ThinkPad TシリーズはX1・Xシリーズ(軽量なモバイルノート)やX9シリーズ(新コンセプトのThinkPad)、Eシリーズ(低価格なスタンダードノート)のように「シリーズの位置づけ」を一言で説明するのが難しいです。「ちょっと中途半端かも」という印象もあります。
2025年のTシリーズは、「T14、T14s、T14s 2-in-1、T16の4つ」ですが、なぜかメーカー製品ページ(販売ページ)はT14が3つ、T14sが4つ、T14s 2-in-1が1つ、そしてT16が2つと、合計10もあります。「なんでこうなった?」と思いますよね?
しかし、合計10のページに分かれている、それぞれの製品特性をしっかり理解すると、実はほとんどのビジネスユーザーのニーズを満たせるシリーズであることがわかります。
この記事では、2025年のTシリーズを一覧表で整理し、それぞれの製品がどのような用途に適しているかを解説します。
目次
1. ThinkPad「Tシリーズ」という選択肢
Tシリーズをわかりにくくしている理由として、以下が挙げられます。
・据え置き・半据え置きに向くT14、T16とモバイルに向くT14s、T14s 2-in-1がある
・搭載されているCPUブランドが非常に多く、IntelのArrow LakeとLunar Lake、AMD Ryzen、Snapdragon Xと3メーカー4ブランドが同じ筐体に使われている
・X1シリーズほど高価ではなく、かといってEシリーズほど安価でもない
このように、筐体の種類、CPUの選択肢、価格帯が入りくんでいることが、Tシリーズに「一貫性がない」「整理されていない」という印象を与えてしまっていると思います。
しかしそれは、Tシリーズが非常に柔軟な構成を持つシリーズである、ということも意味します。あとは私達がTシリーズの各モデルの違いや特徴を知りさえすれば、自分のニーズに合うモデルが見つかると思います。
2. Tシリーズの2025年モデル一覧表
下記がThinkPad Tシリーズの2025年モデルの一覧表です。
製品名 | CPU | ディスプレイ (主なもの) |
重量 | 実売価格(目安) |
---|---|---|---|---|
T16 Gen 4 (Intel) ▶ 記事準備中 ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Arrow Lake) |
16.0インチ IPS 1,920×1,200 |
約1.76kg | 約15〜25万円 |
T16 Gen 4 (AMD) ▶ 製品紹介記事 ▶ メーカーサイト |
AMD Ryzen AI PRO (Krackan Point) ※Copilot+ PC |
16.0インチ IPS 1,920×1,200 |
約1.76kg | 約16〜25万円 |
T14 Gen 6 IAL ▶ 記事準備中 ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Arrow Lake) |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 ※2.8K有機ELあり |
約1.38kg | 約15〜23万円 |
T14 Gen 6 ILL ▶ 記事準備中 ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Lunar Lake) ※Copilot+ PC |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 |
約1.38kg | 約18〜23万円 |
T14 Gen 6 (AMD) ▶ 製品紹介記事 ▶ メーカーサイト |
AMD Ryzen AI PRO (Krackan Point) ※Copilot+ PC |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 |
約1.38kg | 約16〜23万円 |
T14s Gen 6 IAL ▶ 記事準備中 ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Arrow Lake) |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 ※2.8K有機ELあり |
約1.24kg | 約18〜25万円 |
T14s Gen 6 ILL ▶ 製品紹介記事 ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Lunar Lake) ※Copilot+ PC |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 |
約1.24kg | 約21〜25万円 |
T14s Gen 6 Strix Point ▶ 製品紹介記事 ▶ メーカーサイト |
AMD Ryzen AI PRO (Strix Point) ※Copilot+ PC |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 |
約1.3kg | 約23〜26万円 |
T14s Gen 6 Snapdragon ▶ 製品紹介記事 ▶ メーカーサイト |
Qualcomm Snapdragon X ※Copilot+ PC |
14.0インチ IPS 1,920×1,200 ※2.8K有機ELあり |
約1.24kg | 約20〜27万円 |
T14s 2-in-1 Gen 6 (Intel) ▶ 製品紹介記事 ▶ メーカーサイト |
Intel Core Ultra (Arrow Lake) |
14.0インチIPS 1,920×1,200 ※タッチ対応 |
約1.4kg | 約18〜25万円 |
ディスプレイサイズと重量を見ると利用シーンはイメージできると思います。T16は据え置き型のスタンダードノート、T14は「据え置き、ときどきモバイル」、T14sはモバイルノート、T14s 2-in-1はモバイルノートしてはやや重いが、タブレットモードやスタンドモードなどにして使え、筆圧対応のペン入力ができますので、イラストやマンガの制作にも使えます(ペンは別売りです)
