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楽譜専用電子ペーパー「GVIDO」 ― まさに未来の楽譜! 欲しいけど高すぎィ(natsuki)

GVIDO
こんにちは、natsukiです。先日、IMSLPというオンライン楽譜ライブラリの紹介記事で、楽譜とタブレットPCとの相性がいいというようなことを書きました。が、それはあくまで「観賞用」としての話。実際の演奏に使うには様々な問題点があり、実用的ではありません。そんな中、ついに、「電子ペーパー」を使った、演奏にも実用レベルで使えそうなデジタル楽譜ツールの発売が具体化しました。その名も「GVIDO」。かなり前から話題にはなっていた製品ですが、いよいよ、試作機ではない製品機も公表されて発売日も決まり、全容が固まりました。

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「Windows」でも「タブレット」でもない話なんですが、この電子ペーパーというのは、タブレットPCと連携することで大きく可能性が広がる技術だと思っています。そして、「楽譜」という用途はその可能性が分かりやすく見える媒体なので、音楽に関心がなくても興味深い製品なのではないかと思います。

1.「電子ペーパー」の特徴

まず先に、いちおう、電子ペーパーとは? って話です。

Kindle Paperwhite
おそらく、電子ペーパーを使った製品としてもっとも出回っているのがKindleでしょう。ということで、モノクロ(カラーにする技術も開発されたがまだ商用段階にない)、省電力、そしてなによりバックライトで光らせなくとも十分視認可能な高コントラストの「本物の紙」のようなディスプレイ品質、これが電子ペーパーの特性です。Kindle実機はビックカメラなどの店舗でも売っていますので、百聞は一見にしかず、見てみてください。

そしてKindleは読む専門ですが、「ペーパー」というからには書き込んでみたいもの。書き込める電子ペーパーとしては、A4サイズの電子ペーパー「DPT-S1」が2013年にSonyより発売され、つい先日の6月5日には後継機種の「DPT-RP1」が発売されました。

Sony DPY-PR1
そして、その価格は、Sony公式ストアで税抜き¥79,800…… えっ? と、ここで固まってしまう(笑) これでも、前機種「DPT-S1」が実売価格ですらほとんど¥100,000を割らなかったことを考えれば抑えられているんですが、それにしても、Kindleや、似たような製品特性のSharp製電子ノート(電子ペーパーではない)の約10倍…… うーん、性能差は分かっていますが、そこまでの価格差を埋めるだけの必要性があるかと問われると…… という、非常にニッチな需要かロマンかという、少なくとも興味だけで手が出せるお値段ではない、かなり特殊な製品なんですよね。

ところが、その「ニッチな需要」ずばりのジャンルがあります。「楽譜」です。仮に、タブレットを演奏用楽譜として使おうとするとどうなるか、まあ、これを見てください。

タブレットで楽譜
もう、ツッコみどころ満載。サイズ感、落としたらヤバい恐怖感、遠くからの視認性。離れた位置からの視認性という点では、画像のCube Mix Plusはペーパーライクフィルムを貼っているので、映り込みが少なくかなりマシになっているのですが、それでも画面の明るさを100%まで引き上げて「光らせて」います。これは、やはりかなり違和感がある。

そこで、楽譜専用の電子ペーパーがついに登場! それが今回紹介する GVIDO です。

2.筐体

GVIDO 筺体
筐体は見ての通り。ほぼA4サイズ画面の電子ペーパーを2つ組み合わせて、見開きにしています。市販の多くの楽譜はA4とB4の中間サイズが一般的なので、A4サイズというのは楽譜として使える最低限のサイズになります。ディスプレイの電子ペーパーは、実質独占企業のE Ink社製、筐体全体はなんとVAIO製! なので品質は信頼できます。重量は660g。この重量は、さっきの画像のような折りたたみ式の骨組み譜面台ではやはり不安ですが、折りたたみ式でない、定番のマンハセット社M48やM50あたりの譜面台であれば十分安定するでしょう。

強度については、電子ペーパーなので落としてディスプレイが「割れる」という事にはならないと思いますが、こればっかりはどの程度なのか分かりません。

3.スペック

細かいスペック表はこちら。楽譜に必要とされる諸機能を網羅しています。

GVIDO スペック表
まず、基本事項として、pdfファイルに対応。ここは、変換をかけないといけないKindleとの根本的な違いです。これで汎用性が一気に増します。楽譜はデジタルデータでは、先日紹介したフリーの「IMSLP」から有料の「ぷりんと楽譜」など、基本的にpdf形式で扱われますから。

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GVIDO 楽譜に書き込み
そして、楽譜には自由に書き込めなくちゃいけません。楽譜の書き込みは、単なる実用的メモにとどまらず、思い出であり文化的財産でもあります。もちろん、GVIDOは書き込みに対応。ペンは安心のワコム製です。この辺は公式ホームページの動画もご覧ください…… って、動画を見る限りでは、追随性が惜しい感じ? まあ、ワコムなんで品質は間違いないでしょう。不安定な状況で書き込むという楽譜の特殊性を考慮して、書く消すともに非常に軽い筆圧で反応するよう、専用に開発したそうです。

