GEEKOMのミニPC「AE8」の実機レビューです。GEEKOMのミニPCはスペックの高いものが多いですが、レビュー機AE8もCPUにRyzen 9 8945HSを搭載し、RAMとSSDの容量も大きい、非常に高性能な製品です。また、筐体も他社のミニPCよりも小ぶりです。
ウインタブではこの6月に「GEEKOM AE7」という製品をレビューしています。AE8とAE7は筐体が共通ですが、AE7のレビュー機がRyzen 9 7940HS搭載であったのに対し、AE8はそれよりもCPUの世代が1つ新しくなりました。AE7のレビュー記事もあわせてご覧ください
GEEKOM NUC AE7 レビュー - Ryzen 9 7940HSを搭載するミニPC、Ryzen 8045シリーズではないのが「逆に魅力」です
なお、このレビューはメーカーより実機のサンプル提供を受け、実施しています。
・Ryzen 9 8945HSを搭載、PCゲームやコンテンツクリエーションも可能
・筐体の開口が容易、RAM/SSDの換装も可能
・ポート構成が充実、かつ高規格
・コンパクトで質感の高い筐体
・GEEKOMのミニPCはOSライセンスに不安なし
ここはイマイチ
・Ryzen 9 7940HS搭載のAE7とはほぼ同性能
販売サイトはこちら
GEEKOM AE8:GEEKOM公式サイト
※6%OFFクーポン「AE8WINTAB」(12月29日まで)
GEEKOM AE8:Amazon
※6%OFFクーポン「Ae8wintab」(11月20日から12月29日まで)
1.製品概要
スペック表
GEEKOM AE8 | |
OS | Windows 11 Pro |
CPU | AMD Ryzen 8 8845HS/ Ryzen 9 8945HS |
外部GPU | なし |
RAM | 32GB(DDR5-5600, デュアルチャネル、最大64GB) |
ストレージ | 1TB SSD(M.2 2280, PCIe4.0 ×4、最大2TB) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | なし |
ネットワーク | WI-Fi6E、Bluetooth5.4 |
入出力 | USB4 Type-C(映像出力/PD対応)、USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力/PD対応)、USB3.2 Gen2 Type-A × 3、USB2.0 Type-A、HDMI2.0 × 2、LAN(RJ45)、SDカードリーダー、オーディオジャック |
カメラ | なし |
バッテリー | なし |
サイズ | 117 × 112 × 49.2 mm |
重量 | 440 g(実測値) |
バリエーションモデル
・Ryzen 7/32GB/512GB
・Ryzen 9/32GB/1TB(レビュー機の構成)
※左からCPU/RAM/SSD
コメント
OSはWindows 11 Pro、ライセンスは「OEM_DM channel」であることを確認しました。つまり、個人が問題なく使える正規のライセンスです。この製品に限らず、GEEKOMの製品はOSライセンスに問題はありません。
CPUはRyzen 9 8945HSです。「最新のRyzen」ということだと、先日Ryzen AI 300シリーズがリリースされていますが、Ryzen 8045シリーズも2023年12月のリリースなので、「準最新」という感じです。6月にレビューをしたGEEKOM AE7の搭載CPU、Ryzen 9 7940HSとの比較では、開発コードネームがPhoenix(7940HS)からHawkPoint(8945HS)に変更されていますが、実際のところHawkPointというのはPhoenixのリフレッシュ版と言え、ともにZen4アーキテクチャでコア数/スレッド数は同じ、内蔵GPUもRadeon 780Mと同じ、TDPも35W-54Wと同じです。
ただし、AI処理性能は8945HSのほうが上で、7940HSの最大10TOPSに対し、8945HSは最大16TOPSとなっています。オンデバイスAI処理の性能測定をすれば多少8945HSのほうが高くなると思いますが、既存の(AI性能を測定しない)ベンチマークテストでは両者ほぼ互角のスコアになるはずです。
RAMとSSDは32GB/1TBです。後述しますがRAM/SSDともに空きスロットはありませんので、初期搭載のRAMやSSDを活かして容量を増やす(増設)ことはできず、初期搭載のRAMやSSDを外してより大容量のものに交換する(換装)ことはできます。
では、外観から見ていきます。
2.外観・内部
同梱物
