Xiaomiのサブブランド、「POCO」のニューモデル、POCO X4 GTの実機レビューです。この製品は7月7日現在、日本国内では販売されておらず、中国市場向けの「Redmi Note 11T Pro」のグローバルモデルであるとされています。円安の影響もあり、iPhoneやXperia 1 IV等のハイエンドスマートフォンはすっかり高価になってしまい、気軽に購入できる感じでもなくなってしまいましたが、POCO X4 GTは約4万円で購入できる製品ながら、パフォーマンスに関してはハイエンド機に匹敵する実力を備えています。
なお、同時発表された「POCO F4」についても実機レビュー記事を掲載しています。こちらもあわせてご覧ください。
POCO F4の実機レビュー - 美しい有機ELディスプレイと高性能なSnapdragon 870を搭載、これで約4.5万円!POCOおそるべし!
レビュー機はAliExpress内のPOCO Official Storeよりサンプル提供していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。
・CPUのDimensity 8100はSnapdragon 888と互角以上の性能
・リフレッシュレート144Hz表示に対応するディスプレイ
・Dolby Atmosをサポートする高音質スピーカー
ここがイマイチ
・MicroSDカードによるストレージ拡張には非対応
・光学手ぶれ補正が非搭載
販売サイトはこちら
POCO X4 GT:POCO Official Store(AliExpress)
目次
1.POCO X4 GT スペック
スペック表
POCO X4 GT | |
OS | MIUI 13(Android 12ベース) |
CPU | MediaTek Dimensity 8100 |
RAM | 8GB |
ストレージ | 128GB/256GB |
ディスプレイ | 6.6インチ(2,460 x 1,080)144Hz |
LTEバンド | 5G:n1/3/5/7/8/20/28/38/40/41/77/78 FDD-LTE:B1/2/3/4/5/7/8/20/28 TDD-LTE:B38/40/41 |
SIM | nanoSIM × 2 |
ネットワーク | 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.3 |
入出力 | USB Type-C、オーディオジャック |
カメラ | イン16MP/アウト64MP + 8MP + 2MP |
バッテリー | 5,080 mAh |
サイズ | 163.64 x 74.29 x 8.87 mm |
重量 | 200 g |
バリエーションモデル
・RAM8GB/ストレージ128GB(レビュー機の構成)
・RAM8GB/ストレージ256GB
コメント
プリインストールOSはAndroid 12ベースのMIUI 13 for POCOです。CPUにはMediaTek Dimensity 8100を搭載しています。かつては性能面でQualcommのSnapdragonよりも性能が劣る…という印象があったMediaTek製CPUですが、近年性能向上が著しく、Dimensity 8100の性能はCPU、GPUともに1年前のハイエンドモデルに採用されていたSnapdragon 888 5Gを上回るものになっています。
後述するAnTuTu Benchmark v9でのベンチマーク結果も昨年実機レビューをしたASUS Zenfone 8(Snapdragon 888搭載)を上回るスコアを計測しており、「原神」クラスの重量級3Dゲームも高画質設定で快適にプレイすることができます。「4万円強でこれだけの性能が手に入る」のは驚異的なことだと思います。また、これも後述しますがSnapdragon 888 5GやSnapdragon 8 Gen 1と比較するとゲームを長時間プレイした際の発熱も抑えられています。
RAMは8GB、内蔵ストレージは128GB/256GBの2種類が選べ、microSDカードによるストレージ拡張には対応しません。
ディスプレイは6.6インチサイズで、解像度はFHD+(2,460 × 1,080)です。POCO F4/POCO F4 GTとは異なり、パネルはAMOLED(有機EL)ではなくIPS液晶ですが、リフレッシュレートは144Hz表示に対応しています。またフラッグシップモデルであるXiaomi 12 Proと同じく、使用しているアプリによってリフレッシュレートを30Hzから144Hzまで7段階に調整してくれる「Dynamic Switch」に対応しているため、消費電力も抑えられています。タッチサンプリングレートは270Hzです。
カメラはイン16MP、アウト64MP(メイン) + 8MP(超広角) + 2MP(マクロ)という構成です。同時発表されたPOCO F4に近いスペックとなっていますが、POCO X4 GTではOIS(光学式手ぶれ補正)に対応しないなど差別化されています。そのため夜景撮影などに関してはPOCO F4の方が有利と思われますが、POCO X4 GTでも美しい写真を撮影可能です。
ワイヤレスネットワークは802.11a/b/g/n/ac/axとBluetooth 5.3に対応します。通信バンドに関しては「いつものPOCO」という印象で、海外利用に最適化された仕様になっていますが、VoLTEの利用は可能でした。
スピーカーはステレオで、Xiaomi 12シリーズやRedmi Note 11 Pro + 5Gとは異なり、オーディオメーカーがチューニングを担当しているわけではありませんが、Dolby Atmosに対応しており、迫力のあるサウンドを楽しむことができます。
バッテリー容量は5,080 mAhで、67W出力の急速充電に対応します。
2.POCO X4 GT 筐体と使用感
