GMKtec EVO-X1 AI ミニ PC レビュー － Ryzen AI 9 HX370搭載、期待以上のパフォーマンス！デザインも一新されました

GMKtecのミニPC「EVO-X1 AI ミニPC」の実機レビューです。GMKtecはエントリーモデルからハイエンドモデルまで、非常に多くのミニPCを手掛けていますが、このEVO-X1は最新かつハイエンドなモデルです。CPUにRyzen AI 9 HX370を搭載しており、CPUの処理性能、内蔵GPUのグラフィック性能、そして内蔵NPUのAI処理性能とも、ミニPCジャンルとしてはトップクラスの実力を備えています。

なお、このレビューはGMKtecからレビュー機のサンプル提供を受け、実施しています。

1.スペック

スペック表

バリエーションモデル

・32GB/1TB
・32GB/2TB
・64GB/1TB
　※左からRAM/SSD
　※レビュー機は「32GB/1TB」モデルです

2.外観

同梱物です。画像左上からHDMIケーブル、電源ケーブル、ACアダプター。電源ケーブルは日本のコンセントに合うプラグ形状でした。画像左下から取扱説明書、保証書、PCスタンドです。取扱説明書は多言語で書かれており、日本語も含まれていましたが、記載内容は最低限という感じです。できれば筐体の開口手順とか注意事項が書かれていると良かったんですけどね。

しかし「日本語キーボードの設定方法」についてはやたらと詳しく書かれていました。GMKtecの製品は近年日本でも販売数が増え、「『@』が出せないじゃないか！」みたいな問い合わせが激増しているんでしょうね。ちなみにEVO-X1も含め、GMKtecのミニPCは初期状態では英語キーボードになっています（簡単に日本語キーボードに切り替えられます）。

ACアダプターはノートPCのものより大型です。出力も120Wと大きめ。

このスタンドですが、当初「何これ？」と思いました。ひっくり返してみるとこのようにゴム足がついていましたので、「ああ、そういうことね…」と理解ができました。

これがスタンドを取り付けたところです（本体の向きはこれで正しいのかはわかりません）。ただ、私としては「使いたくない」です。本体表面は金属製でスタンドも金属製なので、取付時（と言ってもスタンドに本体を置くだけです）に「金属がこすれる、いやな音と感触」があるんですよね。おそらく何度も着脱していると本体にも傷がつくと思います。

便利なスタンドだとは思いますので、使う場合は潤滑油とかCRC556とかを塗れば良いんじゃないでしょうか。

上面（天板）です。このあと詳しく説明しますが、EVO-X1は従来のGMKtecのミニPCからガラッと筐体のデザインや構造が変わりました。上面は金属製でGMKtecのロゴが入っています。

前面です。なんか「浮いてる（隙間がある）」感じがしますよね？その理由は後ほど。前面には画像左からUSB4 Type-C、OCuLink（上段）、USB3.2 Gen2 Type-A（下段）、USB3.2 Gen2 Type-A、イヤホンジャック、電源ボタンがあります。

背面です。画像左からUSB3.2 Gen2 Type-A×2、HDMI（上段）、DisplayPort（下段）、有線LANポート×2、DC-INジャック、そして一番右下にセキュリティロックスロットがあります。

USBポートは合計で5つ、うちUSB4が1つで残りはUSB3.2 Gen2と高規格ですが、ポート数はそこまで多い方ではありません。HDMIは2.1規格、DisplayPortも2.1規格と開示されており、どちらも最高で8K@60Hzの映像出力が可能です（本来DisplayPort2.1は最高で8K@120Hz出力が可能ですが、EVO-X1では8K@60Hzに抑えられています）

左側面

右側面

左右の側面です。ご覧の通り色や素材が異なります（左側面は金属製、右側面は樹脂製）が、ともに通気口があるのみでポート類やボタン類はありません。

底面です。ずいぶんと立派なゴム足が4つ。画像左端の足は外してありますが、これらのゴム足は工具なしで取り外しができます。中央に冷却ファン用の通気口があります。このあと、ゴム足をすべて外し、筐体内部にアクセスします。

