
先日より、Intel Core Ultraシリーズ3、Panther Lakeのレビューが解禁されています。 以前の記事 で、その概要を速報としてお伝えしましたが、実機レビューによりその実態が分かるようになってきました。今回はその中でも、iGPU性能が予想よりも良いという点について簡単にお話ししたいと思います。
Panther Lake 12 Xeコア版の低電力性能
わたしは元々、Arc B390は前世代であるArc 140Vと原則的に同世代の製品で、1.5倍のコアを備え1.5倍前後の電力すなわち45W前後がもっとも効率よく性能を引き出せるのではないかと想定していました。しかし、2026年1月26日以降に公開された実機ベンチマークの数々( 例1, 例2 )は、20W前後でも想像以上に高い性能を発揮することを示しています。
15W前後では、従来のIntel iGPUであればライバルのRadeon iGPUに押される場面が多く見られましたが、B390は様々な実測でも基本的にはRadeon 890Mを上回っています。メインストリームノートやハンドヘルド向けの20~30Wは特にB390が本領を発揮しているポイントで、重量級タイトルもある程度快適にプレイできる性能を見せ、Arc 140VやRadeon 890M/780Mを大幅に上回る結果が得られています。私が以前に「本来の狙い」と思っていた45W前後では、RTX 3050級のエントリーdGPU並の性能になります。
IBC v3:FPSを最大化するための電力再配分
Panther Lake iGPUが低TDPでも強い背景にあると思われるのが、この世代で導入された Intelligent Bias Control v3(IBCv3) です。CPUとGPUが独立に動いていると、それぞれ個別に「自分が必要とする電力」を要求しようとします。IBCはプラットフォーム全体でFPSを最大化することを目的に、CPUとGPU間の電力配分を動的に最適化します(AMD SmartShiftやNVIDIA Max-Q Dynamic Boostと同じような技術と言えます)。IBCv3はこれが進歩してより安定したほか、性能が向上したEコアで十分な場合にはEコアを優先して使うことでよりGPUに大きな電力を振り分けられるようにしたとしています。結果として、同じ総消費電力でもGPU性能が引き出されやすくなっており、20W前後という比較的低い電力帯での予想外の高性能につながっていると考えられます。

PC Watchの検証動画 では、IBCv3の効果がバッテリー駆動時に特に顕著であることが確認されています。動画内では、電源接続時とバッテリー駆動時の体感差がほとんどないことを紹介しつつ、動画内の計測では、CPU負荷の小さいゲームでは実際Eコア中心に動作していることを示しています。バッテリー駆動時はほとんどのコアが2GHz前後で動作しており、確かにこれではPコアでなくても性能は変わらなそうです。外出先でも性能が落ちにくく、バッテリー駆動でもゲームや重い処理が快適という、従来のゲーミングノートでは得られなかった体験を実現しています。
Panther Lake 4 Xeコア版の性能
Panther Lake世代では、上位の Arc B390 だけでなく、4 Xeコア構成の下位GPUも注目に値します。発表前の段階では私は「Meteor Lake-U(MTL)やArrow Lake-U(ARL)に搭載されていた4コアGPUとほぼ同等の最大性能」で、コア数通りにStrix PointやLunar Lakeの半分程度と大きく劣る性能を予想していました。コア数が同じであれば、世代差による改善はあっても大幅な伸びは期待しにくい、というのが自然な見方だったからです。しかしこの事前予想はいい意味で裏切られました。

Notebookcheckの実測ベースでは、 Panther Lakeの4 Xeコア版 は、 MTL-U/ARL-Uの4コアGPU 比で1.5倍以上の性能向上を果たしており、 Strix Point や Lunar Lake の7~8割、 初代ROG Ally などハンドヘルドの大流行を生んだ Ryzen Z1 Extreme や、 Ryzen AI 7 350/450 搭載の Radeon 860M に匹敵する水準の性能を見せています。これはノートPCのパフォーマンスモードでの消費電力45W前後を使ってのものでArc B390に比べるとクロックが高いのでしょうが、純粋な性能でもワットパフォーマンスでもZ1 Extremeに匹敵する数字で、十分使える性能といっていいでしょう。
エントリー向けのWildcat Lake は2 Xeコア構成ですが、4 Xeコア版の性能向上をそのまま当てはめれば、なんとこの2コア版ですら(レイトレーシングなどが省略されているのを除けば) Raptor Lake-H最上位に搭載の96EU に相当する性能水準に達することになります。
まとめ
B390が示した低電力でもしっかり伸びる性能と、Panther Lake 4Xe版が見せたコア数からは想像できない実力は、いずれも単純なコア数やTDPの大小ではなく、アーキテクチャ効率と電力制御の完成度で性能を伸ばしたものです。前者は薄型ノートやハンドヘルドでもエントリーdGPU並の能力で“ちゃんと遊べる”という期待を現実にしてくれる存在だと感じます。後者は、廉価版と言いつつ1世代前の「エントリーゲーミング」並みで、それに加えてXeSS3のマルチフレーム生成までしっかり使えるなど、世代更新の恩恵が下位モデルにまでしっかり波及していることを感じさせてくれます。今後のモバイルGPUの競争で、今年から1~2世代はIntelが一歩前に出そうと感じさせてくれるものでした。
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