こんにちは、natsukiです。ウインタブでも採りあげることの多くなってきた「電子ペーパー」タブレットですが、このところは、伝統的な電子書籍リーダーとしての機能に加えてデジタイザーを搭載してノートとしても活用できる製品が増え、電子ペーパーの新たな世界を開拓しています。しかし2018年段階では、デジタイザー搭載の電子ペーパータブレットは10インチクラス以上ばかりで、小サイズが好まれる伝統的な「電子書籍タブレット」と兼用するのは難しいものでした。が、今年に入っていよいよ、その両立が可能なミニサイズの電子ペーパータブレットの入手が見えてきました。
中でも、個人的に注目している2つの製品、「MobiScribe」と「BOOX Nova Pro」を比較、紹介してみたいと思います。
目次
1.「MobiScribe」と「BOOX Nova Pro」のスペック比較
「MobiScribe」と「BOOX Nova Pro」は、いずれもAndroid OSを搭載した電子ペーパータブレットであり、電子書籍リーダーとして十分に持ち運び可能な小ささながら、信頼のWACOM製のデジタイザーを備え、快適な書き込みにも対応しているのが特徴です。
ディスプレイサイズは、MobiScribeが6.8インチ、BOOX Nova Proが7.8インチと、MobiScribeの方が一回り小さくなっています。なお、無印Kindleをはじめとした「電子書籍リーダー」専用端末は、多くがディスプレイサイズ6.0となっており、文字閲覧にはこれで十分ですが、マンガなんかも見たい場合はもう少し大きめの方が見やすく、例えばKindle最上位バージョンのKindle Oasisは7インチとなっています。
細かいスペックを比較すると、以下のようになります。
それでは、それぞれの注目ポイントをチェックしてみます。
2.クラウドファンディング発の「MobiScribe」
まずは、6.8インチの「MobiScribe」。
クラウドファンディング発の製品です
この製品が面白いのは、スペック以前に、クラウドファンディングINDIEGOGOによる開発だということです。以前から気にはなっていたんですが、日本ではほとんど聞いたことのない「TeamUC」というメーカー製で不安もあったので、今まで紹介は控えてきました。しかし、とりあえず製品完成にこぎ着けて発送も始まったようで、また、出資もまだしばらく受け付けているようなので、紹介します。
すでに発送開始ということで、致命的な問題は発生しにくいとは思いますが、あくまでクラウドファンディングであり、「購入」ではなく「出資」なので、発送遅れくらいはあたりまえ(実際、出資説明に、現在の受付は2回目の出荷で「shipping in June」になると説明してある一方で、「Estimated Delivery May 2019」とも書いてあったりしてます)、製品品質もある程度ギャンブルということは良く理解した上で出資してください。
評価点
やっぱり一番嬉しいのは、6.8インチというサイズ感でしょう。デジタイザー搭載電子ペーパータブレットとしては、管見のかぎり最小です。デジタイザー性能も、WACOM製で、動画を見る限りはレスポンスも悪く無さそう。
そして、安い。記事執筆時点で、カバーもセットになっていて出資額214ドル。これは、過去のBOOXシリーズなどをみると、デジタイザー無しの6インチサイズ電子ペーパータブレットとして標準的な価格です。
不安点
クラウドファンディングであることの不安点とは別に、製品そのもの不安点も見ておきます。
最大の不安点は、やはりシステム。OSはAndroid4.4をベースとしたものだそうで、つまり、古い。たいていの基本的なアプリはまだ動作すると思われますし、Kindleアプリの動作確認もできているとのことですが、今後、どうなるかは分かりません。
RAMは1GB。Android4.4ならこれで十分との判断なんでしょうが、OSはともかくとして、アプリはどんどん高機能になっていきますから、ここもちょっと不安。まあ、マルチタスクとかやらせるつもりはもともとないですけどね。
ストレージは8GBですが、microSDカードの32GBで拡張できるので、ここはあまり心配は要らないでしょう。
また、Google Playにも対応していません。自分でapkファイルを入手してインストールする必要があります。
