こんにちは、natsukiです。SSDスロットを4つも持つ異形のミニPC「GMKtec NucBox G9」の実機レビューをお届けします。ミニPCの使い道の1つとして、ストレージをつないでNASのようにファイルサーバーとして使うというアイデアがありますが、私は実際に6年間にわたってミニPCをファイルサーバーとして運用してきました。もっとも、一般的なミニPCに備え付けの拡張ストレージスロットは、あったとしても普通は2.5インチSATAスロットかM.2 SSDスロットを1つだけです。もちろん、USB等を通じてつなげばよく、私もそうしているのですが、安定性やデータ転送速度において、内蔵であることの優位は言うまでもありません。
GMKtec NucBox G9は、非常に数少ない、複数のストレージを内蔵できるミニPCです。ついにこのようなファイルサーバー専門とも言えるようなミニPCが登場したかと、正直、興奮を隠せません。なお、今回のレビュー機は、メーカーからの提供品になります。実際の運用経験を踏まえて、しっかりレビューしていきたいと思います。
先に結論を言ってしまうと、このGMKtec NucBox G9、「ただSSDスロットが多いだけ」のミニPCではありません。ストレージの拡張性を確保するためにファイルサーバーとしては過剰なシーケンシャルアクセス速度を思い切って犠牲にしたり、WindowsとUbuntuのデュアルブートになっていて、より高度な運用への移行も可能になっているなど、実際のファイルサーバー運用を実によく分かっている。これを設計した人間の「タダモノではない」感が伝わってくる、レビュアー冥利に尽きる凝りに凝った製品となっています。
ウインタブ紹介記事:

・これを設計した人は、色々と「よく分かってる!」
・M.2 2280 NVMe SSDスロットを4つも備える!
・うち1つはM.2 2280 SATAにも対応
・ファイルサーバーとしては十分な処理能力を持つIntel N150搭載
・USB Type-Aのデータ転送速度も10gbpsと高速
・Ubuntuがプリインストールされているので、そちらへも移行可能
ここは注意
・Intel N150の実際の能力はN100と大差なし
・SSDスロットはPCle 3.0×2接続のためNVMeとしては低速、ただし実用上は問題なし
販売サイト
NucBox G9:GMKtec公式サイト
NucBox G9(64GB+512GB):Amazon
NucBox G9(64GB+1TB):Amazon
NucBox G9(64GB+2TB):Amazon
NucBox G9:楽天
目次
0.ミニPCをファイルサーバーとして運用することの利点
大前提の話として、先に、ミニPCをファイルサーバーとして運用することのメリット・デメリットを簡単に整理しておきます。その方が、この製品の特殊性を適切に評価できるからです。オンラインストレージとの比較は、そもそもの性格がかなり異なるので置いておいて、同様のローカルストレージであるNASとの比較は重要でしょう。ここでは、運用上の経験からの、特に重要な点に触れるのみとしますので、詳しくは下記記事をご覧ください。



最大のメリットは、「多様な種類・規格のストレージ」を「同時並行で柔軟に運用」できることです。私の場合で言えば、
・2TB×2を手動でバックアップすることで世代を管理。
・1TB×2をRAID1にして、あまり頻繁に更新しないファイルを保存。
・1TB×1を、一時的な共有スペースとして利用。
というように、5つのストレージを接続して3種類の運用を同時並行で行っています。なおかつ、5つのストレージは「2.5インチ7mm厚HDD」「2.5インチ9.5mm厚HDD」「2.5インチSATA SSD」「M.2 2280 NVMe SSD」と種類も規格もゴチャゴチャです。さまざまな入手経緯のストレージをできるだけ再利用・有効活用して、用途に応じた柔軟な運用を、同時並行でできる。これこそ、ミニPCをファイルサーバーとして運用する最大の利点です。
一方、デメリットは、自分で設定する手間は、こういうことをやる人にとってはご褒美のはずなので置いておいて(笑)、それよりも多様なシステム面のエラーに振り回されることです。特に、Windowsアップデートによって、それまで問題無く運用できていたものに突然トラブルが発生するというのが困る。アップデートによるトラブルは「新しいエラー」なので、ネット上で検索しても解決策が不明なことも多く、次のアップデートでしれっと治っていることもあり、つまり何が問題なのかが往々にして分からない。これは、WindowsミニPCをファイルサーバーとして運用する以上、飲み込まなくていけない部分です。
1.スペック
GMKtec NucBox G9のスペックは、以下の通りです。