3.筐体内部

ゴム足を外すと、このように筐体が分離します。上の説明で「浮いてる（隙間がある）」ように見えたのはこの構造のためです。と言っても左側は「カバー」でしかなく、本体は右側です。

本体上部の四隅にネジが4つあり、これを外すと筐体内部にアクセスできます。

こちらは底面のファンです。EVO-X1は上下に冷却ファンを搭載しています。GMKtecのミニPC中上位モデルはデュアルファンであることがほとんどです（冷却面では非常に好ましい）。

上面のファンにはRGBライトがついています。ただ、このキレイなライトはケースを装着してしまうと見えません。かといってケースなしのままで使うとホコリが入り放題になってしまうので、残念ですがEVO-X1の使用中にこのライトを愛でるのは難しいです。

開口してみました。蓋の着脱はそれほど面倒ではありませんが、一部ツメがあって少し引っかかりを感じたのと、冷却ファン用のケーブルがありますので、開口は慎重にやりましょう（乱暴にしなければ特に問題なく開口できると思います）。

で、マザーボードですが、まず「RAMスロットがない」です。この裏にCPUやRAM、冷却ファンがあるはずです（ウインタブではこれ以上の開口はしません）が、EVO-X1のRAMはオンボードなので、RAMスロットはなく、従ってRAMの増設や換装はできません（ただし4チャネルですから非常に高速に動作します）。

画像下にある通りM.2 2280 SSDが装着済みでした（型番はCrucial P3 Plus、CT1000P3PSSD8、PCIe Gen 4 x4接続）。画像中央（赤枠で囲んだ部分）にもM.2 2280の空きスロットがあります。マニアな人を別とすれば、EVO-X1でDIYカスタマイズができるのはSSDの増設のみ、ということになります。また、この構造であればPCに詳しくない人でも簡単にSSDの増設ができると思います。

4.性能テスト

テストの前に

GMKtec EVO-X1はBIOSに「PowerLimit Setting」という項目があり、ここで「Performance」「Balance」「Quiet」の3種類のモードを選択できます。モード間の性能差を確認するため、PC Mark、3D Mark、CINEBENCH 2024について3モードすべてのスコアを掲載します。

ベンチマークテスト

クリックで拡大します

表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。ビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。ウインタブが最も重視しているテストです。

参考（過去データから一部抜粋）：
Core Ultra 9 185H：8,099
Ryzen AI 9 365：7,896
Ryzen AI 9 HX 370：7,511
Ryzen 7 8845HS：7,446
Core Ultra 7 258V：7,527
Ryzen 9 PRO 6950H：6,987
Ryzen 7 8840U：6,949
Ryzen 7 PRO 6850H：6,858
Core Ultra 7 155H：6,849
Ryzen 5 8645HS：6,708
Core i9-13900H：6,542
Core Ultra 5 135H：6,485
Core Ultra 7 155U：6,392
Core Ultra 5 125U：6,376
Ryzen 5 7535U：6,021

Performanceモードの7,835というのは「さすがの高スコア」だと思います。同型のCPUを搭載するノートPCよりも若干高いですよね。PC Markが想定するビジネス利用では非常に快適な使用感が得られるであろうことは間違いないでしょう。

モード間のスコアですが、「Performance→マイナス138点→Balance→マイナス271点→Quiet」となりました。さすがにPerformanceモードとQuietモードの差はそれなりにはありますが（409点）、じゃあExcelを使っていてモードによる性能差を感じるかと言われれば「全くない」でしょうねw

クリックで拡大します

グラフィック性能を測定するPC Markのスコアです。

参考（過去データから一部抜粋）：
Core Ultra 7 258V：4,397、8,611、35,677
Core Ultra 9 185H：4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H：3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 365：3,895、8,885、34,303
Ryzen AI 9 HX 370：3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H：3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H：3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS：3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS：3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U：2,943、7,206、27,471
Ryzen 9 PRO 6950H：2,846、7,051、27,983
Ryzen 7 PRO 6850H：2,660、6,601、26,920
Ryzen 5 8645HS：2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U：2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U：2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H：1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P：1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U：1,760、4,859、16,891
Ryzen 5 7530U：1,281、3,137、13,730
Ryzen 7 5825U：1,242、3,226、12,859
Ryzen 3 5425U：1,122、2,848、11,949
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア

