こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回は中国の10.1インチAndroidタブレット「VOYO i8 Plus」の実機レビューです。この製品は単なるタブレットではなく、本体にキックスタンドを備えており、専用のキーボードとスタイラスペンが用意される、トップ画像にあるように「Surfaceタイプ」の筐体構造を持っています。つい先ほど、HPのプレミアムなSurfaceタイプ「Spectre x2」の実機レビューを公開したばかりなのですが、その直後にこの製品のレビューをするというのは、ある意味「神様に試されている」ような気がします。
Spectre x2はCore i5搭載で15万円以上する製品、このVOYO i8 Plusはキーボードとスタイラスペン込みで2万円強で買える製品です。まともに比較する意味がないくらいに価格面で開きがあるので、「どっちがいいのか」という議論はナンセンスです。ただ、個人的にはVOYO i8 Plusは「なんとなく憎めない、そしてすごく楽しい」タブレットだと感じました。ウインタブ読者が喜びそうな、いい意味でのインチキ臭さ(キーボードの話です)もありますしねw
この製品は中国の通販サイト「geekbuying」に提供していただきました。geekbuyingにはこの場にて御礼申し上げます。ありがとうございました。
1.スペック
この製品は見た目ほどスペックは高くないです。OSはAndroid 7.0で、ほとんどカスタマイズされていない、というか、たぶん「素のAndroid」と言っていいものです。CPUのMT6753は、Antutuスコアが3万点台後半くらいなので、スマホだとエントリーからミドルレンジくらいの性能となります。RAMは3GBで、CPU性能から見て妥当な容量、ストレージは64GBありますので、ノートパソコン的に使う場合でも余裕がありそうです。
ディスプレイは10.1インチで解像度は1,920 × 1,200(WUXGA、アスペクト比16:10)です。一般的なノートPCやスマホに使われる1,920 × 1,080(FHD、アスペクト比16:9)よりはやや正方形に近く、本家Surfaceのアスペクト比3:2に近い形状になっています。このアスペクト比は10.1インチのWindowsタブレットと同じですね。
また、この製品はLTEモデルです。ウインタブではSIMおよびWi-Fi通信はレビューの対象にしていませんが、SIMスロットは2つ(標準SIM)装備され、それとは別にmicroSDスロットもあります。ただ、DSDS対応するかどうかは不明ですし、おそらく対応しないだろうと思います。
2.筐体
同梱物です。この製品はタブレット単体と別売りのキーボード、スタイラスペンがあり、geekbuyingでは単品売りとセット販売のいずれにも対応しています。今回はgeekbuyingのご厚意でスタイラスペンとキーボードも一緒にご提供いただいています。
上の画像はスタイラスペンを除き、本体と本体に同梱されるケーブル類、説明書などのペーパー類を掲載しています。まず、ペーパー類ですが、取扱説明書(中国語と英語、画像左上)と保証書(画像右上)がありました。また、ACアダプター(日本のコンセントで使えます)と主に充電に使用するUSB(オス)- microUSB(オス)のケーブルがついていました。
それと、この画像に写っているペン、実はi8 Plus用のものではありません。geekbuyingのご担当者(配送担当ではなく、マーケティング担当です)が間違えたのだろうと思います(いつもお世話になっているので、致し方ないと思っています)。
こちらが本来の「VOYO i8 Plus用のスタイラスペン」です。色が違うだけでなく、構造も異なります。なので、ひとつ上の画像に写っているペンは使えませんでした。それで、大変申し訳ないのですが、このレビューでは手書き入力のテストができません。取り急ぎペンを追加で注文していますので、後日追加でレビューさせていただきます。
筐体前面です。こうしてみるとごく普通のタブレットで、この画像だけ見て型番を言い当てるのは困難だと思います。前面には物理ボタン、センサーボタンはついておらず、タッチ操作でOSを操作する場合はソフトウェアキーを使うことになります。
左側面です。画像の中央付近にあるのはヒンジ金具で、Lenovoの「ウォッチバンドヒンジ」に近い構造になっています。また、画像右側にある凹みはキックスタンド開閉時の「手がかり」です。この面にはポートやボタンはありません。
上面です。画像中央やや右にmicroUSBポート、画像右にオーディオジャックがあります。この製品はDC-INはなく、microUSBポートからの充電/給電となります。
右側面です。こちらには電源ボタンと音量ボタンがあります。ボタン類は立て付けがよく、「カチッ」としっかり押せます。
下面です。キーボードの「ツノ」を受けるための穴が2カ所ありますが、この製品のキーボードはBluetooth接続のため、コネクター類はありません。
背面です。シルバーで、素材はキックスタンド部分が金属、それ以外はプラスティックですが、見た目の質感は悪くありません。2万円程度の製品としては十分なものになっていると思います。
なお、筐体素材について、側面(つまりフレーム)も金属でした。この時期、金属部分は「めっちゃ冷たい」ので、割とわかりやすいです。
背面の上部は着脱できます。いくつかのツメで取り付けられていて、器具を使わなくとも比較的容易に着脱できました。
この部分にSIMスロット(標準SIM)× 2とmicroSDスロットがあります。今回はSIMを挿入していませんが、この製品は2枚のSIMと1枚のmicroSDカードを同時に使用できます。このあたりの構造は以前かのあゆさんがレビューした「VOYO Q101」と同じですね。
すみません、この画像だけ撮影場所と時間が異なります。これは「キックスタンド裏」です。スピーカーはこの位置にあります。一見よさそうな配置に見えますが、裏側にある、ということと、使用時にキックスタンドにさえぎられる、というのがあるので、音質はあまりよくないです。
キックスタンドのおかげで、このようにタブレット単体で自立します。手書き入力の際はもちろんのこと、まったり動画視聴をする際にも便利なのではないでしょうか?