GMKtec NucBox G9 | |
OS | Windows 11 Pro Ubuntu |
CPU | Intel N150 |
GPU | なし |
RAM | 12GB(LPDDR5 4800, オンボード) |
ストレージ | GMKtec公式サイト: 64GB eMMC 64GB eMMC+512GB SSD 64GB eMMC+1TB SSD Amazon.co.jp: 64GB eMMC+512GB SSD 64GB eMMC+1TB SSD 64GB eMMC+2TB SSD 楽天: 64GB eMMC+512GB SSD 64GB eMMC+1TB SSD ※PCIe 3.0×2 M.2 2280 SSDスロット×4 最大16TB |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | なし |
ネットワーク | Wi-Fi6、Bluetooth 5.2 |
入出力 | USB Type-C(10Gbps/映像出力/PD対応) USB3.2 Type-A(10Gbps)×3 HDMI × 2、LAN(RJ45)×2 3.5mmオーディオジャック |
カメラ | なし |
バッテリー | なし |
サイズ | 146.6 x 100.25 x 38.75 mm |
重量 | 370 g |
CPUは、Intel N150で、RAMは12GBです。私は現在、Intel N100のミニPCをファイルサーバーとして運用していますが、それで処理能力に不足を感じたことはありません。と言うか、ちょっと前まで、Intel Atom x5-Z8300のロースペックなミニPCを使っていましたが、それでも何とかなっていたくらいです。ファイルサーバーとしては、十分な処理能力と言えるでしょう。もちろん、OSのWindows 11は「Pro」バージョン。「Home」だと、リモートデスクトップのホスト(操作される側)になれないので、ディスプレイとキーボードが外付けのミニPCにとって、他のパソコンから操作可能な「Pro」バージョンであることは非常に重要です。
最大の特徴は、言うまでもなく、ストレージ構成。4つのM.2 2280 SSDスロットを備えることです。ただし、後でベンチマークも取りますが、本来はこれだけたくさんのスロットに対応できないはずのIntel N150を使っている都合上、PCle 3.0×2(×4ではない!)という珍しい規格で接続していて、要するに、NVMe SSDの割にはデータ転送速度が低速です。とは言っても、他機器とのデータ転送速度は、有線無線を問わず通信によるボトルネックがあるので、ファイルサーバーとしては十分な速度が確保されています。むしろ、過剰な速度を捨てて拡張性を高めた、英断と言えるでしょう。
また非常に面白いのが、SSD以外に64GBのeMMCも備えています。今さら64GBぽっちのeMMCで何をするのかと思いきや、何と!この中にUbuntuがプリインストールされています。軽量なUbuntuならeMMCでサイズも64GBでも十分。Ubuntuを使いこなせる上級者であれば、Windowsよりもより軽量でミニマル、そしてうまくすれば安定性の高いシステムを構築できるというわけです。
この他、地味な点ですが、USBはすべてデータ転送速度が10Gbpsです。一般的には5Gbpsの場合も多いので、これも、USBで追加のストレージと接続する可能性のあるファイルサーバー利用としては嬉しい点です。
2.本体
3.システム
ストレージ構成
起動時のブート設定とBIOS設定
4.性能テスト
SSDスロットのデータ転送速度
では、それが性能面でどう作用するかを見ます。こちらは、定番CrystalDiskMarkによるデータ転送速度計測結果です。TWSCの方は、このSSDのメーカー公称値がないので本来のスペックは不明ですが、Reletech P600は、メーカー公称でシーケンシャルリード3400MB/s、シーケンシャルライト2900MB/s。データ転送速度40gbpsのSSDケース「ORICO TCM2-U4」に入れて、Lenov YOGA770のUSB4ポートに接続した実測で、シーケンシャルリードは余裕の3000MB/s越え、シーケンシャルライトも2000MB/s台後半(「デバイスの書き込みキャッシュを有効にする」を有効にした場合)と、公称値に近い値が出ることを確認済みです。従って、シーケンシャルアクセスについては、おおむねPCIe 3.0×4接続の半分強しか速度が出ていないことが分かります。本来「×4」のところを「×2」でアクセスしているから半分というような、雑な計算が成り立つのかはよく分かりません(笑)。一方で、ランダムアクセスについては、一般的なPCIe 3.0×4接続と比べて遜色ない値をたたき出していることも重要です。
