こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回はDELLの13.3インチ高性能モバイルノート「Inspiron 13 7000(7370)」の実機レビューです。DELLの上級モバイルノートと言えば「XPS 13」を思い浮かべますが、DELLほどの大メーカーですから、他にも多くのモバイルノートを販売しています。「Inspiron」は「XPS」の下位に位置する製品ブランドですが、DELLの主力ブランドでもあり、エントリークラスからハイスペッククラスの製品を揃える、非常にワイドなバリエーションを誇ります。「Inspiron 13」には「5000(プレミアムライン)」と「7000(ハイエンドライン)」の2種類があり、今回はハイエンドラインの「7000」のレビューとなります。
1.スペック
CPUは第8世代のCore i5/i7、RAMは8GB/16GB、ストレージは256GB/512GB、そしてディスプレイは13.3インチでIPS液晶、FHD解像度となっていて、「上級モバイルノート」にふさわしい構成です。ハイエンドラインということもあり、CeleronやCore i3を搭載するモデルの設定はありませんし、ストレージでもHDDの設定はありません。
プレミアム: Core i5/RAM8GB/256GB SSD
プラチナ: Core i7/RAM8GB/256GB SSD
スプレマシー: Core i7/RAM16GB/512GB SSD
DELLはもはやBTOメーカーとは言えず、構成を細かくカスタマイズすることはできません。上記3つのグレードが用意されており、ここから自分の好きな構成を選ぶことになります。注文時に選択の余地があるのは「OSのバージョン、Officeの有無と種類、筐体色、保守サービスの種類」のみです。
さて、入出力ポートですが、Type-Cを含め、USBポートが3つ、それに加えHDMIと、モバイルノートとしては標準的な構成になっていると思います。まあ、USBポートなんてたくさんあるに越したことはないですが、13.3インチのモバイルノートならこんなものかな、と思います。
サイズは割と小さめです。世界最小の13.3インチは同じDELLのXPS 13(302 × 199 × 7.8-11.6 mm / 1.21 kg)ですが、さすがにXPSと比較してしまうと大きいものの、個人的な印象では横幅が310 mmを切り、「309 mm」という点は評価したいです。少なくともタテ・ヨコサイズに関しては十分合格点をあげられると思います。ただ、重量1.4 kgというのは、この製品の「格」から考えて重すぎですね。他社の上級モバイルノートは1 kgそこそこ、せいぜい1.2 kg程度のものが多いですから。
レビュー機のシステム構成です。グレードは「スプレマシー」で、Core i7-8550U/RAM16GB/512GB SSDというハイエンド構成でした。
2.筐体
同梱物です。国内メーカー(外資含む)の製品は実機をメーカーからお借りしてのレビューになりますので、新品未開封の状態ではありません。そのため、ここに掲載する同梱物は完全な状態ではない可能性がありますので、あらかじめご了承ください。
冊子類は「クイックスタートガイド」と「安全および認可機関に関する情報」の2種類、あとはACアダプターと電源ケーブルが入っていました。ACアダプターと電源ケーブルの重量は275 gなので、本体と合わせると1.7 kg弱、ということになります。
天板です。レビュー機は「ピンク・シャンパン」という筐体色でした。DELLのピンク系筐体色は他に「ローズ・ゴールド」という色の製品を試用したことがありますが、「ピンク・シャンパン」のほうがよりピンクっぽいですね。男性が使うのに抵抗がある、というほどではありませんが、少し華やかな色彩です。なお、この製品は他に「プラチナ・シルバー」を選ぶことができますので、ピンク系に抵抗のある人でも大丈夫です。
筐体素材はアルミです。天板だけでなく、筐体全体がアルミ製になっています。「梨地加工(で、いいと思います)」が施されているため、わずかにざらついた手触りになります。もちろん高級感のあるものです。
右側面です。金属筐体の場合、エッジ部分にダイヤモンドカット加工(ギラギラした帯のようなもの)が施されていることが多いですが、この製品にはそれがありません。ちなみにプラチナ・シルバーを選ぶとダイヤモンドカット加工になります。
ポート類は画像左からSDカードリーダー、USB 3.0、ケンジントンロックです。
前面(開口部)です。中央にLEDインジケーターがあり、それ以外にポート類などはありません。Inspironシリーズ共通とも言える、中央部の凹みもあります。この凹みにより、ヒンジ開口は容易です。
左側面です。ポート類は画像左からDC-IN、USB Type-C、HDMI、USB 3.0、オーディオジャックです。
背面です。ここにはポート類はありませんが、外部GPU非搭載機としては割と目立つ、大きめの通気口があります。
底面です。ここもアルミ製で、メンテナンス用のハッチはなく、バッテリーも着脱式ではありません。画像上側が前面(開口部)ですが、前面よりの両サイドにステレオスピーカーが配置されています。
キーボードです。配列は素直だと思いました。使っていて「あれ?あのキーはどこ?」みたいな感じにはなりません。ただし、英語配列キーボードと金型を使いまわしている関係と思われますが、EnterキーとかBackspaceキー、右側のShiftキーとその隣のキーだけアイソレーション(独立した配置)になっていません。これに関連して、Backspaceと右Shiftキーのサイズがやや小さく、しいて言えばこのあたりに慣れが必要と思われます。
