こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。今回はノートPC「HP ENVY 17-n100」の実機レビューです。17.3インチと巨大なサイズのノートPCなのでウインタブの芸風とは少し違うかな、という製品なのですが、このサイズのノートPCは個人的に大変関心があり、以前ドスパラの「Critea VF-HG10」の実機レビューをさせてもらったことがあります。なぜ大きいサイズのノートPCに関心があるのかというと、私の自宅に十分なスペースがなく、デスクトップPCを設置するのが難しいからです。
17.3インチサイズともなれば、気軽に持ち歩けるような筐体ではなく(重さが約3 kgありますし、そもそもこのサイズを収納するバッグがありません)、室内で半据え置き型として使うことになるのですが、配線がほとんどなく、気軽に折りたためて収納できる、というのは私のような住環境の人間にはとっても好都合です。使い始めたらデスクトップPC顔負けの広大な画面が現れますしね。ということで、レビュースタートです。
HP ENVY 17-n100/r000: HP Directplus
1.スペック
この製品はこれまでウインタブで製品紹介の記事を書いたことがありませんので、一通りチェックしてみます。CPUはモバイル用CPUとしては最上位クラスのCore i7-6700HQで、ミドル~ハイスペックのゲーミングノートPCに搭載されているものです。通常のモバイルノートやスタンダードノートに搭載されているCore i7の型番末尾「U」のものと比較しても段違いに高性能です(そのかわり省電力性は劣ります)。
RAMは8GBと16GBを選べますが、私が試用した製品は8GBでした。ストレージは256GBのSSD(超高速なM.2規格)がプライマリ、1TBのHDDがセカンダリとして搭載されています。そして、この製品、GPUとしてNVIDIA GeForce GTX950Mが搭載されています。つまり、見た目はおとなしいスタンダードノートですが、内部の構成はミドルクラスのゲーミングノートPCに匹敵する内容なんです。後述しますが一般的なユーザーであればオンラインゲームもストレスなく遊ぶことができるレベルですね。そこらへんのデスクトップPCと比較してもずっと高性能です。
ディスプレイサイズは再三書いている通り17.3インチと広大でIPS液晶を採用しており、解像度こそ1,920 × 1,080と「並み」ですが、十分すぎるくらい鮮明です。そんなわけで、スペック表を見てこの製品に俄然興味がわいてきた、という人も多いんじゃないでしょうか?
2.筐体
今回は試用機ということもあり、同梱物はACアダプターと電源用ケーブルのみでした。さすがにサイズは大きく、ケーブルと電源で約585 gあり、これだけで10インチタブレットくらいの重さになりますねw
HPのノートPCをすべてチェックしたわけではないですが、HP製品って、筐体はやや丸みを帯びた形状になっているものが多いです。「ENVY」という製品ブランドはHPの個人向けPCとしてはハイクラスという位置づけなのですが、そのENVYもクラウドブックのStreamも筐体の基本コンセプトはよく似ているというか、やや丸みが強い、「かたまり感」のあるデザインです。上の画像は筐体前面(開口部のあるほう)ですが、ご覧のとおりかなりスリムで、LEDインジケーターのようなものも見当たらず、シンプルな印象です。
筐体右側面にはUSB 3.0ポートが2つとHDMI、LANポート(RJ45)、DC-IN、そしてSDカードスロットがついています。ちなみにこの製品にはフルサイズUSBポートが左右に4つついていて、すべてUSB 3.0規格です。
左側面にはUSB 3.0ポートが2つにオーディオジャック、セキュリティロック用スロットがありますね。ステータスインジケーター(ストレージと電源のステイタスを表示)もこの面です。
あと、左側面にはブルーレイドライブ(DVDスーパーマルチドライブ機能も含む)がついてます。いいですねえ、大画面でブルーレイ。
背面(ヒンジ側)にはポート類は見当たらず、すっきりしたものです。