実用上から評価すると、シーケンシャルアクセス速度は、NVMeのSSDとしては低速であるものの、ファイルサーバー運用の場合はその他の通信部分にボトルネックがあるので、これだけの速度があればさしあたり十分です。また、ランダムアクセス速度は低下していないので、システムや各種アプリの挙動への影響は少ないでしょう。Intel N150にSSDスロットを4つもつなぐという特殊な構成のために、あまり見ない、ややアクロバティックな接続が行われていますが、ちゃんと、ファイルサーバーという目的に対して、機能面でマイナスが出ないように考えられていると言えます。
ファン音と発熱
ファン音は、負荷をかけるとサーッという音はしますが、うるさいと感じるほどではありません。ファイルサーバーという運用上、必ずしも作業スペースのそばに置いておかなくてもいいので、騒音を気にする必要はまずないです。
発熱は、HWiNFOでモニタリングした限りでは、CPU温度は、通常時で50度台、PCMark10などの高負荷ベンチマークを走らせた時でも、最大で80度台。
設置に関わる話として、側面の通気口周りはそれなりに発熱します。当然のこととはいえ、棚などに置くときは、放熱を考えた配置が必要でしょう。個人的には縦に置きたいので、通気口もしくはUSB Type-A×3がある側面を下にして、床から十分なスペースが空くような「ゲタ」をDIYしようかと考えています。
処理能力とベンチマーク
5.レビューまとめ
このGMKtec NucBox G9は、ファイルサーバーとして運用することを想定したミニPCです。ミニPCのファイルサーバー利用は、ミニPCが出回りはじめた頃から提唱されてきていて、実際に私もそういう運用をしてきたのですが、一方で、このNucBox G9のように、複数のストレージを内蔵できるミニPCは非常に希少な存在でした。そんな前例の少ない機種でありながら、構成は非常によく考えられていて、各所にこだわりの工夫が光ります。
はじめに確認したように、ミニPCをファイルサーバーとして活用することのメリットのひとつは、「多様な種類・規格のストレージ」を同時運用できることです。もちろん、NucBox G9はこの点が最大の特徴で、異形とも言える構成となっているわけです。
まず、4つものM.2 SSDを内蔵できるということ。上で触れたように、実はこれはエントリースペックのCPUからすると、わりと無茶振りです。それを、PCIe3.0×2規格を使うという方法で解決しています。この結果、SSDとしてはシーケンシャルアクセス速度が振るいませんが、しかしファイルサーバーとしての実用性には問題ありません。ベンチマーク数値を大きく下げて実用上で必要な機能を実装するって、商品として非常に勇気の要る決断だと思うんですよね。よくやった!
さらに4つのM.2 SSDスロットのうち1つが、M.2 SATAに対応しているというのも、ストレージの汎用性の観点から嬉しい点です。また、レガシーな2.5インチサイズなどのHDDやSSDを接続する場合は、USBポートを使うことになると思いますが、これもデータ転送速度10Gbpsと、どれにつないでも十分な速度が確保されるようになっています。ストレージの拡張性という面において、理想的というか、仕様上の上限すら工夫によって超えた挑戦的な構成と言えます。
一方、ミニPCをファイルサーバーとして運用していると実際に悩まされるのが、Windowsアップデートにともなうシステムトラブルです。ここにも、NucBox G9は、Ubuntuをプリインストールすることで、技術的ハードルは上がるものの、より安定した運用の選択肢を与えています。まずはハードルの比較的低めなWindowsではじめて、慣れてきたら、あるいはWindowsにブチ切れたら(笑)Ubuntuに移行するという、段階的運用もよいでしょう。副産物的ですが、Linuxディストリビューション入門機としても手頃かもしれません。
「ミニPCをファイルサーバーとして運用する」ということに興味を持っている人にとっては、入門としても、発展的にも、行き届いた配慮がなされた、決め手となる製品と言ってよいと思います。
なお、製品価格はセールの有無などに左右されますが、16GB+512GBモデルなら3万円台前半~半ば程度、16GB+1TBは3万円台後半~4万円程度、16GB+2TBは5万円程度です。
6.関連リンク
NucBox G9:GMKtec公式サイト
NucBox G9(64GB+512GB):Amazon
NucBox G9(64GB+1TB):Amazon
NucBox G9(64GB+2TB):Amazon
NucBox G9:楽天


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