同梱物です。画像左上に電源ケーブルとACアダプターがあります。中央上に取扱説明書があり、その横がサンキューカード(購入のお礼が書かれた挨拶文)です。取扱説明書は日本語を含む多言語で書かれており、簡潔・図解中心でわかりやすいものでした。中央下にVESA規格のブラケット、その横にネジが6本あります。これらはミニPCをディスプレイの背面に取り付ける場合に使用するパーツです。
モノがミニPCなので大勢に影響はない(使用感に大きく影響しない)と思いますが、ACアダプターはミニPC用としてはコンパクトなサイズです。
電源プラグは3つ足タイプです。GEEKOMのミニPCは基本この形状で、安全性を考えるとこの形状が望ましいのですが、ご家庭用のコンセントでそのまま使えないケースもあると思います。お使いのコンセントが3つ足に対応していない場合は変換アダプターを用意しましょう。Amazonなどで数百円で購入できますし、100均でも売っています。
外観
上面(天板)です。筐体色はシルバーで中央にGEEKOMのロゴがあります。…まあ、特に個性的なデザインじゃないですねw 天板の素材はおそらく樹脂製ですが、いまいち確証が持てません(金属製かもしれないです。要するにしっかりした素材感で安っぽさはありません)。
前面(前側面)です。側面も金属製です。画像左からUSB3.2 Gen2 Type-Aポートが2つ、イヤホンジャック、電源ボタンです。
背面です。ポート類はこちらに集中配置されています。上部に通気口(排気口)があり、画像左からDC-INジャック、USB4 Type-C(上)、HDMI2.0(下)、有線LAN、USB3.2 Gen2 Type-A(上)、USB2.0 Type-A(下)、USB3.2 Gen2 Type-C(上)、HDMI2.0(下)です。
念のために書きます。左右のUSB Type-Cポートは規格が異なり、いずれも映像出力とUSB PDに対応しますが、左側がUSB4規格なのでデータ転送速度は40Gbps、右側はUSB3.2 Gen2規格なのでデータ転送速度は10Gbpsです。
右側面にはセキュリティロックスロット。
左側面にはSDカードリーダーがあります。他社のミニPCにはSD/MicroSDカードリーダーがないものも多いですが、GEEKOM製品は多くの場合フル規格のSDカードリーダーがついています。デジカメとかを使っている方にはうれしいですよね。
内部
底面です。筐体はここから開口します。外側の四隅にゴム足があり、ゴムの中に筐体開口用のネジがあります。その内側にも4つ、ゴムで覆われたネジ穴がありますが、このネジ穴はVESAブラケットを使ってAE8をディスプレイの背面に取り付ける際に使うものです。このレビューではVESAブラケットをテストしていません。
ということで、ネジを外してみます。このネジは精密ドライバーを使う必要はなく、普通のプラスドライバーが使えます。
開口しました。この画像では「前面が上、背面が下」になっています。赤枠を2つつけていますが、左側がM.2 2280 SSD、右側がRAMスロット × 2です。上でもご説明しましたが、RAM、SSDとも空きスロットはありません。また、SSDを外すとWi-Fiモジュール(M.2 2230スロットを使用)があります。
RAMの型番は「Crucial CT16G56C46S5」で、DDR5-5600、容量16GBのものが2枚、SSDの型番は「KINGSTON OM8PGP41024N-A0」で、M.2 NVMe PCIe4 ×4、容量1TBのもの、Wi-Fiモジュールは「MediaTek Filogic 330(MT7922)」でした。
この筐体は開口が容易です。これは取り外した底板ですが、ネジを緩めても脱落しませんので、ネジをなくすこともありません。どうでもいい話に思われるかもしれませんが、実際に作業してみると、こういう細かいところがありがたいんですよね。
ウインタブではこれ以上の開口はしておりません。これ以上やると「分解」という感じになってしまうのと、AE8のCPUはノートPC用なので、交換するのはまず無理なので…。
3.性能テスト
ベンチマークテスト
表計算ソフトやビデオチャット、画像加工など、実際のビジネスシーンをシミュレートしたテスト、PC Markのスコアです。どちらかというとビジネス系のPCの性能測定で重視すべきベンチマークテストと言えます。このテストではCPU性能の影響が大きいとされますが、テスト内容にグラフィック系のシミュレーションも含むため、外部GPUの性能も少なからず影響します。
参考(過去データから一部抜粋):
Core i9-13980HX/RTX4090:9,187
Core Ultra 9 185H:8,099
Core i7-13700HX/RTX4070:8,057
Ryzen 7 8845HS/RTX4060:7,946
Ryzen 9 7940HS:7,521
Ryzen AI 9 HX 370:7,511