キーボードです。テンキー付きでたっぷりしたサイズです。キーピッチは十分とられており、狭苦しさは一切ありません。パームレストの素材は不明ですがHPによれば「リニアカーボンフィニッシュ」という処理をしているとのことです。ということはカーボンじゃないっすね。でも質感はかなり高く、プラスティックっぽさは感じられません。カーボンのように固いです。また、表面は「家具との調和を目指したウッドテイスト(HPの製品ページより抜粋)」ということで、上品な横縞が入っています。
キートップはフラットですが、表面が若干ザラついており、確実に打鍵できます。キーストロークはこのサイズとしてはやや浅めですながら、打鍵の確実性を損なったり、気持ちよく打鍵できないとかはありません。キーのレイアウトはクセがないほうだと思いますが、個人的には方向キーが少し小さいのが気になりました。ただ、ノートPCのキーボードってどのメーカーのものでも多かれ少なかれクセがありますし、この製品の方向キーについてもすぐ慣れるだろうと思います。
キーボードはバックライトがついていて、F5キーでオン/オフを切り替えます。
HP製品の多くに使われているBANG & OLUFSENとの共同開発によるスピーカーシステムが搭載されています(4スピーカー+サブウーファー)。サブウーファーは底面にあり、それ以外のスピーカーはキーボード面にあります。音質は「顕著にいい」です。音感のない私でさえはっきり他製品との違いが理解できました。
すいません、画像が少し粗いですが、これが底面です。排気口のほか、着脱式のバッテリーが装着されています。カバーでおおわれているので見えませんけどね。また、この画像の下のほう(開口部側、つまり操作時に前面に来る)にあるメッシュのところがサブウーファーです。
いっぱいまでヒンジを開くと、最大で上の画像の位置まで角度をつけることができます。これ以上は天板が底面に干渉するため開くことができません。一般的な利用シーンでは十分な開口角度だと思います。また、IPS液晶なのでディスプレイの視野角は広いです。とはいえ日ごろタブレットを使っている人にはそんなにありがたみがないかもしれません。Windows タブレットの液晶ってなにげにかなりお金がかかってるんですよね。
トップ画像でも大きさを強調してみましたが、実寸サイズではなく、直感的に大きさを表現しようと思って、10.1インチの2 in 1 「acer Aspire Switch 10」と並べてみました。同じノートPCとは思えないくらいサイズが違いますね。外出時に持ち歩くのを諦めるレベルではあります。
3.使ってみた
いつものようにウインタブの記事を書いたり、ブラウザゲームで遊んでみたりしました。この製品は「内部がゲーミングノート」と言っていい仕様なので、基本的に何をやっても処理にもたついたりすることはありません。特に私の場合は普段使いでPCに負荷のかかるような作業をすることもないので、性能面では文句のつけようがありません。また、ブラウザゲームなんかをやってみると顕著にわかるのですが、当然挙動のひとつひとつがキビキビしています。プラウザのタブの開閉、ブラウザゲームのキャラの動きなど、どれをとっても「Atomってやっぱ少しもっさりなのね」と感じますね。
キーボードの打鍵感はかなり良好です。デスクトップPCを使っているときのようにキーストロークの深さは期待すべくもありませんが、ストロークが浅いなりにも確実に、気持よく打鍵できます。また、絶対的なサイズも大きいため、キーレイアウトでクセのあるところも僅かです。上の方に書きましたが、方向キーが少し使いにくいかな、と感じた程度で、試用をはじめてすぐに慣れることができました。
それと、使ってみて特にこの記事に書きたかったのが「音質」です。私がこれまでに試用してきたどのノートPCよりも音質はいいですね。それは音楽を聴いている際はもちろん、ゲーム中にキャラクターが喋る際にもはっきりと違いがわかります。
4.RealSense Camera