ただし、キックスタンドの先端(設置部分)はあまり滑らかとはいえず、乱暴に扱うとテーブルやデスクを傷つけてしまいそうに感じました。なので、先端部分に何らかの保護(セロテープとかでも大丈夫だと思います)をしたほうがよさそうです。
開口角度を確認しようとしたらこんなことに…。この製品めっちゃ開口しますw というか、ちゃんと考えてないだろ!というツッコミを入れたくなりますね。ということで、「好きなだけ開口できます」。
また、ヒンジ金具は非常にしっかりしていて、安定感抜群です。使っている最中に緩んできたりはしません。Lenovoのウォッチバンドヒンジより品質は劣るんでしょうけど、かなり信頼性が高いと思いました。
続いてキーボードです。これが今回のハイライトかもしれん、と思います。この画像、別に魚眼レンズを使っているわけではありません。なんかキー配列がナチュラルにエルゴノミクスになってます。
また、このキーボードは実際に使うかどうかは別としてWindowsとiOSにも対応しており、Fキーとかマルチメディアコントロールも可能です。
キーストロークは「一応あります」。ですが、その深さは限りなくゼロですね。直接キースイッチを押してるような感じになります。え?決まってるじゃないですか、私はこういう怪しい構造は大好きなんですよ。
このキーボードはBluetooth接続(つまりバッテリー内蔵)なので、オン/オフとかペアリングのボタン、インジケーターなどもついています。しかし、こんな感じです。大丈夫、ちゃんと機能します。
かなり薄型ですが、右側面に充電用のmicroUSBポートがあります。また、端っこが微妙に波打ってますね。繰り返しますが私はこういうのは大好きです。キーボードの芯地はおそらくプラスティックで、ふにゃふにゃではありませんが、Surfaceタイプのキーボードとしてはかなり柔らかめですね。また、表面はスウェードっぽい加工をしたラバー製、という表現でいいと思います。手触りはそんなに悪くありません。
キーボードを接続してみました。悪くないですね。もともとタブレット本体の質感は十分に合格点をあげられるものですし、キーボードだって「近くで見なければ」そこそこカッコいいです。
横から見てみます。この製品はSurfaceタイプの多くの製品が対応する「キーボードの角度調整機能」はありません。ただ接続して置くだけです。
アップで見ると微妙に浮いてますね…。
キーボードを閉じるとこんな感じです。やっぱりキーボード部分の端っこが少し波打ってるのが気になりますが、決して悪くはないと思います。また、このようにたたんだ状態で固定するストラップやマグネットはついていません。
一通り筐体を見てきましたが、タブレット本体の質感は価格から見ていいほうだと思います。一方でキーボードはいろんな意味で「すごい」と思わされました。ただこれ、実際に使ってみないと正しい評価はできませんよね…。
3.システム
OSはほぼ完全に「素のAndroid」で、日本語化は完璧と言っていいレベルで可能です。独自機能は見当たりませんでしたし、ワイヤレスアップデート機能も生きています。実際定期的にアップデートが受けられるかどうかはメーカー次第ですが、少なくともデバイス側の機能としては文句ありません。
ただ、セキュリティパッチの日付が2016年11月とかなり古くなっていて、このことからVOYOはあまりしっかりアップデートをかけてはくれないかもしれない、と感じました。
今回はキーボード付きの製品ということもあり、横向きの画面でスクリーンショットを撮っています。基本的に素直なAndroidという感じで、カスタマイズされているとは思えません。また、プリインストールアプリも非常に少ないです。なお、この画像にあるAututuベンチマークとGoogle日本語入力のみ私がインストールしたものです。
Google Playがある、というので一安心ですね。また、当初重宝すると思われるのが「WPS Office」と「Autodesk Sketchbook」です。ご存知の通り前者はOffice互換のソフトウェアパッケージ、後者は手書き入力用お絵かきアプリです。使っているうちにExcelやWord(Android版)などが欲しくなるのかもしれませんが、とりあえずこの2つのアプリで最低限のことはできると思います。
4.使用感
キーボード
最も心配されたキーボードの使用感ですが、結論から言うと、実用に耐えます。ただし、ある程度の慣れが必要になります。まず、キーボード面が手前側にあり、パームレストがない、というところに違和感があります。また。これはAndroidというOSに要因がありますが、IMEの切り替え方法がWindowsとは異なります(この製品の場合はWindowsキーみたいな絵の描かれたキーとスペースキーの同時押しになります)。