Ryzen 7 8845HS:7,446
Ryzen 7 8840U:6,949
Core Ultra 7 155H:6,849
Ryzen 5 8645HS:6,708
Ryzen Z1 Extreme:6,691
Core i9-13900H:6,542
Core Ultra 5 135H:6,485
Core Ultra 7 155U:6,392
Core Ultra 5 125U:6,376
Ryzen 5 7535U:6,021
まず、ここに「参考」として記載されているスコアは最低でも6,000点を越えていますので、PC Markが想定しているビジネスシーンではどのCPUであってもごく快適に動作する、と考えていいです。GEEKOM AE8の搭載CPUはRyzen 9 8945HSで、スコアは7,780点なので、絶対的なスコアとしては「ごく高い」です。
その前提で過去データと比較してみると、まずRyzen 9 7940HSのスコアが7,521点ですが、これはGEEKOM AE7で測定したものです。AE8のほうが「高いと言えば高い」ですが、使っていて体感差は「ほぼない」と考えていいです。
ただし、PC Markのテストでは「AIのローカル処理」が含まれていませんので、これがテスト項目に含まれるようになるとNPU性能の高い(Ryzen 9 8945HS搭載の)AE8のほうがより高いスコアになるものと思います。
グラフィック性能を測定する3D Markのスコアです。
参考(過去データから一部抜粋):
Core Ultra 9 185H:4,143、8,223、31,710
Core Ultra 7 155H:3,924、8,338、24,476
Ryzen AI 9 HX 370:3,800、8,026、31,138
Core Ultra 5 135H:3,454、7,235、24,791
Core Ultra 5 125H:3,392、7,301、23,168
Ryzen 9 7940HS:3,362、7,776、29,076
Ryzen 7 8845HS:3,330、7,908、29,873
Ryzen 7 8840U:2,943、7,206、27,471
Ryzen 5 8645HS:2,437、6,253、24,401
Core Ultra 7 155U:2,319、5,162、19,024
Core Ultra 5 125U:2,081、4,826、19,421
Core i9-13900H:1,956、5,440、19,477
Core i7-1360P:1,786、4,991、16,779
Core i7-1355U:1,760、4,859、16,891
Ryzen 5 7530U:1,281、3,137、13,730
※左からTime Spy、Fire Strike、Night Raidのスコア
参考2(外部GPU搭載のゲーミングノート):
Core i7-1280P/RTX3060:8,023、18,153
Ryzen7 5900HX/RTX3050:4,470、9,640
Core i7-10750H/GTX1650Ti Max-Q:3,530、8,372
※左からTime Spy、Fire Strikeのスコア
ここではTime Spy、Fire Strike、Night Raidについて言及します。まず、「参考2」のところに「Core i7-10750H/GTX1650Ti Max-Q」のスコアがありますが、これを見るとCore UltraのH型番とかRyzen 8045/Ryzen 7040のH(HS)型番であれば、もはやGeForce GTX1650あたりと差がないグラフィック性能であることがわかります。
また、過去データのRyzen 9 7940HSとのスコア差を見ると「勝ったり負けたり」という感じですよね?なので、グラフィック性能に関しては互角と考えていいと思います。
CPU性能のみを測定するCINEBENCH R23と、CINEBENCH2024のスコアです。このテストではGeForceなどの独立したGPUの搭載有無は影響を受けないとされています。
参考(過去データから一部抜粋):
Core i7-14700:122、1,177
Core i9-13900H:117、687
Core i9-13900H:112、705
Ryzen AI 9 HX 370:110、942
Snapdragon X Elite:108、1,038
Snapdragon X Elite:107、962
Ryzen 7 8845HS:106、956
Ryzen 9 7940HS:106、914
Core Ultra 7 155H: 105、964
Core Ultra 7 155U:101、533
Ryzen 5 8645HS:98、585