ハード面の構成で気になるのは、Bluetoothを搭載していない事でしょうか。つまり、キーボードをはじめとする周辺機器は使えないということです。microUSBポートはあるので有線接続できる可能性はありますが、製品説明には言及はないし、全体のスペックからして給電能力があるとは期待できません。参考までに、BOOXシリーズでもBluetoothを搭載せずAndroid4.2搭載の「BOOX C67ML Carta2」の場合、microUSBポートは充電とデータ転送までで、周辺機器は稼働しません。
ただし、これらのデメリットは、よく理解した上であれば克服できるものです。例えば、OSが古いことによるアプリとの互換性は、どのみちGoogle Playに対応していないので、これを買う人は古いバージョンのapkファイルを入手するくらいのスキルはあるでしょう。というか、そういうスキルがないと使いこなせないとも言えます。クラウドファンディングらしいというか、全体的に、かなり「分かっている」人が使う製品と言えます。
3.実績十分で安心の「BOOX Nova Pro」
こちらは、実績十分。もはや電子ペーパーAndroidタブレットの代名詞とも言えるBOOXシリーズ最新作。個人的にもずっと注目してきた機種で、今までの記事中でたびたび言及してきました。先日のCES 2019で、やっと価格と発売時期が言明されました。
上の動画は、BOOXシリーズについて速報をたびたびアップしてくれている「Notebook Italia」さんより。動画の最後の方で「This product will be release in the market around April from 2019」と言っていますが、3月との情報もあり、まあ、その辺らしいです。価格は299ドルの予定ということで、デジタイザー無しのBOOX Novaから40ドル増しと、思ったより安価に仕上げてきた印象です。ライバルの「Likebookシリーズ」の追い上げも激しいですからね。
評価点
すでにデジタイザーを搭載しないBOOX Novaは販売済みで、レビューさせていただいた上で継続使用しています。また、デジタイザ性能も、より大きいサイズのBOOX Noteのレビューをさせていただいており、その使用感は分かります。つまり、冒険的な部分はなく、すでに発売済みの製品で実証されている機能を組み合わせただけなので、その安心感は十分です。細かい部分は、それぞれのレビュー記事をご覧ください。
上の動画は、BOOX Noteのものになります。デジタイザーについてはBOOX Noteを見る限り素晴らしい性能で、ノート・メモ・スケッチ用途として申し分ないものです。ただし、実質的に専用アプリでしか機能せず、そのため、書いた内容を他の機器で活用するためにはそれなりの工夫が必要になるでしょう。なお、BOOX Noteレビュー記事執筆時点では、専用ノートアプリに深刻なバグがありましたが、現在は改善されている模様。BOOXシリーズは、もしシステム面に不具合があっても、かなりマメにアップデート対応をしてくれる点も安心できる点です。
デジタイザーがないだけで他はまったく同じのBOOX Novaを使用してきて、使用上の目立つ不満点としては、Kindelアプリとの相性が悪いことと、UIのホーム画面にいわゆる「ドック」のようなアプリへのショートカットを置けないことくらいです。有効化に一手間かかるものの、Google Playにも対応しています。
なお、フロントライトについては、昨年までの発表では非搭載ということでしたが、最終的には搭載することになったようです。
その他の部分では、電子ペーパーAndroid端末として十分な性能を備えている、というか、BOOX Novaのスペック面で不満があったとしても、現状でこれ以上のものは存在しないでしょう。
不安点
電子ペーパーAndroidタブレットの老舗だけあって、スペック面の完成度は非常に高く、使用面でも、実際に既発売製品で性能を確認できるだけに、不安な点はほとんどありません。
先ほど触れたように、Kindleアプリとの相性の悪さは、数少ない残念な点です。症状はKindleアプリでマンガを読む際に、ページめくりがうまくいかずに中途半端なところで止まってしまうというもので、Kindelをメインの電子書籍アプリにしている人にとっては致命的になりかねません。修正が待たれるところです。