気になるキーストロークの浅さですが、これは意外と大丈夫です。というのもストロークの浅さはあれど、キーにクリック感があるので、ソフトウェアキーボードのような頼りない打鍵感にはなりません。
むしろ苦労するのはキーサイズが小さめであるということと、10.1インチというサイズによるキーピッチの狭さです(手採寸ですが、キーピッチは16ミリほどしかありませんでした)。個人的にはこのキーピッチに慣れることができれば思った以上に快適に使えるだろうと思います。
なお、打鍵中にキーボード面はそれなりにたわみます。ですが、この製品の場合、もともと打鍵の気持ちよさとかを追求してはいけないと思うので、もはや特に気にはなりません。
ディスプレイ
きれいです。手持ちのディスプレイと並べてみると、若干青みが強めですが、単体で使っていて気づくレベルではありませんでした。ウインタブでここ最近「イチオシ」しているTeclast T8と比較すると、スペック上の解像度は劣るものの、体感的な美しさではこの製品のほうが上だと感じました。ウインタブとしては高評価です。
また、今回は手書き入力のレビューはできませんが、Atutodesk Sketchbookを立ち上げて指で何本か線を引いてみたところ、きちんと筆圧には対応していました。しかし、ペン先(指先)の追随はワンテンポ遅れているような感覚でした。CPU性能やアプリとの相性というのがあると思いますが、この点も少し慣れが必要かもしれませんね。
アプリ
すべてのアプリを試すことなどできませんが、この製品の性能であればニュースアプリなどビジネス系のものは問題なく動作すると思います。また、ゲームですが、最近よく遊んでいる「シノビマスター 閃乱カグラ NEW LINK」を試してみました。ゲームそのものは問題なく遊べましたが、キャラクターなどの輪郭が少しギザギザしてしまいます。この現象はSnapdragon 821などの高性能CPUを搭載した製品では起こりません。
つまり、描画が追いついていない、もしくは簡略化されているということになります。このゲームは美少女キャラクターを愛でるという性格もありますので、人によっては不満を感じる可能性があると思います。まあ、あとは「納得できるか」ってことですね。このように、グラフィックの凝ったゲームなどを遊ぶ場合、多少描画が乱れてしまうことは覚悟したほうがいいかもしれません。パズルゲームなどで遊ぶ分には問題ないでしょう。
バッテリー
この製品はAndroid機なので、Windows PCよりはバッテリーが長持ちします。「ディスプレイの明るさを最大にして、WPS Officeでテキストライティング、YouTubeでの音楽鑑賞、ゲームアプリ」などを2時間ほどやってみましたが、バッテリーの消費は20%程度でした。ただし、2時間ひたすらにゲームで遊び続けたら、消費量はずっと大きくなると思います。
仮に仕事用に使うとして、外出先でちょこちょこテキストライティングをしたり、表計算ソフトをいじったり、移動中にニュースアプリとかSNSをチェックする、という程度であれば終日大丈夫なんじゃないか、と思いました。
スピーカー
あまり出来がいいとは言えません。キックスタンドを立てて音楽を聴く場合、スピーカーは背面にありますが、ステレオ感が出ないのと、音域のバランスが悪い(中音域がやたらと強調される)です。実用品としてはちゃんと使えると思いますが、音楽鑑賞に使うならイヤフォンもしくは外部スピーカーを接続したほうがよさそうです。
カメラ
この製品はスマホではなく、10.1インチのタブレットなので、当初カメラについてレビューするつもりはありませんでした。しかし、アウトカメラ12MPというのはタブレット製品としてはなかなかの性能なので、ごく簡単にチェックしてみました。
個人的な感想を書かせてもらうと、12MPという感じではないです。画質が悪い、とまでは言いませんが、おそらく「ソフトウェア補間後で12MP」というやつだと思いますし、スマホのカメラほどの美しさは感じません。また、カメラアプリもAndroid標準のものがそのまま使われているだけなので、サードパーティのカメラアプリを使えばもう少し加工もできますし、面白く使えるのかもしれません。
ただ、この製品をカメラ目的で購入する人はほとんどいないと思います。なので、その意味においては、「タブレットとしては結構まし」という評価でいいと思います。
5.性能テスト
いつものようにAntutuベンチマークをやってみました。
参考:
LeEco Le Pro 3(Snapdragon 821): 161,331
LeEco Le Max 2(Snapdragon 820): 135,484
