こんにちは、ウインタブ(@WTab8)です。デルのハイスペック・モバイルノート「XPS 13」をお借りして実機レビューです。DELLといえば最近ではWindows タブレット「Venue Pro」シリーズにCherryTrail世代のAtomを搭載してリニューアルしたり、キーボード分離型の2 in 1「XPS 12」をリリースしたりと、ウインタブでも記事にする頻度が増えていますが、今回はクラムシェルのモバイルノートの試用、ということになります。
この記事は試用が終了してから書いているのですが、とにかくいろんな意味で感動的な製品でした。
New XPS 13 (2015/10/20発売)
1.スペック
OS: Windows 10 Home 64ビット
CPU: Intel Core i7-6500U
RAM: 8GB
ストレージ: SSD 256GB
ディスプレイ: 13.3インチ (3200 x 1800)タッチ
ネットワーク: 802.11ac、Bluetooth 4.1
カメラ: ワイドスクリーンHD(720 p)Webカメラ
ポート:
USB 3.0(PowerShare仕様) x 2
Thunderbolt 3 × 1
3-in-1 カードリーダ (SD、SDHC、SDXC)
Mini DisplayPort x 1
ヘッドセットジャック x 1
セキュリティケーブルスロット x 1
バッテリー稼働時間: 最大18時間
サイズ: 304 × 200 × (9-15) mm
重量: 1.29 kg
最初にスペックのおさらいです。試用機はXPS 13の中でも最上位構成(プラチナ・QHD+タッチパネル)で、CPUはSkylake世代のCore i7、RAMは8GB、ストレージは256GBのSSDを搭載しており、モバイルノートPCとしてはハイエンド、とっていい内容になっています。また、ディスプレイはいわゆる「4Kディスプレイ」で13.3インチながら解像度3,200 × 1,800(アスペクト比16:9)で、これだけ高精細なディスプレイを私は試用したことはありません。
入出力ポートではThunderbolt 3の搭載というのが大きな目玉なのですが、私の環境だとThunderboltの実力を試す事はできませんでした。残念ですし、読者の方には申し訳ないです。
※なお、現行のXPS 13は最上位の「プラチナ・QHD+タッチパネル」でCPUに「Core i7-6560U」を搭載していて、試用機のCPUよりも高性能である上、内蔵グラフィックに「Intel Iris グラフィック」を採用している(試用機のCore i7-6500UはIntel HD グラフィックス520)ため、後述する性能テストではさらに高いスコアが出るものと思われます。
2.筐体
今回お借りした製品は新色の「ゴールド」でした。とはいえ派手な感じではなく、一般的によく見かけるブラックやシルバーの製品とはひとあじ違うかな、というくらいの印象で、ビジネスで使っていて目立つ、ということはないでしょう。このあたりはさじ加減が適正というか、利用シーンがちゃんと想定されていると思います。
筐体前面(開口部側)です。さすが高級機、薄いですね。インジケーターやポート、スロット類はこの面には全くありません。
左側面です。画像左からDC-IN、USB Type-C(Thunderbolt 3)、USB 3.0、オーディオジャックとなります。オーディオジャックの隣りにあるボタンとヤツメウナギのような小さな孔(5つあります)は充電ステータス確認用のボタンです。ボタンを押すとバッテリー残量に応じてヤツメウナギの目が光ります。満充電の場合は全部光りますし、半分弱しかバッテリー残量がなければ5つのうち2つだけ光ります。そして筐体の右の方にスピーカーがあります。
右側面です。画像左からスピーカ-、SDカードリーダー、USB 3.0(PowerShare対応)、セキュリティケーブルスロット となります。筐体の両側面の開口部側にスピーカーが配置されており、ステレオ感は良好です。
筐体背面(ヒンジ側)です。こちらにはなーんにもありませんね。
筐体底面です。上下にある2本の黒い線は滑り止めのラバーですね。XPSのロゴプレートは開閉式になっており、これを開くと「サービスコード」が記載されています。
キーボードです。キーはフルサイズで窮屈さはありません。細かいアラ探しをすると右端のEnterキー、Backspaceキーがやや小さめで、最初のうち少しだけ戸惑いましたが、すぐ慣れますし、実用上の問題は全くないと思います。
また、タッチバッドにはクリックボタンがついておらず「一枚板」です。もちろん使用感はよく、問題は感じませんでした。でも私あんまりタッチパッド使わないんで…。
キーの表面はフラットで高級機にありがちな凹凸はつけられていません。またパームレスト部分はカーボンファイバー製で金属のようなひんやり感もないし、プラスティックのようなカポカポ感もなく、ややしっとりしていながら硬質な感触です。
筐体を一通りチェックしてみて、かなり高級感が感じられました。もちろん「アルミ削り出しフレーム」とか「カーボンファイバー素材」という実機試用前に得ていた情報によってそう感じてしまった、というのはあると思います。しかし、全体的に密度がある、というかカタマリ感がありますね。そしてこの筐体は13.3インチとしてはかなり小さい(DELLいわく「世界最小の13インチ」)です。11.6インチと同等のサイズです。後述しますがディスプレイ部分のベゼルが非常に薄く(DELLいわく「フレームレスパソコン」)なっていることが筐体の密度感を高めていると思いますし、実寸サイズを小さくすることに寄与していると思います。
