中古PCを購入すると、工場出荷時にインストールされていたOSではなく、クリーンインストールされたOSが搭載されている場合があります。Windows 8以降、ファームウェア(BIOS)にプロダクトキーが組み込まれているため、なぜ元のOSではなく、わざわざ新規ライセンスでOSをクリーンインストールして販売しているのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。
目次
1.中古PCは元のデータは完全消去されている
割と名の知れたショップにPCを売却した場合、ショップ側でハードディスク/SSD内のデータを完全消去したあと、外観破損や機能に問題がないか検査を行った後に本体の清掃を行い、OSをインストールした上で中古PCとして販売されることになります。
データ消去に使っているソフトウェアは多くの場合、「Blancco Drive Eraser」が使われています。
このソフトウェアは中古PCを取り扱う業者など法人向けに販売されているため、一般ユーザーがお世話になることはまずありませんが、あるいはOSがインストールされていない状態で販売されている中古PCを購入した際にこのソフトウェアの消去レポート画面を見たことがある、という方もいるかもしれませんね。
Blancco Drive Eraser:Blancco
ユーザーデータを復元できないよう、強力なアルゴリズムを使用してHDD/SSDの内容を消去しているので、リカバリー領域もこの時点で利用できなくなっています。
2.リカバリ領域がないと元のライセンスを利用して中古販売できない
このままでは「ただの箱」になってしまうため、Windows 10、あるいはWindows 11を再インストールする必要があるのですが、中古PC販売業者がファームウェアに組み込まれている元のOEMライセンスを使用して販売するには、「そのPCに含まれていたリカバリメディア」でOSをインストールする必要があります。
再生中古パソコン用正規 Windows ライセンスのご案内:Microsoft
中古PC販売業者がPCを買い取ったときに、リカバリメディアも引き取っていたり、メーカーからリカバリメディアをダウンロード、または有償で注文出来るのであれは問題ないのですが、リカバリメディアがない場合、既にHDD・SSD内のリカバリー領域を削除してしまっているので、工場出荷時のOSに戻すことができません。
この場合、ショップ側で新たにOSライセンスを購入してクリーンインストールするか、OSなしのジャンク品(あるいは難あり品)として販売するかのどちらかを選択しなければなりません。
なお、「元のライセンスを使用するには純正リカバリーイメージを使用しないといけない」というのはあくまで中古PC販売業者向けの話となり、個人ユーザーがMicrosoftからダウンロードした「素の」Windowsをクリーンインストールして、BIOSに組み込まれているプロダクトキーでライセンス認証するのは問題ありません。
3.中古PC向けOSライセンス「Microsoft Authorized Refurbished Program(MAR)」
2010年以前は、中古PCのために2〜3万円で販売されているWindowsの正規ライセンスを購入するのはコストがかかりすぎて割が合わないため、リカバリメディアが付属していない場合、OSなしの状態で販売されることが多かったのですが、中にはネットで出回っている違法コピーされたWindowsをインストールして販売する悪質な店舗もあったようです。
違法コピーされたOSをインストールしている中古PCを購入してしまうと、Windows Updateで更新プログラムを受け取ることができなくなるだけでなく、悪意のあるマルウェアが組み込まれている場合もあり、購入したユーザーは大きなリスクを背負うことになります。
こういった問題に対応するためか、Microsoftが2009年から中古PC販売業者向けに正規版OSのライセンスを新たに発行する「Microsoft Authorized Refurbished Program(MAR)」が開始されています。Microsoft Registered Refurbished(MRR)もありますが、この記事の段階ではどちらも同じものと考えてもらって問題ありません。
中古PC販売業者向けに提供されているプログラムで、一般ユーザー向けに販売されているリテールパッケージ版やPCメーカー向けに提供されているOEM版よりも安価にWindowsのライセンスを購入出来ると思われます(具体的にいくらなのかは公表されていません)。
もちろん正規ライセンスなので、購入後にOSのアップデートを受け取れなくなることもありませんし、Microsoftのサポートを受けることもできます。
有名ショップであれば、リカバリーメディア、あるいはリカバリー領域からインストールされたOSか、MARを活用して新たにライセンスされたOSがインストールされているので安心できます。
4.「素のWindows」そのものなので、機種によっては一部機能制限がある場合も
以前は底面にMARライセンスで新たに発行されたWindowsのプロダクトキーが貼られていたのですが、2021年以降はデジタルライセンスでの提供も開始されているので、中にはCOAラベルが底面に貼られていない製品もありますが、その場合もMARプログラムで再生されたことを示す、ホログラムシールが貼られています。
また、OSは中古業者がクリーンインストールした「素の」Windowsそのものなので、機種によっては一部機能が利用できません(NEC機でよく見られる「ECO」ボタンなど)。
基本的に公式サイトで配布されているドライバやWindows Updateで配信されているドライバ、ユーティリティのみインストールしているため、もともと含まれていたプリインストールソフトもありませんが、ショップによってはMicrosoft Office互換ソフト、「WPS Office 2 Standard Edition」を付属して販売している場合もあります。
やはり「Pro」のほうが値は張るので、Windows 10 /11 Proがインストールされていた機種にMARライセンス版Windows 10/11 Homeをインストールして販売している場合もあります。
4.まとめ
MicrosoftからMARプログラムが開始された2009年以前、秋葉原でも「あくまでテスト用」と称してライセンス認証を行っていなかったり、酷い場合は正規版ではないWindowsをインストールした中古PCを販売しているショップもありましたが、現在ではそのような商品を見かけることは少なくなりました。
ただ、Amazonやヤフーショッピングなどでは、OSのライセンスが本当に正規版なのかわからない製品が販売されている場合もあり、できれば有名なショップで購入した方が元のOS、またはMARで新たにライセンスされたOSを搭載しているので、安心して購入できるでしょう。
5.関連リンク
安心して利用できる再生PC:Microsoft