Lenovo ZUK Z2(SnapDragon 820): 132,410
UMI Z(Helio X27): 110,070
Vernee Apollo(Helio X25): 93,251
Elephone S7(Helio X25): 92,543
Ulefone T1(Helio P25): 67,409
Ulefone Armor 2(Helio P25): 66,331
Ulefone T1 Premium(Helio P25): 64,775
Xiaomi Mi A1(Snapdragon 625): 63,577
Blackview BV8000 Pro(Helio P20): 63,473
DOOGEE MIX(Helio P25): 61,975
DOOGEE Y6 MAX(MT6750): 45,070
CoolPad Max A8(Snapdragon 617): 43,832
Elephone P8 Mini(MT6750T): 42,593
Nomu S10 Pro (MT6737T) : 37,349
※マウス MADOSMA Q501(Snapdragon 410): 35,663
ZOJI Z7(MT6737); 30,616
Ulefone U008 Pro(MT6737): 30,103
※Cube WP10(Snapdragon 210): 29,273
VKWorld Mix Plus(MT6737):27,127
※ドスパラ Diginnos Mobile(Snapdragon 210): 23,785
※FREETEL KATANA 01 (Snapdragon 210) : 22,724
ざっくり「4万点」ということにしておきましょう。このスコアはMediaTek MT6750よりも若干低くなりますが、大きな差はありません。つまり、MediaTekのミドルレンジのCPUといい勝負くらいだと言えます。最近はAntutu6万点とか10万点とかのスマホが多くなっているので、このスコアだとかなり心細く感じるかもしれませんが、実際に使ってみると、全然もっさりしたりカクカクしたりはしません。
この製品の場合、キーボードを接続してメモを取ったり、表計算ソフトを使ったりといった作業に使うことも想定されますが、その程度であれば全く問題ないと思います。ちょっと心配なのは上に書いたようにゲームの種類によってはグラフィックが乱れてしまったり、挙動がワンテンポ遅れてしまうなどのストレスを感じるかもしれない、ということです。この製品をゲーム用として購入するのは少し無理があると思いますが、ビジネス用ということで、外出時に持ち出して仕事に使う、ということなら特に不満を感じたりはしないと思います。
6.まとめ
VOYO i8 Plusは中国の通販サイトgeekbuyingで販売中で、1月12日現在の価格はタブレット本体が179.99ドル(20,642円)、キーボードとスタイラスペンをセットしたものが189.99ドル(22,053円、クーポンコード:GKBVOYO02)となっているので、セットになっているものを購入するほうがお買い得です。
今回は残念ながらスタイラスペンを使っての手書き入力テストができませんでした。また、ウインタブではSIM通信とWi-Fi通信のテストはしていないので、この製品のセールポイントであるLTE対応についても言及ができません。
しかし、タブレットとしての基本性能は十分なものがありますし、本体にキックスタンドがついていて自立できる、というのは非常に魅力的です。10.1インチサイズなのでそれなりに重いですしね。また、キーボードは見た目かなりいい加減(個人的にはそこを愛したい)な作りでしたが、思った以上に使いやすかったです。OSはAndroidですけど、バッテリーが長時間もって、しかも低価格なサブ機としては素晴らしいって言えるんじゃないでしょうか?
この製品を小脇に抱えて、きちっとスーツを着込んでスタバに行きます。そうするとマカー(Macユーザー)と、あとはSurfaceをいじっている人が見つかると思うので、その人の隣に座ります。そしておもむろにこの製品を使い始めます。Surfaceユーザーと目が合ったら「ニヤリ」としてやりましょう。これ、やってみたくないですか?私はこの製品、大好きですね。古くから中華製品を使っている人ならわかってもらえるかな…。
7.関連リンク
VOYO i8 Plus
クーポンコード: GKBVOYO02(キーボード+スタイラスペンセットのみ)
コメント
「キー配列がナチュラルにエルゴノミクス」の意味がわかりませんでした
ホームポジションのキーがV字になってるわけでもなさそうですし