TimekettleのAI翻訳イヤホン「W4」の実機レビューです。ウインタブでは過去に何度かTimekettle製の翻訳イヤホンをレビューしていますが、レビューするごとに品質(翻訳精度とイヤホンとしての音質)が向上しているのを実感しています。また、直感的には「翻訳」というのは「AI」と親和性が高いジャンルと思われますので、最新モデルW4の性能向上にも期待できそうですよね!
・42言語、95のアクセントに対応
・認識精度・翻訳精度が大きく向上
・日/英と日/中のオフライン翻訳に対応、言語パックの入手も無料
・音楽用のイヤホンとしても利用可能
ここはイマイチ
・講演、映画や海外ニュースなどの聴講翻訳の精度は弱い
・52,000円とやや高価
1. スペック表
項目 | 仕様 |
---|---|
サイズ(ケース) | 66.6×54.3×33.9 mm |
重量(本体/ケース込み) | 本体1つあたり:5.7 g ケース込み総重量:116.5 g |
接続方式 | Bluetooth 5.3 |
バッテリー容量 | 本体1つあたり:60 mAh ケース:500 mAh |
ケース充電時間 | 約1.5時間 |
駆動時間 | 翻訳:約3時間 通話:約4時間 音楽再生:約7時間 |
2. 主な特徴
「翻訳イヤホン」と言われてもピンとこない人が少なくないと思います。翻訳イヤホンの使い方は主に下記の2通りです。
ひとつは、二人で左右のイヤホンを1つずつシェアし、互いの言語(例:左のおじさんが英語、右の女性が日本語)で会話すると、相手のイヤホンにリアルタイムで翻訳される、というものです。W4では翻訳速度も向上し、最短0.2秒で翻訳を開始するとのこと。

画像のイヤホンはW4ではありません
もうひとつは、自分で左右のイヤホンを装着し、会議に出席したり講演やYouTube動画などを視聴(聴講)すると、外国語のスピーチが母国語に翻訳される、というものです。
次にW4の特徴について説明します。
W4は大規模言語モデル(LLM、ChatGPTなどのAIアシスタントがそうです)に基づき、より洗練された翻訳が可能です。
AIセマンティック判断、というのは「単語を一対一で置き換えるのではなく、文脈・意図・意味を理解して判断する」という意味です。つまり、機械翻訳にありがちな直訳ではなく、文脈を理解したうえで自然に翻訳する、ということだと思います。また、一方が少し長く話を続けた際に、話の途中でも翻訳をスタートさせることができます。
Timekettle W4は「骨伝導センサー」を搭載しています。よくある「骨伝導イヤホン」とは別で、「騒々しい場所でも正確に話者の声を拾うため」のものです。今回は試せていませんが、イベント会場等でも周囲の騒音に邪魔されることなく商談ができそうです。
3. 外観
箱です。Timekettle製品の箱は構造が凝っており、ちょっとパズルっぽい感じもするので開封するのが楽しみです。
同梱物です。上にある3つのペーパー類は左からFAQ、クイックスタートガイド、付属のイヤーチップの取り付け方法が書かれた一枚ものです。すべて日本語を含む多言語で書かれています。
画像左下がケース、開封時にはケース内部にすでにイヤホン本体が入っていました。その右に充電用のUSB Type-A – Type-Cのケーブル、イヤーチップ、イヤーフックです。
ケースです。金属製でずっしりとした感触、重量もイヤホン本体込みで116.5 g (実測値117 g)と、一般的なワイヤレスイヤホンのケースよりは重いです。このケースには500 mAhのバッテリーが内蔵されています。
ケースは「真ん中から」パカッと開けます。ちょっと個性的ですよね。磁力強めのマグネットが仕込まれているので、バッグの中などに入れても (よほどのことがない限り)勝手に開いたりはしません。
ケース右側面には充電用のUSB Type-Cポートがあります。これ以外にケース外装にポート類やボタン類はありません。
ケースを開けるとイヤホン本体が出てきます。右側 (右下に「R」と書かれているほう)の下部に四角いボタンがありますが、これはペアリングボタンです。
Timekettle W4はいわゆる「うどんタイプ」のデザインの「インナーイヤー型」イヤホンです。
左が「左ユニットの外側」、右が「右ユニットの内側」です。この製品には「骨伝導センサー」「マイク」が内蔵されていますが、…すみません、どれがマイクでどれがセンサーなのかはわかりませんでした。
なお、ユニットの外側はタッチ対応しており、タッチ操作で音楽の再生/一時停止/曲送りと電話の受話/終話ができます。
イヤホン上部にもマイクがあります。
装着イメージです。モデルはうちの次女で、身長が150 cm強と小柄なので、W4がちょっと大きく見えてしまうかもしれませんが、実際に一般的なうどんタイプのイヤホンよりは一回り大きい、という印象です。
付属のイヤーチップとイヤーフックを取り付けたところです。これらのパーツは「必ず取り付けるべき」ものではなく、装着がしにくい場合 (うまく耳に入らず、安定しないなど)に使ってください、との注意書きがありました。
ちなみに私は日頃カナル型のイヤホンを使っているため、W4を装着すると少し「ゆるい」と感じました。ただ、このあたりは人それぞれだと思いますし、ゆるく感じられてもイヤーチップとイヤーフックを使えばしっかり安定するはずです。
4. アプリと使用感