グラフィック性能も非常に高いです。Time Spyで4,000点オーバー、Fire Strikeでは9,000点オーバー（Performanceモード）というスコアはGeForceのエントリー型番（GTX1650など）を凌ぎます。ちょっと古めのゲームタイトルなら高画質でプレイできるはずですし、最新のAAAタイトルでも画質を落とせば十分楽しめるでしょう。

モード間のスコアを見ると、PerformanceモードとBalanceモードは「誤差レベル」です（しかし、すべてのテストでPerformanceモードのほうが上回っているので、性能差は認められる）。しかし、Quietモードのスコアは（決して低いというわけではないものの）他の2モードとやや大きめの差がつきました。

CPU性能のみを測定するCINEBENCH 2024のスコアです

参考（過去データから一部抜粋）：
Core i7-14700：122、1,177
Core Ultra 7 258V：121、676
Core i9-13900H：117、687
Core Ultra 9 185H：111、910
Ryzen AI 9 HX 370：110、942
Ryzen AI 9 365：109、1,008
Snapdragon X Elite：108、1,038
Ryzen 9 8945HS：108、958
Snapdragon X Plus X1P-42-100：108、754
Ryzen 7 8845HS：106、956
Ryzen 9 7940HS：106、914
Core Ultra 7 155H: 105、964
Core Ultra 7 155U：101、533
Ryzen 5 8645HS：98、585
Core Ultra 5 125U：95，533
Core Ultra 5 125H：95、516
Ryzen 9 PRO 6950H：93、774
Ryzen 7 PRO 6850H：91、765
Ryzen 7 5825U：85、590
Ryzen 3 5425U：78、365
※左からシングルコア、マルチコアのスコア

シングルコア、マルチコアとも高いスコアになりましたが、シングルコアではIntel Core、Core Ultraの上位型番にはやや及ばず、マルチコアではデスクトップPC用の型番であるCore i7-14700に匹敵するスコアとなりました。

モード間のスコアですが、シングルコアについては3モードで全く同じスコア、マルチコアではQuietモードでの落ち込みが確認できました。

SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。

少し細かく見ていくと、シーケンシャルリード/ライト（SEQ1M Q8T1およびSEQ1M Q1T1）ではPCIe4.0 ×4接続のSSDとしては標準的～やや高速な部類ですが、ウインタブの過去の実機レビュー経験に照らすと「十分に高速だが最速レベルではない」、ランダムリード/ライト（RND4K Q32T1およびRND4K Q1T1）も同様ですが、直近でレビューしたPCIe4.0 ×4接続搭載機と比較するとやや高速な部類と言えます。

とはいえ、そもそもこの水準のスコアが出るのであれば、実用上全く不満はないでしょう。そもそも数百MBくらいのデータを扱う場合は「EVO-X1よりもずっと低速なSATA SSDであっても体感差はほとんどない」ですし、10GBクラスのデータを扱う場合でも「さすがにSATA SSDとははっきりとした体感差は出るが、EVO X1のSSDと最速レベルのPCIe 4.0 ×4接続のSSDとの差は（計算上）1秒に満たない」です。というか10GBのデータって日常的には扱わないですよね？

個別ゲームタイトルのベンチマーク

FF15ベンチ（左：高品質、右：標準品質）（クリックで拡大します）

Forza Horizon 5ベンチマークモード（クリックで拡大します）

個別ゲーム「ファイナルファンタジー15（FF15）」と「Forza Horizon 5」のベンチマークスコアです。いずれもPerformanceモードで測定しました。FF15については外部GPU非搭載機としてはまずまずの結果になりました（ただし、標準画質でも快適にゲームをするのはちょっと難しいでしょうね）が、Forza Horizon 5ではグラフィック設定「低」が推奨されました。

あくまで私の体感というか経験上の見解ですが、Forza Horizon 5についてはIntel CPUのほうがAMD CPUよりも良好な結果になることが多いです。例えばCore Ultra 9 185H搭載のGEEKOM GT1 MEGAではグラフィック設定「高」が推奨されています。おそらくこれは「ゲーム側でIntel/NVIDIA向けの最適化がなされており、AMDのGPUアーキテクチャRDNA 3では最適化が不十分である」と考えられます。