Core Ultra 5 125U:95,533
Core Ultra 5 125H:95、516
Core Ultra 5 135U:94、573
※左からシングルコア、マルチコアのスコア
CINEBENCHのスコアも高いですね。ただ、Ryzen 7 7940HSとのスコア差については「大きいとまでは言えないが、無視していいという感じでもない」でしょうか。まあ、実際に作業をしてみての体感差はほとんどないと思いますけど。
SSDの読み書き速度を測定するCrystal Disk Markのスコアです。PCIe4.0 ×4接続としては高速とは言えませんし、SSDの型番がGEEKOM AE7とは異なっており、AE7よりも若干低速です。ただ、実用上はこれで十分なスコアだと思います。
発熱とファン音
HWiNFOで温度測定しながらCINEBENCH 2024を実行してみました。CPU温度が最も高くなったのはマルチコア測定時で最高92.4℃まで上昇しました。サーマルスロットリングは発生していません。ウインタブでGEEKOM製品のレビューをすると、CPU温度が高めになるケースが多く、Intel CPU搭載機ではサーマルスロットリングの発生も見られますが、それと比較するとRyzen搭載のAE8や前回レビューしたAE7ではCPU温度が90℃を越える場面はあるものの、Intel CPU搭載機よりは発熱は小さいです。
筐体の表面はそれほど熱くなりません。ベンチマークテスト中に上面(天板)に触れると「ちょっと熱を感じるが、全然熱いとは思わない」程度です。筐体背面の排気口には熱を感じましたが、そこまで高温でもないですし、風量も大きくはありません。
ファン音は騒音計の測定では50dB台後半でした(防音室での測定ではないので、多少生活音が混ざっており、実際にはこれよりも小さい数値になるはずです)。ただ、「サーッ」という音質で、耳障りとは感じられませんでした。
6月にAE7のレビューをした際には「やや発熱量が大きい」というイメージがありましたが、その後様々なミニPCのデータを取ってみて、高性能なCPUを搭載するミニPCとしては、AE8(前回レビューしたAE7も)」の発熱量は「普通くらい」だと感じています。
4.レビューまとめ
GEEKOM AE8はGEEKOM公式ストアやAmazonで販売中です。この記事の公開にあたり、GEEKOMより割引クーポンをいただいております。
GEEKOM公式サイト:
・対象製品:AE8のRyzen 7モデルとRyzen 9モデル
・クーポンコード:AE8WINTAB
・割引率:6%
・有効期限:12月29日まで
Amazon:
・対象製品:AE8のRyzen 9モデルのみ
・クーポンコード:Ae8wintab
・割引率:6%
・有効期限:12月29日まで
※11月17日現在、製品ページに別クーポン(11月19日まで有効)があるため、使えません
購入時期により価格は変動すると思いますが、参考までに11月17日現在のクーポン適用後の価格をご案内します。
GEEKOM公式サイト:
・Ryzen 7モデル:84,506円
・Ryzen 9モデル:103,306円
Amazon:
・Ryzen 7モデル:90,000円
・Ryzen 9モデル:100,000円
システムスペック、パフォーマンス、筐体品質(発熱やファン音)のいずれも優れた製品だと思います。メインPCとして、仕事に、学習に、ゲームに、コンテンツクリエーションにと、ほとんどのことがこなせるだけの実力があります。RAMやSSDをDIYで増量することもできますが、Ryzen 9モデルに関しては初期構成でRAM32GB、SSD1TBありますので、当面は容量不足に悩むこともないでしょう。
実際のところ、筐体はAE7と共通ですし、CPUの性能差もほとんどありません。この先「オンデバイスAIがらみ」の活用方法が増えることを見越せば、AI処理性能の高いAE8のほうがより魅力的とは思いますが、実際のところ「いまのところオンデバイスAIの使い道がほとんどない」ので、AE7との差別化は難しいところです。
一方で、レビューに使用したRyzen 9モデルの価格が10万円まで下がっていて、AE7の実売価格(11月17日現在、公式ストアで95,990円)との差が大きいわけではないので、先を見越してAE8にする、気持ち的に新しいCPU型番のほうがいいのでAE8にする、というのでもいいんじゃないかと思います。
5.関連リンク
GEEKOM AE8:GEEKOM公式サイト
GEEKOM AE8:Amazon
2014年、低価格な8インチWindowsタブレットに触発されサイト開設。企業でユーザー側代表としてシステム開発や管理に携わっていました。「普通の人」の目線で難しい表現を使わず、様々なガジェットを誰にでもわかりやすく紹介・レビューします。