついています。先代モデルも同様の構造だったのですが、ずいぶんとスッキリしました。
こちらが先代モデル。保護材の部分がかなり大きく目立っていて、デザイン面では「ちょっとなあ…」と思っていました。この部分の改善は個人的には非常にうれしいですね。
左右の側面です。右側面(上の画像)には左からSDカードリーダー、USB Type-A、イヤホンジャックがあります。また左側面(下の画像)には左からDC-INジャック、HDMI、USB Type-A、USB Type-C(Thunderbolt 4)。
ポートの数と種類は「標準的」といったところでしょうか。USB Type-CがThunderbolt(伝送速度40Gbpsと超高速で映像出力にも対応する)なのと、SDカードリーダーがmicro規格ではなくフル規格であるというのは評価できます。
キーボードは83キーの日本語配列、キーピッチは19.05 × 19.05 mm、明るさを2段階に調整できるバックライトも装備しています。また、キーボード面の一番右上のキーは「電源ボタン兼指紋センサー」です
キーピッチに余裕があり、キーストロークはノートPCとしては標準的で、配列も素直、右側のEnterキー周辺のキーがちょっと変形しているくらいで、初めて使ってもすぐに慣れると思います。
Inspiron 14はIntel版とAMD版でスピーカーの位置が異なります。Intel版はキーボード面の両サイドにスピーカーが配置されており、ウインタブの経験上「PCのスピーカーはこの位置がベスト」だと思っています。
設定アプリ「MyDELL」で音質の設定ができます。左の2つがスピーカー系の設定で、グラフィックイコライザーもついていますので、ある程度お好みに合わせて音質の調整が可能です。
また、右はマイクの設定です。他社のノートPCでもすっかり一般的になりましたが、ノイズリダクションの設定ができるようになっています。
実際に音楽を聴いてみると底面にスピーカーが配置されている製品よりも音がクリアに聴こえ、音楽鑑賞や動画鑑賞の際には満足感が高くなります。AMD版と音楽を聴き比べたわけではないのですが、音にこだわるならIntel版でしょうね。さすがに重低音の再現というのは難しいですが、ノートPCの内蔵スピーカーとしては高く評価できます。
正面から見たところです。ベゼル幅は細めですが2023年の水準だと他機種よりもすごく細い、という感じではありませんが、スッキリとよくまとまったデザインですよね。
レビュー機のディスプレイは「14.インチ (1,920 x 1,200) 非光沢、非タッチ、250nits 広視野角 ディスプレイ ComfortView Support搭載」、色域は「45%NTSC」、リフレッシュレートは「60Hz」と開示されています。また、パネル形式はWVA(Wide View Angleの略)とだけ開示されていて詳細は不明ですが、私が見たところ、IPS相当の液晶だと思います。実際視野角も広いです。
手持ちのモニター(27インチで100%sRGBのもの)と同じ画像を表示させて見比べてみたところ、原色がやや淡いと感じられたものの、45%NTSC(ノートPC用ディスプレイでは一般的な色域、sRGBだとおよそ60%程度です)にしてはずいぶん鮮やかなだなあ、と感じました。私は視力が悪いこともあり、45%NTSCであるという事前情報がなければ「100%sRGBかな?」と思ったくらいです。
繊細な色の識別が必要な人は別として、一般的な用途では不満を感じない、美しいディスプレイだと思います。また、非光沢タイプなので、映り込みも小さいです(他の非光沢ディスプレイ搭載PCと比較しても映り込みは小さめです)。
設定アプリ「MyDELL」からディスプレイのカラープロファイルをセット可能です。また、ComfortViewって何よ?と思いましたが、これは「夜間モード」ですね。オンにすると画面が黄色っぽくなって目が疲れにくくなる、という、Windowsの標準設定にもある項目とほぼ同じです。
ヒンジをいっぱいまで開口してみました。最近のノートPCはヒンジが180度(水平位置)まで開口できるものが増えていますが、Inspiron 14は180度開口はしません。
また、リフトアップヒンジを採用しており、ヒンジ開口時に天板後部が接地、キーボード面に適度な角度がついてタイピングがしやすくなっています。
3.性能テスト
ベンチマークテスト
ベンチマークテストの実施にあたり、Inspiron 14の設定アプリ「MyDELL」の「温度管理」項目を「超高パフォーマンス」に設定しています。ただし、ここは冷却ファンの風量を調整するものなので、テスト結果にはほとんど影響しないものと思います。