また、キーボード面の右上に電源ボタンがありますが、これは指紋センサーも兼ねています。パームレスト部分を含むキーボード面の素材もアルミです。
キートップはフラットで特に加工はされていません。また、画像を取り忘れちゃったんですが(すみません…)この製品にはバックライトがつきます。バックライト色はホワイトで、オーソドックスな色になっています。
ヒンジを開いてみます。ピンク・シャンパンの筐体色がアクセントになっていて、なかなかスタイリッシュに見えますが、特段強い個性を感じるような筐体デザインではありませんよね。
正面から見てみます。この製品は横幅がコンパクトになっていますので、ディスプレイ面のベゼルもかなり細いです。ただし、XPS 13ほど激しく細いわけではなく、Webカメラもオーソドックスに上部ベゼル(ヒンジ開口時)に配置されています。
ヒンジはほぼ水平(開口角度180°)に近いところまで開口可能です。ただし、ヒンジを最大開口した状態だと天板がテーブルに接地するのですが、保護材がないため、この状態で引きずると天板に傷がつきます。なので、大きな開口角度を頻繁に使う人はなんらかの筐体保護を考える必要があります(テープを巻くとかですね)。
天板がテーブルに接しない範囲での最大開口角度はこんなもんです。これでも個人の作業では十分ですよね。
一通り筐体を見てみましたが、XPS 13とかHP Spectre 13のような強い個性はありません。むしろ少しそっけないかな、と感じたくらいです。もちろんアルミ筐体は表面もしっかり加工していて手触りもよく、高い質感になっていますので、上質な筐体である、ということは間違いありません。どちらかと言うとビジネスシーン向けのデザインと言えるかもしれませんね。
3.使用感
ディスプレイ
ここのところウインタブではDELLの上位ノートPCを試用する機会が増えていますが、これらDELL製品のディスプレイ品質は非常に高いと感じます。とにかく発色が鮮やかですね。いつも書いていてマンネリ気味の表現ですが「黒がしっかり黒い」です。あるいは「濃い」って感じでしょうか。手持ちのディスプレイと「花」の画像なんかを見比べてみると、色が濃いんですよ。
輝度(明るさ)は標準的だと思いますが、設定で輝度を50%程度にしても十分明るく快適に使えます。一方、ディスプレイの映り込みはやや多め(強め)です。光沢タイプなのでこれは仕方ないところでしょう。
キーボード
キーピッチは手採寸で約19 mmと、標準的なサイズと言えます。キーストロークはやや浅めながら、確実な打鍵感が得られ、使っていて気持ちのいいものでした。また、打鍵音は比較的小さめで、静音というほどではないにせよ、静かな場所でも気を使いながら入力できる感じです。
繰り返しになりますが、配列に関して右側の配置にやや不満を感じました。Enterキーがやや小さめ、Backspaceキーも同様で、使い始めからしばらくの間ミスタイプが多くなりました。この部分だけアイソレーションになっておらず、キーピッチも非常に狭いため、ほかのキーにゆとりがあることの反動で余計にミスタイプしやすいのではないか、と思います。ただ、モバイルノートのキーボードって、何らかのクセがないほうが珍しいですよね。この製品に関しても、「レビューだから」いろいろ書いてますけど、おそらくそんなに時間を要することなく慣れてしまうと思います。
スピーカー
最近DELLが積極的に採用している「MaxxAudio Pro」を搭載しています。音質を語る場合、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアの品質も重要だと思いますが、この製品のスピーカーはよくできています。ボリュームを上げると結構な迫力が出ますし、音質もいいです。さすがにオーディオ機器並み、というとウソになりますが(w)、モバイルノートの内蔵スピーカーとしては十分な水準にあると思います。
バッテリー
公称値だと最大8時間、ということですが、私が試用した限りはあまり長持ちする方ではありませんでした。「ディスプレイ輝度50%でYouTubeの音楽をボリューム50%で流しつつテキストライティング、Webブラウジングを1時間ほどやってみたところ、バッテリーは29%減りました。
単純計算だと3時間強~4時間くらいになります。バッテリー節約(ディスプレイ輝度を落とす、音を鳴らさないなど)につとめても、せいぜいプラス1時間くらいでしょうから、稼働時間はよくて5時間程度ということになりますね。ただし、バッテリーって使い方によっても稼働時間が大きく変わりますが、レビュー機のコンディションという、どうしようもない要因もあるかも知れません。少なくとも新品状態ならこれよりは長く使えるでしょう。
4.性能テスト
この製品は第8世代のCore i7-8550Uを搭載しています。いつものように各種ベンチマークテストをやってみました。
参考:
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 9,643
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 8,727
DELL XPS 13(9370)(Core i7-8550U): 8,409
HP Spectre x360(Core i7-7500U): 8,385
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 8,207
Lenovo ideapad 520(Core i5-8250U): 8,129
