
INNOCNのPCモニター「27D1U」の実機レビューです。ウインタブでPCモニターのレビューをするのは久しぶりです。近年ミニPCが人気となっていますし、ノートPCを外部モニターにつないで使うケースもありますので、PCモニターは潜在・顕在の両面からニーズがあるものと思います。 INNOCN 27D1Uは27インチサイズで解像度は4K (3,840×2,160)、パネルはIPSと高い品質ながら約3万円で購入できる、コストパフォーマンスに優れた製品です。
なお、このレビューはメーカーより実機のサンプル提供を受け実施しています。
・27インチ・4K解像度で手頃な価格
・100%sRGBの色域でΔEも優秀
・ビジネスにも向くノングレア (非光沢)タイプ
ここがイマイチ
・スピーカーなし
・リフレッシュレートは60Hzなのでゲーム用にはイマイチか
1. スペック
スペック表
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ディスプレイサイズ | 27インチ (フラットタイプ、非光沢) |
| パネル形式 | IPS (視野角178度) |
| 解像度 | 3,840×2,160 |
| 発色 | 100%sRGB、HDR400 |
| 最大輝度 | 350 cd/m2 |
| リフレッシュレート | 60 Hz |
| 応答時間 | 6ms |
| インターフェース | HDMI、DisplayPort、オーディオジャック |
| スピーカー | なし |
| サイズ | 614.3×573×195.3 mm |
| 重量 | 3.95 kg |
特徴
27インチのフラットタイプ (ゲーミングモニターなどで見かける湾曲タイプではありません)、視野角が178度と広いIPSパネル (非光沢)を採用し、解像度は4K (3,840×2,160)と高精細なディスプレイです。
発色品質も高く、色域100%sRGBでHDR400に対応します。ただし、リフレッシュレートは60 Hzで応答速度も6 msと、ゲーム向きの仕様ではありません。もちろんゲームにも使えますが、どちらかというとビジネスやコンテンツクリエーションに向きますね。
なお、この製品はスピーカーを搭載していません。デスクトップPCやミニPCと接続して使う場合、別途スピーカーを用意する必要があります。
2. 外観
同梱物です。左端にある大きな一枚ものが「キャリブレーションレポート」です。INNOCN 27D1Uは工場出荷時にキャリブレーションが行われています (レポートの内容については後述します)。
キャリブレーションレポートの下にあるのがクイックガイドと保証の説明です。クイックガイドは日本語を含む多言語で記載されており、主に「組み立て方法」についての説明でした。また、27D1Uの保証期間は1年です。
キャリブレーションレポートの右にある平べったいものがベース (台座)、その右にACアダプターと電源ケーブルがあります。
中央下部の保証説明の右にあるのがケーブルをまとめる器具 (後述します)、その右にHDMIケーブルとUSB Type-Cケーブル、そして画像右端がスタンドです。
組み立てに入る前にモニター本体のポート構成を確認します。この画像は本体の下側面です (ディスプレイ面保護のため、梱包用シートを敷いています。お見苦しくてすみません)。
画像左からUSB Type-C、DisplayPort 1.4、HDMI 2.0、イヤホンジャック、DC-INジャックがあります。
USB Type-Cポートは65W出力に対応しており、27D1UにノートPCなどのデバイスを接続する場合、映像を出力しながらデバイスを充電することができます。また、HDMIポートは2.0規格なので4K@60Hzに対応します。DisplayPortは1.4規格なので仕様上は4K@120Hzまで対応しますが、27D1Uのディスプレイはリフレッシュレートが60Hzなので、4K@60Hzまでとなります。
背面は樹脂製です。スタンドの取り付けは工具不要で、くぼみにはめ込むだけ。

ベースの取り付けも工具不要です。ベース側にねじがあり、手で回せるようになっています。また、スタンドのところにケーブルのまとめ器具を取り付けられます。

高さ調整は上下に100 mm可能で、スタンド部分を手で押し引きするだけです。

角度調整は-5度~+20度。デスクトップ用モニターなのでこれで十分かと思います。なお、左右のスイングには対応していません。

ディスプレイの回転も可能で、このように縦向きにすることもできます。個人的には縦向きは全く使いませんが、お仕事の関係などで縦向きにしたい人には便利かと思います。

電源を入れてみました。ベゼル幅は細めですが、現代のPCモニターとしては普通くらいですよね。筐体の質感は安っぽいということはないものの、特筆する点も見られず、オーソドックスなものだと思います。
3. OSDメニュー

本体の下側にボタンが5つあります。この画像はディスプレイ面を下にして撮影したものなので、使用時には左右が逆になります。ご了承ください。
左端の白いボタンが電源ボタンで通電時には白く発光し、電源OFF時にはオレンジ色に発光します。あとの4つはOSD (On Screen Display、ディスプレイに表示される操作メニュー)の操作用です。