なお、Inspiron 14のようなビジネスPCの場合、あまりガチでベンチマークスコアを見て頂く必要はないです。そもそもベンチマークテストは常に同じスコアが出るわけではなく、測定タイミングによって5~10%くらいは簡単に上下します。なので、同じCPUを搭載している製品と著しくスコアが違っていなければOK、というくらいに考えていただければ、と思います。
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、外部GPUの性能も少なからず影響します。
参考(同クラスのノートPCのスコア):
HP Pavilion 15-eh(Ryzen 7 5825U)5,954
VAIO SX12(2022)(Core i7-1260P):5,761
dynabook GZ/HW(Core i7-1360P):5,742
富士通LIFEBOOK NH WN1/H1(Core i7-12700H):5,614
VAIO F14(Core i7-1355U):5,553
dynabook AZ/HV(Core i7-1260P):5,503
MSI Prestige 13 Evo A12M(Core i7-1280P):5,500
Lenovo ThinkPad X13 Gen 4(Core i7-1355U):5,452
VAIO SX14(Core i7-1280P):5,452
MSI Modern 15 B13M(Core i5-1335U):5,419
MSI Modern 14 C12M(Core i7-1255U):5,366
VAIO SX14(Core i7-1195G7):5,278
Lenovo ThinkPad X13(Core i7-1165G7):5,205
Lenovo IdeaPad Slim 550 14(Ryzen 5 5500U):5,076
ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702(Core i7-1250U):5,074
DELL Inspiron 14 AMD(Ryzen 5 5625U):5,031
レビュー機の搭載しているCPUは第13世代のバランスタイプ、Core i7-1360Pです。PC Markのスコアは6,000点に迫るものとなっており、ウインタブのCore i7-1360P搭載機の過去実績を若干上回っています。だから、ということは全くありません(ベンチマークテスト結果は割と大きめのばらつきがあり、2~3回テストしたくらいで優劣を決めることはできません)が、PC Markが想定するビジネスシーンでの性能はごく高い、と考えていいでしょう。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。ゲーミングPCでは最も重要になるテストと言えますが、レビュー機は外部GPUを搭載しておらず、スコアは低めになることが予想されました。
参考(同等クラスのノートPCのスコア):
MSI Prestige 13 Evo A12M(Core i7-1280P):15,330、20,071
VAIO SX12(2022)(Core i7-1260P):14,055、18,529
VAIO F14(Core i7-1355U):13,655、16,810
dynabook GZ/HW(Core i7-1360P):13,424、16,779
Lenovo ThinkPad X13 Gen 4(Core i7-1355U):13,177、14,122
富士通LIFEBOOK NH WN1/H1(Core i7-12700H):13,129、18,071
Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 11(Core i5-1335U):11,795、14,774
HP ENVY x360-bf(Core i7-1250U):10,684、14,119
ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702(Core i7-1250U):10,931、13,960
HP Pavilion 15-eg(Core i7-1355U):10,518、13,584
富士通LIFEBOOK CH WC1/G3(Core i5-1240P):10,009、11,202