内蔵ストレージは8GBですが、pdf形式の楽譜を突っ込むだけなので十分でしょう。必要に応じてmicroSDやクラウドストレージでの増設も可能になってますし。また、無線LANやBluetoothも完備。PCとの連携もバッチリです。ただ、機能を考えるとネット接続は限定的でしょうね。要は、「IMSLP」や「ぷりんと楽譜」などから直接楽譜ファイルを落としてこられるかということなんですが、後述のように、ネット接続は基本GVIDO専用サイトのみとするようなので、必要とされるCPU性能を考えても、さすがにこれはPC経由かな。

バッテリー性能については、1回の充電で数日、としか発表されていません。が、電子ペーパーの特性を考えれば、ここは心配要らないと思います。

その他にも、譜めくり用の赤外線タッチスイッチや、ソフト面を含めて「楽譜のために」という細かいこだわりが満載で、この辺の使い勝手はいくらスペックを見ても分からないので実機を実際に見たいところ。実は、その機会が先日ありまして、この前のGWに有楽町で開催された「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017」(数日間にわたって、有楽町の国際フォーラムを中心に有料無料の演奏会や音楽イベントを集中的に行う催しです)にてGVIDO実機が展示されていたんですね。このラ・フォル・ジュルネには私も行ってきまして、是非触れてみたいと思っていたのですが、結局、なんやかんやでGVIDOのブースに寄る余裕がなく、見てこられなかったんです。残念。

4.広がる風呂敷

そしてこのGVIDO、単独製品としてだけでなく、周辺事業にも相当な意気込みを見せています。

GVIDO 周辺機器
まず、周辺機器として、フットスイッチと専用カバーも発売。フットスイッチは、主な用途は座って演奏する時の譜めくりですね。専用カバーですが、先述のように、どうしても楽譜というのは「落とす」ことが不可避な部分があるので、デザイン以上にこのカバーの保護性能は気になるところです。

それから、楽譜保存のためのオンラインストレージ。そして、専用の楽譜販売サイトの開設。事業モデルとしては、Kindleと同様とみればよいでしょう。正直なところ、このあたりからちょっと不安になってきます。pdf形式の楽譜の販売は、先述の「ぷりんと楽譜」のようなライバルがすでにいますし、「GVIDOに最適化した楽譜」というのをウリにするようですが、こういう「専用楽譜のオンライン販売」って、かつてFinaleがやって採算とれずに短期間で終了したってのがあるんですよね。……あとで触れるように、このGVIDOは非常に高価なので、ユーザーが一気に広がるとは到底思えない。そういう製品で、このようなオンライン販売が通用するんだろうか。

他に、見逃せないのが、F&Qの「発売時には作曲機能などは搭載していません。書込みは主にメモの為です。今後、楽譜制作ソフトとの連動を検討しています。」との文言。作曲機能を搭載していないのは、はじめからそこは期待していないのでいいのですが、「楽譜制作ソフトとの連動を検討しています」だと!? 先日、別記事で紹介したように、GVIDOが対象としているような本格的な楽譜を作成するソフトというのは大艦巨砲主義の見本のような高機能・高負荷なもので、到底、リーダーとしての機能に特化したGVIDOの処理性能では扱いきれるものではないと思うのですが…… 風呂敷広げすぎなんじゃないかという不安とともに、いったいどういう構想をしているのか、楽しみでもあります。

5.発売時期と価格

この、まさに「ロマン」という言葉がふさわしいGVIDO。やはり、そのロマンあふれる機能の数々を実現すべく開発は延び延びになっていたのですが、ついに、発売日が今年の9月20日と発表されました。先述のように、ラ・フォル・ジュルネでの実機展示もありましたから、もうこの日程で発売は大丈夫とみてよいでしょう。

そして、気になる価格は…… 税抜き$1,600で為替レート変動、つまり現状でも税込み約¥190,000。……うん、知ってた、まあ、そうなるよね。要は、Sonyの「DPT-RP1」を2枚継ぎ合わせたようなものだもんね(ほぼ同スペックで、同じE Ink製電子ペーパーで、GVIDOの開発者は元Sony)。似たようなコンセプトの電子楽譜用ガジェットとしては、クラウドファンディングで開発されている、13.3インチアンドロイドタブレットを見開きでつないだ「SONO」ってのもあるんですが、こちらも定価約¥190,000の予定ですからね。

タブレットPCに「楽譜の保存」「インターネットからの楽譜の取得」「曲の再生」「録音」「メトロノーム」「チューニング」「和声の確認」などを任せて、楽譜表示はGVIDOで、という連携はすさまじく憧れるものがあります。まさに、未来キタ! だが、しかし、……ロマンとはなんとも金のかかるものですなぁ。

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コメント

  1. 匿名 より:

    楽器って信じられないぐらい高いから本格的にやる人なら20万なんてはした金なんじゃない?