付属品はマニュアルなどのペーパー類(日本語表記なし)、USB-C to Aケーブル、67W出力対応ACアダプター(海外プラグ)、SIMピン、TPUケース、液晶保護フィルムです。TPUケースはRedmi Note 11シリーズでも採用されていたUSB-Cコネクターのカバーが用意されているタイプのものが付属しています。当たり前ですが現状日本国内ではこの製品に合うケースが全く存在しないだけに、最初からしっかりしたケースが付属するのはありがたい限りです。
前面です。Redmi Note 11シリーズやXiaomi 12 Proでは液晶保護フィルムが最初から装着された状態で出荷されていましたが、POCO X4 GTでは装着されていませんでした。パンチホールノッチが採用されており、ディスプレイは液晶保護フィルムが貼りやすいフラットタイプとなっています。
背面です。デザインはPOCOブランドのスマートフォンとしては「おとなしめ」です。ガラス素材が採用されており、光沢を抑えたフロスト加工が施されています。今回のレビュー機の筐体色は「ブラック」ですが、他に「ブルー」と「シルバー」もあります。POCOなのに「ポコ・イエロー」が存在しないのも珍しいですね…。
左側面にボタンやポート類はありません。
右側面はボリュームボタンと指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンがあります。指紋認証の精度は高いものでした。
上部にはXiaomi製スマートフォンではおなじみの赤外線センサー、マイク、スピーカー、3.5 mmイヤホンジャックがあります。
下部にはSIMトレイ、マイク、USB-Cポート、スピーカーが配置されています。SIMトレイはnanoSIMが2枚挿入できる設計になっていますが、MicroSDカードの増設には対応していません。
システム
繰り返しになりますが、OSは現時点で最新バージョンとなるAndroid 12ベースのMIUI 13 for POCOです。デフォルトのランチャーが「POCO Launcher」に変更されていますが、それ以外の操作性に関してはXiaomiやRedmiブランドの端末に採用されているMIUI 13とほぼ変わりません。
プリインストールアプリはMIUI標準アプリとGoogle純正アプリのほか、WPS Officeなどのサードパーティ製アプリも一部ありました。CPUの性能が高いこともあってか「原神」もプリインストールされていました。
MIUI 13標準機能として「ゲームターボ」が搭載されており、通知の抑制やパフォーマンス設定の変更、スクリーンレコーダー機能の呼び出し、フレームレートの確認などゲームプレイ中に便利な機能を呼び出すことが可能です。
上で「Xiaomi製品としてはおなじみの」と書いた赤外線センサーを使用し、テレビやエアコンなどのリモコンとして使える「MI リモート」も搭載されています。POCO X4 GTのみならず、Redmi Note 11シリーズやXiaomi 12 Proにも搭載されていますが、パナソニックやソニー、シャープなどの国内メーカーの家電製品にも対応しています。
工場出荷時のストレージ情報です。今回レビューしているのは128GBモデルとなりますが、ゲーミングスマートフォンとしての性能も高い端末と言うこともあり、本格的にゲームを楽しみたいのであれば128GBモデルだと(ストレージ拡張に対応していませんし)場合によっては窮屈に感じることもあるかもしれません。POCO X4 GTには256GBモデルも用意されているので、ゲームを大量にインストールする予定があるのであればそちらの購入がお勧めです。
工場出荷時のシステム情報です。プリインストールされていたのは「MIUI 13.0.1」で、Androidセキュリティパッチは2022年6月1日のものが適用されていましたが、既にMIUI 13.0.3へのアップデートが配信済みとなっています。(Androidセキュリティパッチレベルは変わらず)
ディスプレイ
同時発表されたPOCO F4とは異なり、AMOLEDパネルではなくIPSパネルを採用しているため、Always On Displayは使用できませんが、発色はかのあゆが使用しているXiaomi 12 Proと比較しても劣っているということはなく、美しいものでした。
使用状況に応じてリフレッシュレートを可変させる「Dynamic Switch」にも対応しています。設定からリフレッシュレートを固定することも可能ですが、基本的には標準設定の「デフォルト(可変)」のままで問題ありません。
DRM Infoで確認したWidevineのレベルは「L1」で、NetflixやAmazon プライムビデオのHDコンテンツ再生もサポートしています。
スピーカー
スピーカーはステレオ出力のものが採用されています。Xiaomi 12シリーズでは「Harman/Cardon」、Redmi Note 11 Pro+ 5Gでは「JBL」がチューニングを担当していましたが、POCO X4 GTでは特にオーディオメーカーがチューニングを行っているわけではありません。
ただし、Dolby Atmosをサポートしており、対応コンテンツであれば迫力のあるサラウンド・サウンドを楽しむことが可能です。スピーカーの音質に関してもスマートフォンに搭載されているものとしては高音質で、ゲームプレイ中も迫力のあるサウンドを楽しむことができました。
カメラ
カメラUIはXiaomiやRedmiブランドの端末に搭載されているものと共通で、ナイトモードや64MP撮影モードなどの機能が備わっています。
画素数だけ見るとメインレンズがRedmi Note 11 Pro 5GやRedmi Note 11 Pro+ 5Gの108MPから64MPと数値上では落とされているように見えるのですが、カメラの画質は決して劣っていることはなく、美しい写真を撮影可能です。
ただし、夜景も明るい写真を撮影可能ですが、POCO F4とは異なりOIS(光学式手ぶれ補正)が搭載されていないこともあり、手持ち撮影だと手ぶれが起きてしまう点は少し気になりました。