すべてのゲームタイトルで検証することはできませんが、ベンチマークテストの結果がすべての個別ゲームの挙動を代表しているわけではない、ということです。

発熱とファン音

HWiNFO 64で「CINEBENCH 2024のマルチコア測定時」のCPU温度「CPU（Tctl/Tdie）」の最大値、CPUパッケージ電力の最大値を確認しました。

「騒音」については防音設備のない部屋（体感的にはごく静かであった）でPerformanceモード時に58dB程度まで上昇しました。dBの数値についてはあてになりませんが、Performanceモード時はCINEBENCH測定中、常に大きなファン音がしており、多くの人は耳ざわりに感じられるレベルだと思います。BalanceモードではPerformanceモードよりも若干ファン音が小さくなりました（騒音計で4～5dB程度下がりました）が、それでも神経質な人であれば気になるレベル。そしてQuietモードでは一時的にやや大きめのファン音がしたものの、総じて騒音は小さく、最も快適と感じられました。

また、無視できないのが消費電力です。PerformanceモードはCPUパッケージ電力の最大値が65Wとなり、これはRyzen AI 9 HX 370のTDP28W（cTDP15～54W）を越えるもので、GMKtec EVO-X1のPerformanceモードではcTDPの最大値54Wを越えた水準で電力リミットが設定されていることがわかります。また、65Wというのは「瞬間的な数値」ではなく、測定中の平均値でも65W弱となっていました。

一方でQuietモードでは消費電力が抑えられています。電気代が爆上げされた（ホントそうですよねー）いま、「ここ一番」のとき以外はQuietモードにしておく、というのが最も賢いのではないか、と思います。Quietモードでもそこら辺のミニPCを超えるパフォーマンスが出ますしね。

あと、GMKtecへの要望として、「モード切替のためにいちいちPCを再起動してBIOSを開く、というのは優しい設計とは言えないので、HPやASUSなどのゲーミングPCと同じように、再起動なしでモードを切り替えられる設定アプリを導入して欲しい」ということが挙げられますね。

5.レビューまとめ

GMKtec EVO-X1はAmazonとGMK公式サイトで販売中です。3月5日現在の価格は下記の通り。

Amazon：
EVO-X1 32G+1TB：135,100円
※製品ページのクーポンを使用
EVO-X1 32G+2TB：144,399円
※製品ページのクーポンとクーポンコード「2Z7WVZ27」を併用

GMKtec公式サイト
EVO-X1 32GB+1TB：134,900円
EVO-X1 32GB+2TB：140,900円
EVO-X1 64G+1TB：154,400円
※日本円決済可

GMKtecのミニPCは2024年のM7シリーズ（NucBox M7 / M7 Pro）から筐体が新しくなり、メンテナンス性とデザイン性が大きく改善されました。そして今回レビューしたEVO-X1はM7シリーズからさらにガラッと筐体が変わり、個人的には「一段とカッコよくなった！」と感じました。

GMKtecというのは技術面が非常にしっかりした会社で、OSのライセンス不正はありませんし、メーカーサイトではOSイメージやドライバーも用意されています（ダウンロードページはこちら）。また、このレビューでも確認していただけたと思いますが、冷却面での信頼性も非常に高いですし、EVO-X1に関しては筐体を開口してSSDを増設するのも容易です。

EVO-X1に関してはハイスペック機ゆえに安価とまでは言えませんが、それにふさわしい品質だと評価できますので、読者に強くおすすめできます。

6.レビュー動画

YouTubeでレビュー動画を公開しました。こちらもあわせてご覧ください。外付けGPU「AD-GP1」の接続も試しています。

7.関連リンク

Amazon：
EVO-X1 32G+1TB：135,100円
※製品ページのクーポンを使用
EVO-X1 32G+2TB：144,399円
※製品ページのクーポンとクーポンコード「2Z7WVZ27」を併用

GMKtec公式サイト
EVO-X1 32GB+1TB：134,900円
EVO-X1 32GB+2TB：140,900円
EVO-X1 64G+1TB：154,400円
※日本円決済可