3.ディスプレイ
この製品を試用して一番感動したのがディスプレイです。一応いつものようにベンチマークテストをやってはいます(後述)が、この製品はゲーミングPCではないし、クリエイター向けの製品でもなく、ビジネスマシンですから、その意味でCore i5ガーとかCore i7ガーといってもそんなに体感差なんて出ないんですよ。でもディスプレイははっきりと差を体感できます。
とにかくキレイです。細かいところまでくっきり見える感じ。バッテリーを節約するために輝度を落としても全然平気です。これまでいろいろな製品を試用してきましたし、Teclast X98 Proのように「9.7インチIPS(2,048 x 1,536)」なんて高解像度の製品も試したことがありますが、この製品のディスプレイ性能はケタ違いです。まさに異次元。
視野角も広いです。ほとんど真横にいても見えるくらいです。
上から見ても同様にはっきり視認できます。はっきり言って手持ちのPCやらタブレットやらが使えなくなるくらいのレベルです。
DELLのWebサイトで確認済みですが、ベゼルの細さもすごいです。使っていてその存在を忘れるくらいです。
このディスプレイのためにこの製品を買う、という選択肢も大ありだと思いました。
4.使用感
いつも書いていますが、私が日常的に使う機能はそれほどPCに負荷がかからないようなものなので、処理性能についてはベンチマークテストの結果を載せることにして、普段使いでの使用感を書きたいと思います。
まずテキスト入力ですがキーボードの打鍵感は非常によく、快適でした。キーボードのサイズも適正、というかごく普通のサイズです。キーの打鍵音は特に大きいわけではありませんが、かと言って静音というレベルでもなく、ごく普通の感じです。そのためPC持ち込み可の図書館などで使う場合は多少気になるかもしれません。スタバとかだと平気でしょうけどね。
また、3,200 × 1,800というのは広いです。ドラクエベンチで「1,280 × 720」の解像度の場合、上の画像のように非常に小さく表示されますし。
画像加工ソフト「GIMP2」を使っていつもの通りウインタブの記事用に画像をリサイズするとこんな感じで表示されます。もちろん表示倍率を上げれば問題ないのですが、改めてこの製品のディスプレイ解像度を思い知らされました。画像加工の場合は表示倍率をある程度上げたほうが作業しやすいので、これは歓迎できます。
それと、この製品のスピーカーは結構いいです。重低音とかは無理で少しシャリシャリした感じではありますが、ステレオ感がしっかり出ていて好印象です。
最後にバッテリーです。DELLの説明では「18時間駆動可能」とあるのですが、そこまではいかんわ、というのが私の感想です。ウインタブの記事執筆作業を3時間ほどやってみたら40%弱残量が減っていました。このときディスプレイ輝度を100%にしていて、実用上室内だと50%くらいの輝度でも快適に使えるので、それを考慮したとしても「10時間強なんじゃね?」というのが正直な意見です。まあ、このくらい持てば納得なんですけどね。
5.性能テスト
この製品はゲーミングノートPCではないのですが、一応いつものようにドラクエベンチとドラゴンズドグマオンライン(DDON)ベンチを試してみました。なお、上のほうで補足した通り、現行のXPS 13は試用機に使われている「Core i7-6500U」に加え「Core i7-6560U」をCPUに採用しています。Core i7-6560UはCPU内蔵グラフィックに「Intel Iris」を使用しているため、この記事の性能テストよりもさらに高いスコアを出せると思われます。
参考:
ドスパラ Critea VF-HG10: 14,326、8,467
ドスパラ GALLERIA QHF960HE: 14,096、10,136
Lenovo ThinkPad X1 Carbon(2015): 5,619、–
※※ひとつめの数値は「標準品質、1,280 × 720、ウインドウ」、ふたつめの数値は「最高品質、1,920 × 1,080、フルスクリーン」で測定したもの
「参考」のところに記載しているドスパラの2機種はともにNVIDIAのGPUを搭載しています。CriteaはCPUがCore i7-6500U、GPUがGeForce 940M、GALLERIAはCPUがCore i5-4210M、GPUがGeForce GTX960Mです。試用機であるXPS 13はビジネス系のノートPCとしては文句なしのスペックですがGPUは搭載しておらず、やはりオンラインゲームを遊ぶ、という用途の場合はGPU搭載機のほうが高スコアになります。
一方、ThinkPad X1 CarbonはXPS 13とよく似た性格のモバイルノートPCで、こちらはCPUにCore i7-5600U、RAM8GB、ストレージ512GB SSDとなっていて、やはりGPUは搭載していません。XPS 13とのスペック差はCore i7の世代だけということになりますが、さすがSkylake、というべきでしょうか、ThinkPadよりもかなり高いスコアになっています。
参考:
ドスパラ Critea VF-HG10: 6,842
ドスパラ GALLERIA QHF960HE: 6,410
今度はDDONベンチです。やはりGPU搭載機よりはスコアが悪くなります。しかし、私が過去に試した限りでは、CPUにCore M5Y10cを搭載したドスパラ Diginnos DG-D11IWが「低品質」モードで1,372であったことを思うとGPU非搭載機としてはかなり立派な数値だと思います。
XPS 13をオンラインゲーム目的で購入する人は多くないと思います。もしオンラインゲーム目的なのであれば、XPS 13はGPU搭載のゲーミングノートPCの、それもかなりスペックの高いものが購入できるくらいの価格帯の製品ですから、はっきり言って選択ミス、ということになるでしょう。でも、ドラクエであれば十分快適に、DDONでも普通には遊べるレベルのパフォーマンスはあるので、たまに遊ぶ程度なら十分対応できるでしょうね。
参考:
ドスパラ Critea VF-HG10: 2,621、8,816、9,774、65,657
ドスパラ GALLERIA QHF960HE: 3,680、10,771、10,230、62,217
※数値は左からFireStrike、SkyDiver、CloudGate、IceStormのスコア
最後に3DMarkのスコアも載せておきます。このソフトウェアではFireStrikeという種目が最もPC負荷の高いテストになるのですが、やはり高負荷の場合はGPU搭載機と比較してしまうと厳しい結果になるものの、負荷の小さいテストになるにつれ、差が縮小していますね。
ウインタブの実機レビューは「Atomタブレット」か「ゲーミングノート」となることが圧倒的に多くて、ハイエンドなビジネス系のモバイルノートについてはデータが蓄積されておらず客観的な評価がしにくくなっていて申し訳ないです。そのため、体感的な感想になってしまうのですが、これまで書いてきた通りXPS 13はゲーミングノートPCではないので、これらのベンチマークスコアがゲーミングノートPCに劣っているのはある意味当然だと思いますし、それでもそこそこは遊べる、ということも言えると思います。実際1世代前(Broadwell)の同等クラスのCPUを搭載するThinkPad X1 Carbonに対してはドラクエベンチで大きな差をつけていますので、確実に高性能化している、と言ってもいいでしょう。
GPU搭載のゲーミングノートPCと比較すると「サイズも半分、重さも半分」なわけですし、表計算ソフトやデータベースソフト系の演算処理ならば十分に本領を発揮できると思います。
6.感想
過去に何度かDELL製品の試用をさせてもらったことがありますが、その多くが「アメリカン」で、サイズがやや大きめ、重量もそこそこ重い無骨で真面目な製品、という印象がありました。もちろんこれは悪しざまに評価しているわけではなく、私の中での「DELLらしさ」っていうことです。
で、XPS 13です。正直感動的なモバイルノートPCだと思います。まずサイズが13インチじゃありません。11.6インチサイズと同じレベルだといっても問題はないはずです。次に、筐体の質感はまさに高級機で、プラスティック感は一切なく、カーボン素材のよさがしっかり出ていると思います。そしてディスプレイです。「フレームレス」とDELLが表現する極細なベゼルに4Kディスプレイの美しい画面は「圧倒的」なものです。
残念なのは私の試用環境ではこの製品の性能を正しく評価できるだけのデータの蓄積や同クラスの製品の比較経験が十分でなく、シビアに性能評価できなかったことです。ただ、Microsoft Officeなどビジネス系のアプリケーション、動画視聴、画像加工などの作業で「Core i5だと厳しいけどCore i7だと快適」みたいな事例を私は知りません。おそらくカタログスペックなりの性能、カタログスペックなりの満足度になることは間違いがないと思いますし、CPUにせよRAMにせよ、ビジネスマシンとしては望みうる最高の内容になっているので、買って後悔するようなことはないでしょう。
最後に価格とバリエーションです。
スタンダード(Core i5-6200U、4GB、128GB、1,920 x 1,080):144,980円
プレミアム(Core i5-6200U、8GB、256GB、1,920 x 1,080):159,980円
プラチナ(Core i7-6560U、8GB、256GB、1,920 x 1,080):169,980円
プラチナ・QHD+タッチパネル (Core i7-6560U、8GB、256GB、3,200 x 1,800):184,980円
※価格はすべて税抜き
いつもは「最低構成で十分」というのが口癖のウインタブですが、XPS 13に関しては最上位構成「プラチナ・QHD+タッチパネル」を強くおすすめしたいです。理由はディスプレイで、この製品を使うなら絶対に4Kディスプレイモデルです。もちろんスタンダードモデルでも高い質感と11.6インチ並みの携帯性があるので、決して悪い選択ではありませんが、4Kディスプレイの価値は絶大だと思います。価格差は約4万円ありますが、DELLがしばしば実施する「週末クーポン」などを活用すれば差額は縮小しますし、CPU、RAM、ストレージのスペックも格段に上がっていることも考慮すれば間違いなく余計に支払うだけの意義はあります。
DELL XPS 13、ホントに感動しますよ…