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 8,106
富士通 LIFEBOOK WS1/B3(Core i7-8550U): 8,055
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 7,646
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 7,405
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 7,230
東芝 dynabook VZ72/B(Core i7-7500U): 7,224
FRONTIER NLK(Core i5-7200U): 7,162
富士通 LIFEBOOK WU2/B3(Core i7-8550U): 7,053
参考:
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 4,706
DELL XPS 13(9370)(Core i7-8550U): 4,571
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 4,210
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 4,115
HP Spectre x360(Core i7-7500U): 4,003
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 3,958
Lenovo ideapad 520(Core i5-8250U): 3,895
NEC LAVIE Direct HZ(Core i7-6500U): 3,787
富士通 LIFEBOOK WU2/B3(Core i7-8550U): 3,674
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 3,670
富士通 LIFEBOOK WS1/B3(Core i7-8550U): 3,645
ドラクエベンチに関しては、Core i7-8550U搭載機にふさわしい、トップクラスのスコアとなりました。この製品ならドラクエは問題なく遊べるでしょうね。
参考:
DELL XPS 13(9370)(Core i7-8550U): 4,385
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 4,365
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 3,921
富士通 LIFEBOOK WU2/B3(Core i7-8550U): 3,890
富士通 LIFEBOOK WS1/B3(Core i7-8550U): 3,858
Lenovo ideapad 520(Core i5-8250U): 3,596
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 3,487
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 3,436
DELL XPS 13(Core i5-7200U): 3,379
FRONTIER NLK(Core i5-7200U): 3,326
ドラゴンズドグマオンライン(DDON)についても同様です。このゲームは外部GPU(GeForceやRadeonなど)を搭載していないと最高品質で遊ぶのが難しいくらいで、それなりにPCのパワーを要求するものですが、標準品質であればある程度遊べるかもしれないですね。外部GPU非搭載でこのテスト4,000点を越えるのは立派だと思います。
参考:
DELL XPS 13(9370)(Core i7-8550U): 1,161、4,719
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 1,114、4,389
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 1,097、4,471
富士通 LIFEBOOK WU2/B3(Core i7-8550U): 1,017、4,350
HP Spectre 13(2017)(Core i7-8550U): 1,000、4,304
Lenovo ideapad 520(Core i5-8250U): 984、4,262
富士通 LIFEBOOK WS1/B3(Core i7-8550U): 949、4,137
HP Spectre 13 x360(Core i5-7200U): 932、3,994
ドスパラ Altair F-13(Core i5-7200U): 930、4,028
HP ENVY 13(Core i7-8550U): 923、3,857
FRONTIER NLK(Core i5-7200U): 877、3,991
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 871、3,710
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(Core i7-6500U):857、3,608
マウス m-Book F(Core i7-7500U): 811、3,782
Microsoft Surface Pro(Core i5-7300U): 790、3,812