次にCPUですが、IAL(Intel Arrow Lake)とILL(Intel Lunar Lake)はともに「Core Ultraシリーズ2」の最新型番で、狭義のCPU性能とGPU性能はIALが上、AI処理チップのNPU性能はILLが上で、ILLのみCopilot+ PCの性能要件を満たします。また、バッテリー持ちはILLのほうが良好です。
AMD CPUではStrix PointとKrackan PointがTシリーズに搭載されており、いずれも「Ryzen AI (PRO) 300シリーズ」の型番、NPU性能も高いのでCopilot+ PCの性能要件を満たしています。パフォーマンスはStrix Pointのほうが上とされますが、ウインタブのレビュー経験上は「大差ない」と判断しています。
Snapdragon Xシリーズは高いNPU性能と低消費電力が魅力です。Copilot+ PCの性能要件も満たしています。ただし、Intel CPUやAMD CPUとはアーキテクチャが異なる(ARM。IntelとAMDはx86)ので、一部のアプリが動作しないという問題があります。ウインタブとしては「ビジネスマシンであるThinkPadにSnapdragon Xは(今のところ)不向きである」と考えます。
これらのCPUについて詳しく知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
ノートPC用CPUの選び方 - 2025年前半・最新CPU編
3. Tシリーズの2025年モデルの寸評
T16 - X1シリーズにはない、大画面&据え置き型のThinkPad
16インチの大画面にテンキー付きキーボードを備えた、据え置き運用に適したモデルです(ウインタブではこのジャンルのノートPCを「スタンダードノート」と呼んでいます)。重量は約1.7kgと重いですが、自宅やオフィスでの使用を前提とすれば問題にならないでしょう。CPUはIntel(Arrow Lake)とAMD(Ryzen AI PRO 300)から選べ、パフォーマンスも十分。ただし、「Copilot+ PCであること」にこだわりたい場合はAMD版を選ぶことになります。
T14 - Tシリーズでは「王道」のビジネスノート
14インチディスプレイを搭載するT16と並ぶTシリーズの中核モデルです。IAL(Arrow Lake)、ILL(Lunar Lake)、AMD(Ryzen AI PRO 300)の3種類のCPUを選べます。約1.38 kgという重量はモバイルノートとみなせる重さですが、ちょっと重いですよね。そのかわり有線LANポートがあるなど、利便性は高いです。
「基本的に据え置きで使うが、外出先に持ち出す機会もそこそこはある」ような人に向きます。
T14s - 薄型軽量でCPUの選択肢が多いモバイルノート
T14と同じ14インチサイズですが、軽量化・薄型化を進めたのがT14sです。約1.24 kgと軽量で、モバイル利用にも適しています。また、T14sはIAL(Arrow Lake)、ILL(Lunar Lake)、Ryzen AI 300(Strix Point)、Snapdragon Xと「4ブランドを制覇」した珍しい製品でもあります。
ウインタブの見解ですが、T14sは薄型化・軽量化により位置づけがX1シリーズに接近しており、モバイルノートとしての機動性(軽さ)や先進機能についてはX1シリーズに一歩譲るかわりに、価格がX1シリーズよりも安いので、批判を覚悟で書くと「X1シリーズの廉価版」と言えます。
T14s 2-in-1 - Tシリーズ唯一のコンバーチブル2-in-1
T14s 2-in-1はTシリーズでは唯一の、ThinkPadシリーズ全体で見ても数少ないコンバーチブル2-in-1筐体を備えています。搭載CPUにIAL(Arrow Lake)とILL(Lunar Lake)を選べ、AMDとSnapdragonの設定はありません(6月8日現在)。
X1シリーズに「X1 2-in-1」がありますが、製品価格は明らかにT14s 2-in-1のほうが安いです。また、比較的安価なEシリーズには2-in-1のモデルがありません。よってT14s 2-in-1は「ThinkPadシリーズでは購入しやすい2-in-1」と言えます。
T14s 2-in-1は「どのTシリーズにしようか?どのThinkPadにしようか?」という選び方をする製品ではないと思います。ペン入力や2-in-1筐体と言った、他のTシリーズ、他のThinkPadにはない特徴に惹かれるのであれば選ぶ、ということになるでしょう。
4. まとめ
こうしてみるとTシリーズは、ThinkPadシリーズの中で最もバラエティに富んでいると思います。記事中でも触れていますが、注意したいのは「CPUの型番によってはCopilot+ PCの要件を満たさない」ということです。具体的には最新型番であってもIALはCopilot+ PCではない、ということなのですが、個人的には「Copilot+ PCだから買う、Copilot+ PCではないので買わない」というのはナンセンスだと思っています。
Copilot+ PCはMicrosoftが決めた規格で、NPU性能の高低によって決まるという側面があります。一方でそのMicrosoftがCopilot+ PCのために用意した機能(WindowsスタジオエフェクトやCocreatorなど)は、私には「取るに足らない」ものとしか映りません。ただし、これは読者それぞれのお考え次第ではあります。
Tシリーズは選択肢も多いため、CPUの種類や重量、2-in-1か否かなど、自分のニーズに合わせて選ぶようにすれば、きっと満足感の高い買い物ができると思います。
5.関連リンク
2014年にサイトを開設して以来、ノートPC、ミニPC、タブレットなどの実機レビューを中心に、これまでに1,500本以上のレビュー記事を執筆。企業ではエンドユーザーコンピューティングによる業務改善に長年取り組んできた経験を持ち、ユーザー視点からの製品評価に強みがあります。その経験を活かし、「スペックに振り回されない、実用的な製品選び」を提案しています。専門用語をなるべく使わず、「PCに詳しくない人にもわかりやすい記事」を目指しています。
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