MSI Modern 15 B13M(Core i5-1335U):8,868、13,287
Lenovo ThinkBook 15 Gen 5 (AMD) (Ryzen 5 7530U):6,883、13,730
※左からWild Life、Night Raidのスコア
外部GPUを搭載しない製品の場合、画像の一番右、Night Raid(外部GPU非搭載機向けの軽量なDirectX 12対応のテスト)のスコアを見るようにしています。レビュー機のスコア18,640というのはCore i7-1360P搭載機としては妥当なスコアだと思います。
第13世代のIntel CoreプロセッサーはCPU性能がアップしているだけでなく、内蔵GPUのIris Xeの性能も高く、これだけのスコアが出るのであればPCゲームも十分楽しめそうです(ゲームタイトルによってグラフィック設定を調整する必要はあります)。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。これ、PCIe NVMe Gen3 x4接続のスコアと思われますが、Inspiron 14が想定するビジネスシーンや各種のエンターテイメント用途でSSDの速度面での不満はまず感じないであろう水準だと思います。
バッテリー駆動時間
実際に簡単な作業などをしてみてバッテリーの消費量をチェックしました。
ディスプレイ輝度を70%に、音量を30%に、キーボードバックライトをオン(暗いほう)に、Windowsの電源モードを「トップクラスの電力効率」に、設定アプリMyDELLの温度管理を「静音」に、またMyDELLのインテリジェント・バッテリー・エクステンダーを「オン」にして下記の作業をしました。
・ブラウザーを開き、YouTubeで音楽鑑賞・動画視聴を約30分
・ブラウザーでWebサイト閲覧をしながらエディタでテキスト入力を約30分
・画像加工ソフトGIMPで簡単な画像加工を約15分
上記トータルで約75分使用し、バッテリー消費は31%でした。単純計算で1時間あたり25%弱のバッテリー消費、バッテリー駆動時間は4時間強となります。
これはちょっと短めだと思います。出先で終日作業する場合、PCに向き合う時間が5時間くらいあるとするとバッテリーが持たないでしょうね。なお、バッテリー駆動時間は「PCの使い方」によって大きく変動しますし、レビュー機のコンディション(新品状態ではなく、すでに幾人ものレビュアーがテストした後の状態でした)も影響しますので、この結果はあくまでも参考程度とお考えください。
発熱とファン音
ベンチマークテスト時以外はほぼ無音、そして発熱も全く気になりませんでした。ベンチマークテスト中はさすがにファン音、発熱とも大きくなりますが、一般的なノートPCとして異常性はなく、また使っていて特に騒々しくて不快とか、キーボード面が熱くて不快、ということもありませんでした。
4.レビューまとめ、価格など
DELL Inspiron 14(Intel, 5430)はDELL公式サイトで販売中です。10月16日現在の価格は税込み69,558円(Core i5-1335U/RAM16GB/SSD512GB)から、となっています。今回のレビュー機はCPUがCore i7でしたが、性能面だとRAM16GB/SSD512GBであればCore i5モデルでも十分な実力があり、ビジネスマンの方々がメインPCとして長く愛用できると思います。
それを踏まえると、Inspiron 14の価格は「激安もいいところ」ですよね。
で、激安級のお値段ですが、筐体の質感は良いですし、ディスプレイの発色品質にも合格点をあげられると思います。また、スピーカーの音質は素晴らしいものでした。一方で、この製品の数少ないウイークポイントは「重さ」だと思います。14インチノートですから、モバイルノート的にちょくちょく出先に持ち出して使おうと考えている人も少なくないと思いますが、その場合は1.6キロという重量は少々厳しいだろうと思います。
私の感覚だと、毎日ノートPCをバッグに入れて持ち歩く、という人にはInspiron 14をおすすめしません。DELLにも他社にももっとコンパクトで軽量な製品がたくさんありますからね。
一方で、基本据え置き的な使い方だが、時々は外に持ち出して使う、という場合はInspiron 14はおすすめです。コスパは抜群ですし、性能・機能とも十分満足できるはずです。
5.関連リンク
Inspiron 14(5430) ノートパソコン(2023年1月31日発売):DELL
Inspiron 14 (5435)ノートパソコン(2023年3月3日発売):DELL