Lenovo ThinkPad X1 YOGA(Core i7-6500U):784、3,608
※左からFire Strike、Sky Diverのスコア
続いて3D Markです。ハイエンドクラスのゲーミングPC向けテストであるTime Spyは置いといて、Fire Strikeで1000点を越え、Sky Diverでも4000点オーバーというのは、外部GPU非搭載機としては健闘しています。
ひとことでCore i7-8550U搭載と言っても、メーカー側でセッティングする余地がありますので、製品によってベンチマークスコアにはばらつきが出ます。しかし、Inspiron 13 7000に関してはパフォーマンスを重視した調整になっていると思われ、「Core i7の性能を期待して買うのだ」という人の期待を裏切らない性能と言えそうです。
参考:
ドスパラ GALLERIA Mini 1060(Core i5-7500、GTX1060): 4,906
OMEN X by HP(Core i7-7820HK、GTX1080): 4,290
NEC LAVIE Direct NEXT(Core i7-8550U): 3,704
ドスパラ Critea VF-HEKS(Core i7-8550U、GeForce MX150): 3,704
DELL Inspiron 17 5000(5770)(Core i7-8550U、Radeon 530): 3,607
HP ENVY 13(Core i7-8550U):3,534
DELL XPS 13(9370)(Core i7-8550U): 3,518
Lenovo ideapad 520(Core i5-8250U): 3,496
ドスパラ Critea VF-HGK1050(Core i7-7700HQ、GTX1050): 3,492
富士通 LIFEBOOK WS1/B3(Core i7-8550U): 3,479
富士通 LIFEBOOK WU2/B3(Core i7-8550U): 2,873
DELL Inspiron 15 7000(7570)(Core i7-8550U、GeForce MX130): 2,824
HP Spectre x2(Core i5-7260U): 2,822
ドスパラ Magnate IM(Core i5-7400): 2,763
ドスパラ Critea DX-KS H3(Core i3-7100U): 2,198
NEC LAVIE Direct NM(Core i7-7Y75): 1,388
VORKE V1 Plus(Celeron J3455): 1,345
T-bao Tbook X8S Pro(Celeron J3455、GeForce 920M): 1,304
Jumper EZBook 3L Pro(Celeron N3450): 1,230
最後にパソコンの総合性能テスト「PC Mark」のスコアを見てみます。PC Markはゲームソフトのベンチマークテストとは傾向が異なり、外部GPUの搭載、非搭載によるスコア差はあまり大きくありません。主にCPU性能、あとはRAMやストレージの読み書き速度などが影響してくると思われます。実際にビジネスなどでInspironを使う場合、このテストの結果が一番重要と言えるかも知れません。
3,600点以上、というスコアはトップクラスと言っていい水準です。参考データの1位はデスクトップPC、2位はCore i7-7820HKという、よほどのハイエンドゲーミングノートでないと使われないくらいの超高性能CPUを搭載していますので、正直なところ比較対象としては適切ではありませんしね。
5.まとめ
DELL Inspiron 13 7000(7370)はDELL公式サイトで販売中で、4月9日現在の価格は下記のとおりです。
プレミアム(Core i5/8GB/256GB): 93,483円(税込み100,961円)から
プラチナ(Core i7/8GB/256GB): 101,983円(税込み110,141円)から
スプレマシー(Core i7/16GB/512GB): 135,983円(税込み146,861円)から
※キャンペーン価格
DELL公式サイトは、常にキャンペーン(クーポン割引)をやっていますので、時期によって多少変動はあるものの、おおよそこのくらいの価格で購入できると思っていいでしょう。今回のレビュー機は146,861円のものでしたが、最も低価格なプレミアムモデルでもCore i5/RAM8GB/256GB SSDという構成ですから、ビジネス用途や大学・大学院の学生さんの学習用としても特に不足を感じるレベルではないと思います。
プレミアムモデルのスペックは、ウインタブの「上級モバイルノート勝手基準(Core i5/RAM8GB/256GB SSD/FHDディスプレイ)」に合致するもので、同等クラスの他社製品だと最安値で税込み8万円台というのがありますし、税込み9万円台で購入できるものもあります。その意味ではInspiron 13 7000は最安値ではありません。
しかし、この製品はInspironのハイエンドライン「7000」を冠する上位機種であり、最安値を競うような位置づけではありません。実際、筐体品質も非常に高いと感じましたし、サイズ感も(重量がちょっと重すぎるかなとは思いつつ)よく、コンパクトでまとまりのあるものになっています。また、パフォーマンスも期待を上回るものでした。
XPS 13ほどの強い個性を好まず、少し落ち着いたデザインの上級モバイルノートを、という人、特にビジネス用途の人にこの製品はぴったりかな、と思いました。