3.POCO X4 GT 性能テスト
参考:
Xiaomi 12 Pro(Snapdragon 8 Gen 1):971,423
ASUS ROG Phone 5s(Snapdragon 888+):846,862
ASUS Zenfone 8(Snapdragon 888):785,280
Mi 11T(Dimensity 1200 Ultra):582,178
Xiaomi Pad 5(Snapdragon 860):566,309
realme GT Master Edition(Snapdragon 778G):542,182
Xperia 1 SOV43(Snapdragon 855):511,163
Xiaomi Mi 11 Lite 5G(Snapdragon 780):500,573
Oneplus Nord CE 2 5G(Dimensity 900):430,049
Redmi Note 11 Pro + 5G(Dimensity 920):427,053
Samsung Galaxy Fold SCV44(Snapdragon 855):414,302
OnePlus Nord CE 5G(Snapdragon 750):384,505
iiiF150 R2022(Helio G95):350,565
POCO M4 Pro 5G(Dimensity 810):349,498
OnePlus Nord N10(Snapdragon 690):342,506
AGM Glory G1S(Snapdragon 480):340,864
AGM Glory Pro(Snapdragon 480):340,772
POCO M3 Pro 5G(Dimensity 700):330,303
Redmi Note 11 Pro(Helio G96):336,280
POCO M4 Pro 4G(Helio G96):311,030
Redmi Note 11S(Helio G96):307,755
realme narzo 50(Helio G96):287,043
Redmi Note 11(Snapdragon 680):277,105
Blackview A95(MediaTek Helio P70):227,817
DOOGEE S98(Helio G96):277,159
CHUWI HiPad Plus(MT8183):172,713
Samsung Galaxy Note FE(Exynos 8890):177,984
Blackview BV6600 Pro(Helio P35):102,808
OUKITEL C22(Helio A22):99,664
AGM H3(Helio P22):84,184
BlackView A55S(Helio A22):78,630
geanee ADP-503G(MT6737M):46,316
POCO X4 GTのCPUはMediaTek Dimensity 8100です。AliExpressでの製品ページでは「Snapdragon 888を超えるベンチマークスコアを計測する」という説明になっていましたが、実際にバッテリー設定を「パフォーマンス」に変更してAnTuTu Benchmark v9で性能テストを行ってみたところ、Snapdragon 888搭載のZenfone 8をわずかに上回りました。さすがにROG Phone 5sに搭載されているSnapdragon 888+やXiaomi 12 Proに搭載されているSnapdragon 8 Gen 1には届かないものの、GPUのベンチマークスコアも30万点という高いスコアを計測しています。なおデフォルトの「バランス」モードだとベンチマークスコアが76万点程度に下がりましたが、これでも十分すぎるほど高い性能なので、普段使いでは特にパフォーマンスモードの設定を変更する必要はありません。
「原神」を最高画質設定でプレイしてみました。Snapdragon 8 Gen 1を搭載しているXiaomi 12 Proでももちろんこの設定で快適にプレイすることができるのですが、長時間プレイしていると背面がかなり熱を持ってくる点が気になります。Dimensity 8100を搭載しているPOCO X4 GTでは高画質設定でもフレーム落ちする場面は見られなかったほか、発熱も気になりませんでした。正直「ゲーミングスマートフォンとしての性能はむしろPOCO X4 GTの方が優秀なのでは?と感じました。
4.POCO X4 GT レビューまとめ
POCO X4 GTはAliExpress内のPOCO Official Storeにて販売中で、7月7日現在の表示価格は349ドルになっていますが、買い物かごに入れると表示価格から50ドルOFFになり、299ドル(41,233円)から購入できます。円安の影響を受けた結果、7月に入ってAppleのiPhoneシリーズも値上げが発表され、AndroidスマートフォンでもSnapdragon 8 Gen 1を搭載するXperia 1 IVやAQUOS R7は約20万円と、とても気軽に購入できるような値段ではなくなってしまいましたが、POCO X4 GTは4万円強という価格ながら1年前のハイエンドスマートフォンに匹敵する性能を持ち合わせたまさに「コスパモンスター」といっていい端末に仕上がっています。
日本国内で販売されているRedmi Note 11 Pro 5Gとあまり変わらない価格帯ですが、「原神」などの最新3Dゲームを高画質設定でヌルヌル動かせる性能を備えており、ゲームも楽しみたいのであればPOCO X4 GTの方が満足度は高いかと思われます。日本国内ではSnapdragon 8 Gen1を搭載したPOCO F4 GTが正式に投入されましたが、個人的には発熱とゲーム性能のバランスがうまくとれているPOCO X4 GTを投入した方が良かったのではないか、と感じています。
5.関連リンク
POCO X4 GT:POCO Official Store(AliExpress)