4.まとめ
電子ペーパーAndroidタブレットは非常にクセが強く、使いこなすには一定のスキルが必要になるガジェットです。しかし、うまく扱えば手放せない最高の相棒になってくれます。MobiScribeもBOOX Nova Proも、このくらいのサイズなら電子書籍リーダーとしての伝統的な使い方と、メモとしての使い道が両立できます。個人的には、PDFファイルに書き込めるというのが、使い道が色々ありそうで気になります。
先ほど確認したように、価格面では、MobiScribeの214ドル、BOOX Nova Proの299ドル予定というのは、他に競合や先駆者のない製品としては十分安価と言えると思います。ワンランク上のサイズの10インチクラスだと、デジタイザー搭載機は、BOOX Noteが、バージョンによる違いがあるものの500ドル前後、Likebook Mimasが459ドル、reMarkableが約600ドルしますから。MobiScribeは、クラウドファンディング発ということもあって、かなりギークな製品に仕上がっているようですが、そういうものほどそそられるってのもありますよね。製品完成にまではこぎ着けているので、このくらいの価格なら、いろいろ分かった上でチャレンジしてみる価値は十分にあるかと。BOOX Nova Proは、Noteシリーズから考えて、正直、350~400ドルは行くかなと思っていたので、このくらいの価格に抑えてくれたのは素直に嬉しい。サイズ的にも性能的にも、オールマイティに活躍できる名機の予感がします。
5.関連リンク
MobiScribe The E-ink Notepad:INDIEGOGO
BOOX Nova Pro:BOOX
SKT株式会社:BOOXの国内正規代理店。日頃ウインタブの運営にご協力頂いています。
コメント
BOOX Nova Proは楽しみ
まさしく! ここまでのBOOXシリーズの集大成とも呼べるスペックですからね! 期待が高まります。
BOOX Nova Proが299ドルと言っても、日本で買うとBOOX Novaが公式でAmazonで買うと36,500円だから4万軽く超えるでしょ?
日本での価格はそのくらいになるでしょうね。絶対的な価格の評価はさておき(売れ具合が物語っているでしょう。個人的には、ライバルLikebook Marsの優秀さも知っているので、もうちょい価格競争があっても良いとは思いますけど)、BOOX Novaの発売価格は269ドルだったので、ワコム製デジタイザー追加分が30ドルというのは、やはりお買い得だと思いますよ。
MobiScribeは手帳だとB6サイズで、NovaはA5サイズですね。このあたりも、手帳として使うなら考慮すべきかもしれませんね。
というより、今悩んでる最中です。
書き忘れ
参考までに
「A5」サイズは148mm×210mm
「B6」サイズは128mm×182mm
https://www.sizekensaku.com/kami/b6.html
コメントありがとうございます。
どちらも、ベゼルは太いので、ディスプレイサイズは、もうワンランク下になりそうですね。
ついでにケースを考えると、MobiScribeはペン収納部分がしっかりしているので、堅牢性がある分サイズは大きくなってます。もっとも、クラウドファンディングゆえに、本当にこの形状になるのかの保証はありませんが。BOOX Nova Proのケースのペン収納は、BOOX Novaと変わらないとすると、サイドのホルダーに引っ掛けるだけの構造です。ペン先も保護されていないし、あんまり無造作にカバンに突っ込むとちょっと心配?
システム面のギークさを使いこなす自信があり、クラウドファンディングのリスクを織り込み済みなら、価格といいサイズといいMobiScribeも非常に魅力的なんですよね。
お値段も考えて、結局Likebook Marsを買いました。
その際、natsukiさんの記事がとても参考になりました。
ありがとうございます。
ご購入おめでとうございます。
コスパでいけば、LikeBook Marsですね。
残像ではBOOX Novaに遅れをとりますが、文字メインならあまり関係ないし。電子書籍アプリとの相性がいいのも推しどころです。
と、新機種の情報が…