恥ずかしながら私はこの製品の試用を通じて、はじめて「Windows Hello」の恩恵を知りました。いわゆる「顔パス(顔認証)」をしてみたのですが、認識能力が非常に高く、少し横を向いていたり、部屋が暗い程度なら問題なく認証してくれます。パスワードもPINも入力せずにロックを解除できるのが快感で、面白がって何度も試してしまいました。認証に失敗したのは暗い部屋で風呂あがりに濡れた髪でPCに向かったときの一度だけです。おそらくSurface Pro 4を持っている人などは、こういうのが日常だと思うんですけど、これはうらやましい!と思いました。
Intel RealSense Cameraについては、こちらをご覧ください。
あと、RealSense Cameraを使うアプリというのもいくつかありまして、ジェスチャーで楽器演奏ができる「KAGURA」というのを試してみました。体験としては面白かったんですけど、私は音楽を楽しむ趣味ってないので…。子供さんなんかが遊ぶと喜びそうです。もちろん音ゲーが好きな人にもいいかも。なんだか近未来的な気がして新鮮に感じられました。
それと、この製品は顔パスだけでなく、指紋認証も可能です。しかし、顔パスを一度やってしまうと指紋認証すら面倒に感じられるかもしれませんね。
5.性能テスト
今回もまた、オンラインゲームのベンチマーク・テストをやってみました。
参考:
ドスパラ GALLERIA QF960HE(Core i7-4710MQ、GTX960M): 16,772
ドスパラ Critea VF-HG10(Core i7-6500U、940M): 14,326
DELL XPS 13(Core i7-6500U): 7,230
DELL Inspiron 15 7000(Core i5-6200U): 3,787
ドスパラ Diginnos DG-D11IW(Core M5Y10c): 2,933
はっきり言ってNVIDIAのGPUを搭載している製品はドラクエベンチの「標準品質」はテスト不要ですね。必ず「メタルスライム(スコア1万以上)」が出ちゃいますから。参考にあげた製品のうち、上の2つ(ともにドスパラ機)はNVIDIAのGPU搭載モデルです。このくらいのスコアになると、快適に遊べるのが当たり前で、ガレリアの960のほうがより高性能、とか言っても無意味かな、と思います。
参考:
ドスパラ GALLERIA QF960HE(Core i7-4710MQ、GTX960M): 12,791
ドスパラ GALLERIA QHF960HE(Core i5-4210M、GTX960M): 10,136
ドスパラ Critea VF-HG10(Core i7-6500U、940M): 8,467
ドラクエベンチ最高品質の場合、スコアは8,000点台となりました。まあドラクエをやるんならこのスコアでも十分でしょうね。ちなみにCore i7-6500U搭載のノートPCであっても、GPUを搭載していない製品だとこの水準のスコアにはなりません。DELLのXPS 13(Core i7-6500U)でも3,592です。
参考:
ドスパラ GALLERIA QF960HE(Core i7-4710MQ、GTX960M): 7,677、6,374
ドスパラ GALLERIA QHF960HE(Core i5-4210M、GTX960M): 6,410、6,181
ドスパラ Critea VF-HG10(Core i7-6500U、940M): 6,842、4,623
DELL XPS 13(Core i7-6500U): ‐‐、3,085
※数値は左から標準品質、最高品質の順
次にドラゴンズドグマオンライン(DDON)のベンチマーク・テストです。ここでもNVIDIAのGPU搭載の製品が比較対象になっていて、モバイルノートとしてハイエンドの性能のを持つDELL XPS 13が引き立て役になってしまっています。オンランゲームとして比較的軽量なドラクエはともかくとして、DDONクラスになると、この製品でも最高品質の場合は本格的なゲーミングノートPCよりは若干不利になりますね。
参考:
ドスパラ GALLERIA QF960HE: 4,014、11,109
ドスパラ GALLERIA QHF960HE: 3,680、10,771
ドスパラ Critea VF-HG10: 2,621、8,816