  2. natsuki より:

    コメントありがとうございます。
    もちろん、プロだったら楽器の値段は天井知らずですが、音楽で食っていくのって大変なんで、プロこそ費用対効果を慎重に考えると思います。すると、この値段だと、その人の演奏活動スタイルによって評価が分かれるところでしょうね。むしろ、個人よりもスタジオとかの方が需要ありそう?

    アマチュアだと、私もアマチュア楽団歴長くっていろんな楽団でやってきましたが、はした金って事はないですね。楽器によってかなり差はありますが、たいていの楽器なら20万~50万くらいで、アマチュアならとりあえず一生やっていけるグレードのものが買えますから。ちょっと気合い入っている人なら、もう一踏ん張りして50万~100万くらいのを買って一生もの、という程度止まりがほとんどかと。私も、けっこう同時期に多数の曲を扱うような活動をしているので、これはマジで欲しいのですが、このお値段ではムリっす。

    ただ、アマチュアこそ、変な楽器やこういうギミックにお金溶かす人がちょいちょいいるのも事実なので、その辺には受けると思います。

    個人的な感覚では、
    ¥190,000(現状)→そうとう人を選ぶ。
    ¥100,000割り→プロでスタジオミュージシャン的な活動をしていたり、
           アマチュアで音楽的指導もする立場なら買い。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ¥30,000→社会人のアマチュアでちょっとPC使える人がみんな買う。バカ売れ。
    ってな感じですかね。あくまで個人的意見ですが。

  3. 楽譜のみならず普通に落書き帳として売れないんですかね。ペンタブだとどうしても紙との感覚の相違が拭いきれないので一応需要はなくはなさそうなんですけどねぇ。軽いし電池が長持ちするしで私が今持ってるElite x2より優れていると感じるのですが。

    natsukiさん何者なの・・・

  4. 匿名 より:

    私はEinkについて妄想するのは諦めましたわ
    大型になると急激に歩留まりが低下して高級化は避けられないし
    リフレッシュの関係で汎用OSと相性が悪いとなれば
    将来的な価格低下や個人需要増は望めないし・・・

    • natsuki より:

      コメントありがとうございます。
      返信が錯綜してすみません。

      確かに、まったく安くなりそうな要素がないんですよね。現状で安くなる可能性があるとしたら、Kindleみたいにハードは採算度外視で、他のところで利益を出すビジネスモデルが求められるんでしょうけれど、楽譜じゃそれはきついよなぁ。

      それでも、Sonyの「DPT-RP1」は、スペックアップした上で「多少は」前機種よりも安くなったわけですし、技術が進んでいないわけではないので、気長に、気長~に、技術革新を信じて待つしかないですね。

  5. natsuki より:

    コメントありがとうございます。
    いや、お恥ずかしい。ただ単に学生時代からアマチュア楽団で演奏してきたというだけです。年期だけは長いもんで、そんなご縁でたまにお世話になっているプロの方や楽器屋さんからいろいろ話を聞く機会もあるというくらいです。

    電子ペーパーは、「書く」方の技術開発はまだまだこれからみたいなので、「カラーが使えない」「イラストソフトがまともに動作しない(OSやCPUの処理速度の問題で)」という状況で、いまのところ「線を引くので精一杯」みたいです。落書き用にしては、お値段が、ねぇ。

    中国のONYXってメーカーがAndroidの電子ペーパー端末というBOOXシリーズってのを出しているんですが、いろいろレビュー見る限りでは、やはり処理能力で苦戦している模様。そして、中華メーカーでありながら、13.3インチは約7~8万円と、値段的にもSonyと変わらずです。

    あと、似たような製品としては、キングジムの定番電子ボードのブギーボードで、PCにデータを送れるタイプってのもありますよ。
    https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A0-%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%89-%E3%83%96%E3%82%AE%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89-SYNC-BB-6/dp/B00JVO3B52

    って、いやいや、そもそも店頭で触った限りでは、Elite x2って視差も少ないし、処理能力もクリスタ程度なら十分だし、12インチにしては重量・電池も十分だしで、これより上を目指すと携帯性皆無のワコムの専用液タブかApple penかというくらいスゴい機体だと思うんですが。持って使い込んでみるとまた違うのかもしれませんが、それにしても、現状、電子ペーパーはまだまだ「読む」に特化した技術なので、「書く」「描く」に関してはElite x2の圧勝かと思いますよ。

    • コメントありがとうございます。
      実は今使っているElite x2のペンがたまに反応しなかったり、ツールをメディバンからクリスタに乗り換えたら動作が重くなったりしたり、そもそもワコムの液タブより筆圧を吸収してくれるもののやはり紙で書くよりかは違和感を感じるので電子ペーパーに期待していましたが残念です。
      まだ改良が進みそうだからもう少し待ちかな?