Timekettleの翻訳イヤホンにはアプリ「Timekettle」が用意されています (Google Play / App Store)。逆に言うと、Timekettle W4はアプリがないと単なる音楽用のイヤホンとしてしか使えません。
この画像はアプリを起動し、W4を接続した直後のものです。使えるのは「二人での会話」と「傍聴通訳」の2つ。
二人での会話モード
「二人の会話」を試してみました。画像左は私が日本語を話したもの、画像右は私が英語を話したものです。この設定では右側のユニットを日本語話者が、左側のユニットを英語話者が使う、という設定です。日本語は私の母国語なので誤認識は一切なく、正確に聞き取られ、したがって正確に翻訳されました。また、Amazonの任意の製品ページを開き、150字くらいの説明文を朗読してみたところ、(失礼ながら)マイナーなブランドのブランド名や専門用語の一部で誤変換・誤訳 (例:テントの用語で「前室」を「前出」と誤訳したなど)が見られましたが、「さすがにそこまでの精度は要求できないだろう」と納得できるレベルでした。また、翻訳の開始タイミングも早く、朗読の途中で翻訳がスタートしました。
一方英語は私の母国語ではなく、またお世辞にも英語が上手とは言えない語学力でしたが、それでも誤認識はわずかでした。ちなみに上の画像では「新宿」と発音したときに「深セン」と誤認識されました。また、英語の例文 (1パラグラフ、55ワード)の英文を朗読してみたところ、典型的な日本人の発音であったにも関わらず完璧に日本語に翻訳してくれました。
また、W4とTimekettleアプリでは「言語パック」が無料でダウンロードできます (日本語関連では「日本語-英語」と「日本語-中国語」のみ)。今回私は「英語ー日本語」の言語パックをダウンロードし、実際にオフライン翻訳を試してみました。上の画像にあるような平易な文だとオフライン翻訳でもオンライン翻訳と変わらない精度・翻訳速度でしたが、複雑なことを話す場合、オフライン翻訳では誤認識が増加しました。これは推測ですが、オフライン翻訳は端末の性能により精度が変わってくるのではないか、と思われます。ちなみに私のスマホはGoogle Pixel 8でAndroidのバージョンは「16」なのですが、オフライン翻訳で少々立て込んだ翻訳をするのは厳しいかも、と思いました。
どの程度オフライン翻訳が使えるのか、ということについて断定的なことは言えませんが、短い文で話す分には問題なく、長文になるにつれて精度が落ちる、ということは言えます。海外旅行で道を尋ねるとか、時間を尋ねる、料理のメニューについて質問する、とかであればオフライン翻訳でも問題ないと思います。
聴講翻訳モード
この動画を聴いてみました(3:50以降は必聴だと思っています)。英語でのコミュニケーションがある程度できる人であれば字幕なしで理解できるかもしれませんし、そうでない人も字幕があるので内容はわかると思います。
この動画を聴講翻訳してみました。
「二人の会話」モードの翻訳速度、翻訳精度は素晴らしい水準でしたが、聴講翻訳モードでは遅延が目立ち、翻訳の正確性も欠きます。また、遅延が大きいので、ところどころ翻訳も飛ばされてしまいます。オンライン翻訳では「大意はなんとかわかる」レベルですが、オフライン翻訳にするとさらに精度が落ちてしまいます。
「外国人教師による外国語の授業」「取引先企業の外国人スタッフによる講演」など、重要な場面 (聞き漏らしができない場面) では厳しいと思います。また、外国映画をW4で翻訳しながら観るのも厳しいですね。
音楽用イヤホンとして
W4は普通のワイヤレスイヤホンとしても使えます。W4は約5万円する製品ですが、さすがに5万円のイヤホンよりも音質がいい、ということはありません。そのため「翻訳」という目的なしにW4を購入する意味はありません。しかし、「機能の一部」として音楽も聴ける、という前提に立てば音質は十分だと思います。低音から高音までクセがなく、クリアに音楽が聴けます。私はイヤホンの品質にあまりこだわりがないので、W4を普段使い用の音楽イヤホンとして使ってもいいと感じました。
5. レビューまとめ
Timekettle W4翻訳イヤホンはTimekettle公式サイトで販売中で、9月29日現在の価格は52,000円です。
私がTimekettle製品をレビューするのはこれで5回目です。W4をテストしてみて、特に「二人での会話モードでの機能改善が目覚ましい」と感じました。これだけの翻訳品質であれば海外でのコミュニケーションでは相当頼りになると思います。道を尋ねる、食事をする、交通機関を利用する、買い物をするといった日常会話レベルの翻訳では不自由しないだろうと思いますね。
一方で「聴講翻訳モード」では機能改善が見られるものの、遅延や翻訳精度ではまだ課題が残っていると感じられます。…ただねえ、日本語と外国語 (英語や中国語)では語順も違いますし、特に日本語では文章の最後のほうでないと「肯定・否定・疑問」のいずれかなのか確定しない構造だったりするので、長文を遅延なしで翻訳しろ、というのは無理ゲーのような気もします…。
現状おすすめできるのはやはり「一対一のコミュニケーション用」として (二人での会話モード)ですね。この使い方であればW4の性能を実感できると思います。
6. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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