DELL XPS 13: 871、3710
※数値は左からFirestrike、Skydiverの順
最後に3DMarkのスコアを掲載します。Skydiverの数値がやや低くなっていますが、3D Mark自体最近アップデートされたようで、過去のスコアとの連続性が確保されているのか若干不安ではあります。ここでもGPU搭載機ならでは、というかノートPCとしての処理性能に疑いを持つ余地はなさそうですね。
6.まとめ
HP ENVY 17はHPの直販サイト「HP Directplus」で販売中で、価格は税込み150,984円となっています。性能の比較でゲーミングノートPCを引き合いに出しましたが、例えばドスパラの製品であれば15.6インチのゲーミングノートでさらにワンランクスペックの高いものが15万円で購入できます。
しかし、この製品の本質はゲーミングノートではなく、17.3インチの大型ディスプレイにブルーレイドライブやRealSense Cameraといったエンタメ系の要素も盛り込み、しっかりとした筐体にゲーミングノートと同等のスペックを詰め込んだものです。それを考慮すれば、15万円という価格は決して高くはなく、むしろ割安であるといえるでしょう。
私は自宅のPC環境から、「17.3インチのノートパソコン」に存在意義を見出すことができるので、この製品が極めて魅力的なものに感じられます。一方で、このサイズなら携帯性を期待できないので、デスクトップPCのほうがいいとか、もう少し小さくて持ち歩けるようなノートPCのほうがいい、と考える人も多いと思います。そういう意味では好みがわかれるタイプの製品なんだろうと思いますが、もしも私のようなニーズのある人がいるのなら、この製品は強くおすすめできますね。
コメント
これでhomeか
こんにちは、コメントありがとうございます。Proのほうが良かったっすか?私は自分の利用パターンであまりProのニーズがないもので…
私はおなじHPのProBookのほうの17インチノートを長らく愛用してます。
こちらと比べるとディスプレイやCPU/GPU、光学ドライブなどのランクは落ちますが、
その分しっかり価格に反映されてるのが予算の都合上とってもありがたいです。
いちえつらんしゃさん、こんにちは、コメントありがとうございます。HP製品はあまりウインタブでも取り上げてないですが、魅力的な製品がたくさんありますよね。世界屈指のパソコンメーカーですし。17インチ、使ってしまったら15インチには戻れないのでは?
私も17.3インチのノートPCを買った時、10.1インチのT100TA並べて写真撮りました。
デスクトップ並みの性能で移動可能というのは、家の中だけでも中々便利です。
まあ、その高性能振りに欲が出て、あれもこれもとつないでるうちにデスクトップ化していくのですが…
こんにちは、コメントありがとうございます。やはり自宅内であっても簡単に移動できるというのが魅力です。特に私の住環境では。なので、このサイズはもっと売れてもいいような気がするんですけどね。ある意味日本家屋向け。
HPの製品はデザインもよくスマート&シンプルで価格もお安めなのでなぜ日本で売れないのか不思議ですね.Atom機出だしの頃も良いマシン出してました.英語キーボードが選べたりするのもポイント高いですし.
逆に言えば売りがなく性能機能ともに標準的で事務機的なので訴求力がないんでしょうねえ.
パソコンは色んな要素があってスペックだけでは語りきれないものです.周辺チップも信頼性が高く安定動作するかと言った部分やドライバがまともに作られているかと言う部分が普段の使い勝手を左右します.
そういった意味で中華機はハイスペックかつ安価ですが低信頼性,低安定なのでどう使いこなすかが鍵ですね.事務器はとにかく安定性が大切です.ドライバもメーカーが出荷した状態でテストされているものなので新しいから良いというものではなく安定しているなら更新しないが基本ですね.
くまねこさん、こんにちは、コメントありがとうございます。まさにおっしゃる通り、中国タブレットについてもHP製品についても同感です。HP製品ってもっと脚光を浴びてもいいと思うんですけど、プロモーションがうまくいってないのかなあ。