これがOSDです。項目の選択・移動・確定などは一般的なPCモニターと同じで、4つのボタンを駆使して行います。…この製品に限った話ではないのですが、操作性はよくないです。
この画像では「プロ」メニューの上部を表示していますが、標準モード、sRGBモード、DCI-P3モードの切り替えや車道バランス、色相、彩度など細かい設定が可能です。設定項目は一般的な、というか低価格なFHDモニターなどよりはずっと多いので、好みに合わせて調整ができると思います
4. 使用感
同梱されていたキャリブレーションレポートによれば、sRGBモードでの平均ΔEは0.67と、一般に「色の違いがほぼ分からない」とされるΔE 2を大きく下回る高い精度になっています。メーカーは100% sRGB 100%と開示しており、Web閲覧や一般的なPC用途では、購入後に特別な調整を行わなくても自然で正確な色表示となります。また広色域のDCI-P3表示の数値も平均ΔEは1.06と優秀です。なお、DCI-P3の色域カバー率は開示されていません。
発色品質についてはメーカーがしっかり開示していますので、視力の良くない私が「きれいですね~」などということを書く必要はないでしょう。また、OSDでの画質調整もいろいろと試してみましたが、調整項目が非常に多く、当然ですがそれらの調整によってディスプレイの発色も変化しますので、クリエイターも含め、ほとんどの人は納得できる色味にできると思います。
次に「用途」ですが、スペック説明のところで書いた通り、INNOCN 27D1Uはリフレッシュレートが60 Hz、応答速度6 msなので、ゲーム向きとは言えません。ただ、コンテンツクリエーションだけでなく、ビジネス用途でも4K解像度の恩恵は大きいです。
これはFHD (1,920×1,080)解像度、Windowsの設定で表示倍率を100%にしたものです。
こちらは4K (3,840×2,160)解像度、表示倍率100%にしたものです。当然ですが4K解像度のほうが表示領域が圧倒的に広くなります。ただし、私の視力だとフォントがかなり小さくなってしまい、見にくいです。
次に4K解像度で表示倍率を150%にしてみると、私の視力でも十分視認でき、表示領域もFHD・100%の時よりも広いです。
ちなみに、Windowsの設定では基本的に表示倍率を100%より小さくすることはできません。しかし、ブラウザーの設定で表示倍率を100%よりも小さくすることができます。よって、FHDディスプレイであっても4Kディスプレイと同じか、それ以上の表示領域にすることはできます。ただし、文字や画像を無理に縮小する (例:10ピクセルのフォントを無理やり5ピクセルに収めるようなこと)ことになるので、フォントが潰れてしまったり、線が太くなったり細くなったりと、表示が乱れます。
繰り返しになりますが、27インチモニターの場合、私の視力だと4K・100%表示だと一般的なWebサイトの記事の本文は小さすぎて見にくいです。しかし、150%表示 (4Kディスプレイの場合、Windowsはこの倍率を推奨しています)にすると視認性は大きく上がり、150%にした時の実質解像度も2560×1440と依然FHDよりも高いので、画面もキレイです。
それと、27D1Uのディスプレイパネルは非光沢 (ノングレア)です。というか、このサイズのPCモニターは非光沢パネルが主流だと思います。ノートPCのようにあちこち持ち歩くわけではありませんが、私の用途だとやはり映り込みの小さい非光沢パネルのほうが快適と感じられました。
ということで、クリエイターでなくとも、ビジネス利用でも4Kディスプレイの恩恵は大きいです。あとは価格ですが…
5. まとめ
INNOCN 27D1UはAmazonで販売中で、この記事執筆時点の価格は30,875円です (製品ページにあるクーポンを使用した価格です)。ウインタブでは日頃あまりモニターについて積極的に記事を書いていませんし、2025年にレビューしたPCモニターはエントリークラスのもの1台だけなので、「27インチの4Kモニターがこの価格で買えるの?」と少々驚きました。また、Amazonをチェックしてみると、さらに安価な4Kモニターも販売されていました。
INNOCNのモニターは過去に何度かレビューしたことがあり、私は現在INNOCNのモニターを使っています。INNOCNはローエンドな製品は扱っておらず、4Kや高リフレッシュレート、ウルトラワイド、ミニLEDなど中高価格帯の製品が得意なメーカーです。よって「単なる価格勝負」のメーカーではありません。
それを踏まえると、この27D1Uは品質から見た価格はリーズナブルだと思います。近年ミニPCが人気となり、PCモニターの需要も増えているはずです。また、デスクトップPCユーザーやミニPCユーザーだけでなく、ノートPCユーザーにも使いやすい製品だと思います。ケーブル一本で映像出力とノートPCの充電が賄えますからね。
6. 関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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